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黒き島と影 『藤田浩之編』  ユン・ファローナ

 体が痛い・・・。さっきのバトルの疲労がまだ残ってるようだ。

「藤田君、大丈夫なん?」

 委員長だ、心配してくれてるんだな。

「ああ、これくらいならな。それより委員長、準備しなくてもいいのか?」

「ん?ああ、準備ならもうすんどる。それより、本当に体大丈夫なん?」

「大丈夫だって、それに葵ちゃんとも約束したしな。」

 葵ちゃんのスーツ調整を見てるって・・・・。

「せやったら、しっかり見ときい。これが純格闘用のスーツの性能や。」

 葵ちゃんが入ってくる。青いスーツに俺と同じ形のヘルメット。

 へ〜、結構かっこいいんだな・・・。それにしても、来栖川エレクトロニクスの人たちもわかりやすいな、葵ちゃんだから青いスーツってか?

「松原さん、ほな始めるで。用意はええか?」

「はい、いつでもどうぞ!!」

 委員長はコンピュータをいじると、葵ちゃんの周りに薄い影が出てくる。俺もあれとさっき戦ったんだよな・・・・・・。

「よ〜い、始め!!」

 一斉に影が葵ちゃんに襲いかかる。飛び掛ってきた影の下をくぐりぬけて、一体の影にハイキックだろうか・・・。上段の蹴りをかます。

 しかし、影は上中下にそれぞれへこみができている、おそらく、一瞬で下段、中段、上段の蹴りを繰り出したのだろう。目にも止まらないとはこのことだ。

「は〜・・・。すげーな。スーツの強化作用があったとしても影を一体ずつ確実にしとめるんだもんなぁ。」

「藤田君の時とはまた違うバトルの展開やな・・・。あんたんときは、まとめてしとめてたけど、松原さんは確実に一体一体をしとめてる・・・・。」

 それは、ずいぶん前からサンドバックなど一定の標的を狙うのが多かったので、多角的攻撃時でもそのスタイルはそう簡単に返られるよなものではない。

「それにしても早い。藤田君の約半分の時間で倒せそうやな。」

 半分!?マジかよ・・・。こんなにも格闘能力に差があるなんてちょっと信じられないな・・・。

「まぁ、藤田君のスーツの約三倍の格闘能力なんや、しゃーないって。」

 そうだ、俺のは格闘、射撃両方できるからどちらもそこそこのものしかないんだ。葵ちゃんは射撃を犠牲にした代わりに格闘を高めたスーツなんだった。

 なんて考えてるうちに、葵ちゃんもう一体にまで追い詰めたか・・・。

「はぁっ!!」

 影を空中に蹴り飛ばすと、落ちてきたところを狙って、助走をつけてでの飛び蹴りをくらわす。

「はい、終了。松原さん、お疲れ!あがってええよ。」

 すごいな葵ちゃん、なんか心配になってきた。一番目の作戦のとき足引っ張らないかな・・・・。

「センパイどうでしたか?」

 いきなり背中をたたかれて、必要以上に驚いてしまう。

「え?あ、ああ、すごかったな。最後のフィニッシュなんてまるで○面ラ○ダーみたいだったぞ」

 自分で少し危ないなとか思ったりして・・・。

「センパイ、そんな私なんてスーツのおかげてここまでできただけで・・・。」

 また葵ちゃんの謙遜か・・・。まったくこれは葵ちゃんにとっていい癖なのか、悪い癖なのか。

 自分の可能性をまるっきり否定してるんだから勿体ないよな。

「はいはい、葵ちゃんその話はなしなし!そんなこといってたらいつまでも覚悟を決めれないぞ!!」

 最初はびっくりして俺を見ていた葵ちゃんだが、すぐに笑顔になり

「ハイ!ありがとうございますセンパイ!!」

 どうやら分かってくれたみたいだ。

「保科先輩・・・。」

 突然、葵ちゃんが委員長を呼ぶ。

「ん?なに、松原さん」

 コンピュータをいじっている手を止め葵ちゃんのほうを見る。

「到着まで、後どのくらいなんですか?」

 確かに、それは結構気になることだ。

「ええっと・・・・。あともうすぐやな。ほかのみんなにも伝えといて。それと、戦闘準備も忘れずにともな。」

 もうすぐか、緊張するなぁ。とにかく今は、体力回復が先決だ。

「行こう葵ちゃん、今は休養が大切だよ。」

「ハイ!センパイ」

 俺たちは席に付くとゆっくりと眠りに入った。



 次の朝、飛行機は研究所前に着陸した。

 思ってた以上に静かで、それでいて大勢から見られているような錯覚にとらわれる、そんな空間になっていた。

「センパイ・・・・・。」

 朝から黙っていた葵ちゃんが口を開いた。

「どうしたんだ?」

「はやくフォーメーションを組んだほうがよさそうですね・・・。」

 やはり気づいていたようだ、この異様な殺気に・・・。

「綾香!!早くフォーメーションを組め!!でないとやられるぞ!!」

 俺はそう叫ぶと、あかり達を集めて周りを囲む。

「浩之ちゃん・・・・。こわい・・・・。」

「大丈夫だあかり、向こうから仕掛けてくる様子がない・・・。レミィ!遠くの様子はどうなってる?」

 レミィのスーツには遠くを見通せる特殊な機能が付いている。さすがは射撃専門のスーツだけはある。

「・・・・。数は大体30、多勢に無勢ネ!!」

 30か・・・。ちょっときついような気がする・・・。

「どうだ綾香?この大群を俺と葵ちゃんのいない状況で相手できるか?」

「あら、宮内さんの射撃、佐藤君のシュート力、それと私と好恵がいれば、どおってことないわよ。」

・ ・・・・。相変わらず自信たっぷりですこと・・・。

「行くぞ!!葵ちゃん、パッと言ってパッと片付けてこようぜ!!」

「はい!センパイ!!綾香さん、好恵さん、みなさん、では、行って来ます。」

 そして、研究所の中に入っていく・・・。中は思ったよりもきれいだ。もっとドロドロしたのを予想してたんだけどな、案外まともだ。

 道が二つに分かれている、こういうときは二手に分かれたほうが効率がいいな・・・。

「葵ちゃんは右の通路を行って、俺は左の通路に行くから。」

「ハイ、センパイ合流地点はどこにしましょう?」

「あ、ちょっとまってて」

 そうだ、大事な物を貰うの忘れていた。俺は通信機で委員長に呼びかける。

「委員長、俺だ、浩之だ。」

『藤田君?どうしたん。』

 通信機の後ろから戦闘の音が聞こえている。どうやら始まったようだ。

「ここの研究所の地図はあるか?できれば送って欲しい。」

『ええよ、少し時間かかるさかいちょっと待っててや。』

 そうすると、地図が送られてくる。

『送信完了や。ほな頑張ってな。』

「おい!そっちは大丈夫なのか?」

 俺や葵ちゃんがいなくちゃやっぱり正直きついだろう。

『他人の心配するんやったらまず、自分に与えられた任務をきちんとこなすことや。』

・ ・・・。ははは、相変わらず厳しいがその通りだ。

「葵ちゃん、ここの研究所は、一つの通路が半円を描くように続いている。その先には一つしかない階段があるからそこで合流にしよう。」

 その間は、しっかりと魔物を倒すこと、部屋一つ一つをしっかり見なければならない。

「わかりました。センパイ気をつけて・・。」

「葵ちゃんもな!!」

 そういうと、俺たちは二手に分かれた。

「ドア一つひとつくまなく探さなきゃいけないのがめんどいな。」

 ドアを勢い良く蹴り飛ばすと、中に銃を突きつける。しかし、生物らしきものは見当たらない。

「・・ふぅ・・。何もいないな。何か役に立ちそうなものはないかな?」

 俺は部屋を軽く見回す。ふと、ひとつのカプセルが目に止まった。

「なんだ?ん?」

 その下にメモが置いてあるのに気づいた。

「なになに、(一撃必殺。相手を即死させる究極の薬。しかし、実験段階のためこの一つしかなく、相手の口に入れないと効果はない。周りの生物に悪影響はないがコストがかかるため、これは未来のためにこの研究所の二階にある『永久の倉庫』に保管予定)ふむ、使えるな。」

 俺はそのカプセルをスーツの中にしまった。部屋を出て、階段に向かう。

「センパイ、何かいましたか?」

「いいや、通気口は調べた?」

「はい、でも生物どころかほこりでいっぱいでしたよ。」

「そうか、一応ここの二階にある『永久の倉庫』に行こう。武器があるかもしれない。」

 俺たちは二階へとゆっくりと足を向けた。

 その途中、何かに見られてるようなそんな感覚に囚われた。そう、なにかにだ・・。

「センパイ・・・・。」

「ああ、このまま二階におびき出そう。階段じゃ分が悪い。」

 そのまま、俺と葵ちゃんは二階に上がってすぐの臨戦態勢に入った。

「センパイ、気配はあるんですけど、どこにいるがわからないままではどうしようもないんじゃないですか?」

 まあ、それも一理あるな。俺はゆっくりと辺りを見回した。壁、床、曲がり角、調べてみたが何も見当たらない。

 そのとき、俺と葵ちゃんの前に黄色い液体が落ちてきた。

「しまった!!上か!!」

 俺は天井を一気に見た、そこには、蜘蛛の怪物が張り付いてた。

「くそ!!これでも・・・」

俺は、背中にあるキャノン砲を取り出す。しかし

〔ガァァァ!!〕

 怪物は黄色い液体をキャノン砲に吐くとキャノン砲はみるみる熔け始めた。

「な!?くそ!」

 俺はキャノン砲を捨てると、腰についているマシンガンを取り出し、打ち込む。

〔ぎゃぁぁぁ!!〕

 奇声を上げて、怪物は床に落ちてきた。

 そこにすかさず、葵ちゃんの格闘が入る。

「はぁぁぁぁ!!」

 始めは右のストレートをかまし、次に俺と怪物の間に入って、左の突くような蹴り。

 当然、怪物は俺から離れる。葵ちゃんは、すかさず怪物の吹っ飛んでる方向に先回りして、さらにこっちに蹴り飛ばす。

 おそらく、俺に止めを刺せということなのだろう。俺は後ろの腰についている対バイオ生物用の銃を取り出す。(弾は今のところ10発しかない。)

「もったいねーけど!!」

 俺は怪物に向けて、2発打ち込んだ、もちろんカウンターの原理を活用したので、恐ろしい破壊力になっていたことは言うまでもない。

〔ガ・・・・ァァ・・・。〕

・・・。どうやら仕留めたようだ。死骸はこのままにはしてはおけない。あかりのあたりが悲鳴を上げそうだ。

「・・・ふぅ・・。葵ちゃん!!すごかったよ、すごい動きだったな。」

「ありがとうございます。この死体どうしましょうか・・。」

「とりあえず、窓からでも放り投げておこう。このままにしたら誰かしら悲鳴を上げそうだからな。」

 2人で怪物の死体を窓から放り投げる。

 熔かされたキャノン砲を持つ、どうやら一発の弾だけは熔かされていないようだ。

「そうだ、葵ちゃんちょっと待ってて」

 俺は、弾を分解していく。そしてちょうど火薬のあたりにさっき手に入れたカプセルを入れる。

「何してるんですか?センパイ。」

「ん?秘密兵器を作ってるんだ。まあ俺が作る物なんてたかが知れてるけどな」

 そのできたものを懐にしまう。

「よしっと、じゃあ『永久の倉庫』に行こうか。」

 その倉庫は以外にもすぐ見つかった。

「ここですね。」

 一見普通の倉庫だ。でも

「パスワード知らないからこじ開けるか・・・。」

 俺は腰を深く落とし正拳付きの構えをする。

「ハァ!!」

 一気に突き込む、ドアは変形しすぐにでも開くような状態になった。

「センパイ、武器ありそうですか?」

「・・・・・。武器どころか役立ちそうなものさえない・・・。」

 全くの無駄足だったか。

「いいえセンパイ、これ見てください。」

 葵ちゃんの手にはブーメランが握られている。

「ブーメラン?役に立つかな?」

「絶対役に立ちますって、私持っておきますね。」

 まあ、あって困るものでもないだろう、なくても困らないと思うが・・・。

「しかし、見たことのないブーメランだな。銀色してるぞ。」

「なんか、金属で出来てるみたいですね。」

 金属か・・。ここの研究所の作ったものだ、まともな物じゃないだろう。

「センパイ、一応ここの階も見ておきますか?」

「ああ、ここにしばらく寝泊りするんだ。さっきの様な奴が居たら嫌だろう。」

 まあ、仕事が終わったら、ここの研究所を一度膜のような物で包んで中を熱消毒やその他さまざまな消毒法を試すので居ても死滅するだけだ。

「さっきのような奴が居る可能性があるから、さっきのような単独行動はやめておこう。」

「そうですね。さっきの奴は一人ではきついですからね。」

 そうして俺たちは部屋をしらみつぶしに探していく。しかし、これといった問題もなく、無事最終階の三階に辿り着いた。

「センパイ」

「ん?なんだい葵ちゃん。」

「ここの扉を開けると、よくあのゲームで言うステージの中間ボスってのと戦うんですよね。」

「・・・・。」

 まあ、表現は間違っちゃいないが・・・・。

「葵ちゃんとり合えず、全力で戦い抜こう。それしかいえないよ。」

 そうして俺たちは最後の扉を開けた。そこには

〔いやぁ、良く来たね。人間の戦士よ。ここに来たってことは私と戦う意思があってのことだと思う。〕

 うわぁ、ごてごての触手の化け物だ。一応人間の体みたいな感じの物がベースとなっている。目は四つ、耳は二つ、口は結構大きい。

「当たり前だ。そうじゃなきゃここまでこないっつーの。」

「私たちはあなた方を排除するためにここまで来ました。」

 すると化け物は笑って

〔ははははは、人間は本当に身勝手だなぁ。散々ひとの体をいじっておいて、いらなくなったらポイだ。〕

 化け物は触手をめいいっぱい伸ばすと

〔あなた方も名前の知らない者に殺されるのは不憫ですからねぇ、特別に教えて差し上げますよ。私の名前はブリンガー、触手のブリンガーです。〕

 そういうと突然触手を俺たちに向けて伸ばしてきた。一瞬俺は宙を舞った。

「センパイ!!」

 葵ちゃんの声だ、右から?左から?いいや違う、下からだ。

 俺は数メートル飛ばされ、壁に激突した。

「ぐっ・・・。」

 クソッ!こうも実力に違いがあるなんて・・・。

 葵ちゃんは触手を格闘で引き裂きながら、進んでいく。

〔フフフ、元気のいいお嬢さんだ・・・。〕

 その言葉にカチンときたのか葵ちゃんの速度は倍以上に上がった、しかし、

「キャッ!!」

 葵ちゃんの腕に触手絡まり着いて葵ちゃんの体をやすやすと持ち上げている。

〔でもねぇ、所詮は弱い人間。こういう服なしじゃ、我々に触れることも出来ないグズ共〕

 そういうとブリンガーは葵ちゃんを俺のほうへ投げ飛ばす。

〔そろそろ、終わりにしますかねぇ。まぁ、せいぜい最後の悪あがきでもして下さいな。〕

 そういうとブリンガーは大口で笑い始める。

 くち・・・。そうだ!!

「行くぞぉぉぉ!!触手の化け物!!」

 俺は懐からキャノン砲の弾を出すと、ブリンガーに向かって走り出した。

〔ハーハッハッハッハ!!私に辿り着くことは出来ませんよぉ。〕

 無数の触手が俺に向かってくる。

 しまった!!触手のことを計算に入れるのを忘れてた!!

「センパイ!!」

 くそっ、ここまでか・・・。

〔がぁぁぁぁ!!この小娘ぇぇ!!〕

 なに?見ると触手は全て切り落とされていてその空中を銀色の飛行物体が飛んでいる。

「・・・あのブーメランか・・。」

 俺はこれをチャンスにとブリンガーに向かって走り出した。

〔!?この下等動物が!!〕

 俺は、ブリンガーの口にキャノン砲の弾を押し込んだ。

「確かに、人間は勝手だよ・・・、おそらくオメーらよりもな。でもなぁ、人間は過ちを繰り返さないよう努力することで成長する生物なんだよ!!!」

 右のパワーMAXのアッパーをくらわす。口の中でキャノン砲の弾は爆発、そしてあのカプセルも・・・。

 ブリンガーはカプセルに入っていた薬品のせいか、それとも元々死骸の残らないように出来ていたのか、その場で粉の様になり、風にさらわれていった。

 ふぅ・・・・。

「センパイ!!大丈夫ですか!?」

「ハハハ、葵ちゃん」

「はい、何ですか?」

「本当に役に立ったな、あのブーメラン・・・。」

 俺はニッコリ笑ってVサイン。

 葵ちゃんはヘルメットを取ると、ニッコリ笑ってくれた・・・。これほど疲れているのに、その疲れも吹っ飛ばしてしまいそうなほど・・・。

「終わったんですよね・・・。」

「ああ・・・・。」

・ ・・・・・・・・って!!!!!

「葵ちゃん!!!」

「はい?何ですかセンパイ?」

「綾香達!!!!」

「ああ!!!」



あとがき

 何とか書き終えましたが、本当に何とかですね・・・・(汗)夏休み中は暇なので、こういうことにめいいっぱい時間を使うことが出来ます。宿題も忘れてね(爆)。まだまだ未熟な私ユン・ファローナですが、これからもよろしく。次は『来栖川 綾香編』です。期待してくださいね・・・・。(本当にお願いします・・・。)


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