黒き島と影 『来栖川 綾香編』 ユン・ファローナ
第4研究所の前で私たちは大量の敵を相手にしている。
神岸さん達はレーザー銃で援護してくれるが、問題は私たちだ。接近戦に持ち込むまではいいのだが予想以上に相手の動きが早くとらえきれない。私は8体、好恵は5体、宮内さんは4体、これだけ仕留めてはいるものの、葵たちが研究所に入ってから、数が急増した。
「好恵!!姫川さんの援護に回って!!佐藤君は神岸さんと長岡さんの近くで待機よ!!」
スーツのお陰で、体力はまだだいぶ残ってはいるけど、みんな精神的に追い込まれているわね。
「保科さん、後どれくらいいそう?」
絶えずコンピュータで敵の検索をしていた保科さんは、私の言葉を聞くと、軽く数回キーボードを押す。
「あと、39体やな。それとええ知らせがあるで、藤田君たちが研究所の奪還に成功したそうや、いまこっちにむかっとる。」
それを聞いたみんなは笑顔になる。やっぱり浩之と葵がいないと始まらないわね。
「よし、みんな浩之達が来るまでに1匹でも多く倒しておくわよ。」
私にもなんだか少し力が湧いてきたみたいね。本当にあの2人には不思議な力があるのかしら?
「よ〜し!!ワタシも取っておき出すネ!!」
そういうと宮内さんはライフル銃を出すと先端に変わった物をつける。なんなのかしら?
宮内さんはそれを敵の方向に向け、狙いを定める。
「ターゲット ロック!! Firing!!」
その変わったものから出た弾丸はまっすぐ敵に向かいその一撃で4,5体は一気に仕留めていた。
「とってもデンジャラスなウェポンネ。」
確かにすごい、この武器なら相当の相手でも負けることはないだろう。でも何で今まで使わなかったのかしら?
その答えはすぐにわかった。宮内さんがうずくまり動かなくなってしまったのだ。
「宮内さん!?」
私は宮内さんに駆け寄ると敵から少しはなれた神岸さんのいるところに運んだ。
そう、この武器を使うと確かに破壊力は相当あるのだが、反動が著しく、装備者の体力を奪うことになる。
「神岸さん。宮内さんのことお願いできるかしら?」
「ええ、わかりました。志保、レミィの手当てしてあげよう。」
2人は宮内さんの手当てをしている。その間は佐藤君が敵を寄せ付けないようにと悪戦苦闘している。
「佐藤君、私も手伝うわ。」
私はそう言うと、近くの敵に向かい牽制のジャブを放つ。
それから相手が近づいて来た所にカウンターで右のストレートを決める。これで一匹は片付いた。
「ありがとう来栖川さん。このボールを合図したら上のほうに投げてくれる?」
そういうと佐藤君は私にボールを渡す。この戦い用に作られた特別性のボールだ。その強度は像が踏んでも壊れないらしい。
「いいよ、来栖川さん。」
いつの間にか、結構離れたところに移動していた佐藤君は私に合図を送る。
「いくわよ!!それ!!」
勢い良く空に舞い上がるボール。しまった、スーツの影響でかなり遠くにあげっちゃった。大体12,3階建てのマンション並みの高さにまで上がってしまったわ。
しかし、佐藤君は気にした様子も見せず、そのボールに向かってジャンプする。かなりの跳躍力だ。すぐにボールに追いつくと、体を横にして、ボールを真下に蹴り落とす。佐藤君によってけられたボールはうなりを上げ、敵の集まっているど真ん中に打ち込まれる。
かなりの衝撃が地面を揺らし、敵とえぐれた土の破片が飛び散る。
「すごいわね。」
なんて見とれている暇はない。こうしている間にも好恵に負担がかかっているんだから。残ったのは大体25,6体にはなったわね。
「綾香!何をしている!?囲まれるぞ!」
好恵の忠告も少し遅かったようだ。私は20体近くの敵に囲まれたしまった。好恵や佐藤君も5,6体の相手をしていて私を助けに来る余裕がないようだ。
「絶体絶命ってやつね・・・・。」
そう思った矢先、銀の閃光が次々と敵を薙ぎ払っていく。銀の閃光の元は空に舞い上がる。よく見るとブーメランだ。何でこんなものが?私はそう思っていると、ブーメランが走った後の場所に誰かいる。赤いスーツを身に着けたその姿は・・・・
「浩之!!」
私は確かに敵を薙ぎ払っていく浩之を見たのだ。
「綾香さん!大丈夫ですか?」
その声は葵ね。全く心配させて・・・。
「どうした、綾香?つれたのか?」
そういうと浩之は、マシンガンを取り出し突破口を開きにかかる。葵もそれを手伝っている。しかし、良く見ると2人のスーツはボロボロで、いかに研究所内での戦闘が壮絶なものだったのか予想がつく。
浩之達が来たお陰で敵の半分以上が片付いた。
「私も、そろそろ本気で行かないとね。」
私は一体の敵に一発のパンチを繰り出し、一瞬だがひるませる。そうして、その一瞬にうちに右左のハイキック、後は、その敵を足に引っ掛けると、的の大勢いるところに遠心力を利用して、蹴り出す。
敵は数体の敵を巻き込みながら飛んで行き、やがて見えなくなる。
「綾香!!坂下の方を援護してやってくれ。あかりたちは俺と雅史で援護するから十分だ!」
さすがね、浩之。突然の乱入でこのすばやい指揮、おそらく相当の戦闘をこなしてきたにもかかわらずそんな様子は微塵も見せない。葵ももう敵の殲滅にかかっていることだし・・・。
「綾香!!何をしている!?早く援護を!!」
言葉とはうらはらに好恵はまだ元気そうだ。わたしも好恵の近くに行くと、まだ5対以上いる敵を殲滅にかかる。
それから数時間で敵は全てかたずいた。浩之や葵が来てから敵を倒すスピードが増したのは言うまでもないわね。
それから研究所に生活に必要な物が取り合えず一通り運ばれる。そういえば部屋割りを決めていなかったわね・・・。
「藤田さん、部屋割りはどうするんですか?」
姫川さんだっけ?はそういうと浩之の近くに歩いていく。彼女は非戦闘員であってもやはり先の戦闘でかなり疲れているだろう。いや、彼女だけではないはずだ、戦闘員の私や好恵も宮内さんに佐藤君も疲れを隠しきれない。浩之や葵も戦闘のせいで体が言うこと利かなくなってきているそうだ。神岸さんや長岡さんたちも戦闘員の援護でそうとう疲れている。このまま部屋に行って休みたいのは誰でも同じということである。
「取り合えずこれが研究所のマップや。一階に10人、二階に6人泊まれる。うちは、この階の部屋ならどこでもええで。」
一応、決め方はくじ引きという形になった。これじゃまるで小学生ね。
「来栖川さんちょっとええ?」
保科さんだ。なんだろか?私は保科さんに連れられ、パソコンのある部屋に案内される。
「このスーツは藤田君と松原さんのスーツなんやけどみてみてどうや?」
そのスーツは新品とは思えないほどに傷つきヒビが入り、所々えぐれている部分もある。
「このスーツをこんなにしてしまう敵が居るなんて・・・・。」
今、来栖川の最新鋭の技術力を持って作り上げられたスーツであるはずなのに・・・・ここの敵は私たちの想像をはるかに上回っているというの?
「そこでお願いなんやけど・・・・」
保科さんはそういうと私にパソコンの前の席の隣に座らせると電源を入れる。
「来栖川の本社に増援を要請してくれるよう頼んでくれへんか?うちじゃなかなか出してもらえへんやろうから」
なるほど・・・・。他の人を巻き込むのは本意ではないけど仕方ないわね。なんてたって葵や浩之にこれだけのダメージを与えるなんてとんでもない化け物がいるんだもの。それくらいゆるしてくれるよね・・・・。
そして、増援が呼ばれることになった・・・・・。数日後に食料を運ぶ飛行機によってこの島に来るらしい。
次のミッションまで時間がある・・・・。疲労と傷の回復を図った方がいいかもしれない。それにいつ遊べなくなる変わらない・・・・・今は精一杯遊ばなくちゃ!!
〜完〜
あとがき
ユン・ファローナです。最初のSSから一年が経過しようとしていますが・・・・まだ三話・・・・・。高校生活が忙しいです・・・・。まぁいい訳にしかなりませんが・・・。増援の予定はカノンのみなさんです。好きでない方もいらっしゃいますでしょうが・・・・許してくださいね・・・・。次回は『姫川 琴音編です。』この子はファンとそうでない方の落差が激しいと聞いていますが基本的に書きやすそうなので・・・・。では、次回でまた会いましょう。