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黒き島と影 『松原 葵編』  ユン・ファローナ


 今少しずつ地獄に向かっている。
 とある島の中で来栖川バイオテクノロジーの実験中、一匹の試作型の生物が暴走、そのほかの生物を操り島を占拠した。
 そんな中、私、松原葵はそんな怪物の退治に向かっている。理由はさまざまで、中でも一番の理由が、成長の止まった成人の人間のみが効く強力な毒が島全体を覆いつくしたらしい・・・・。
「はぁ・・・・。」
 思わずため息が出る。外はもはや海の上、島へはあと一日で着く。
 ポンッ、と頭に手を置かれる。
「いよ!元気ねーな。」
 センパイだ。
「まっ、こんなときに元気あっても変だけどな。」
私の隣に座るセンパイ
「センパイは怖くないんですか?」
 自分でも気づかないうちに、声が震えていたのだろう、センパイはニッコリと笑ったまま
「ん?怖いさ、どんな化け物がいるかなんて予想もつかない・・・。しかも俺らと同年代のやつらしかいないこのメンバーだ・・・。」
 一瞬センパイの目が暗くなり体が震えだす。しかし、それは一瞬で収まり
「でもな、葵ちゃん、誰かがやらないと俺たちみたいな人が増えるだろう?」
「・・・・・。そう・・ですね!!」
 私の不安はどこかに行ってしまった。
 生活に必要な物は一週間に一度の定期便で全て補給される。戦闘能力の高い私たち(葵、綾香など等)は来栖川エレクトロニクスから強化スーツが、戦闘能力の低い人たち(あかり、マルチなど等)は防御力を極限まで高めたスーツと護身用の特殊レーザー銃、スナイパースコープが送られた。
「ありがとうございます。センパイ、だいぶ気が楽になりました。」
 私や綾香さん、好恵さんは格闘能力の高さから格闘戦用の強化スーツが、センパイは格闘能力、射撃能力のバランスがよいため、私達とは違うタイプのスーツが送られた。
確か格闘も銃器の扱いもできるオールレンジタイプのスーツ、だったかな?
「そっか、じゃあもう大丈夫だな。」
 センパイは立ち上がると
「大丈夫、みんな無事に日本に帰ろうな!」
 そういうと、センパイは奥の方へと向かっていった。
 到着したら日本へのつながりは一週間の一回の定期便と、島の基地にあるコンピュータでの通信しかない。
 そのコンピュータを扱うのが・・・・・
「松原さん」
 不意に名前を呼ばれる。
 見ると保科先輩が立っている。
「藤田くん知らへん?スーツの調節せなあかんのに・・・、どこほっつき歩いてんねやろ?」
 この人がコンピュータを扱う人だ、スーツの調整や作戦を立てたりする人でもある。
「センパイならあっちに行きましたよ。」
 私はセンパイの行った方向を指差していう。
「ありがとう、あ!!あとで松原さんのスーツも調節するさかい、あんま動かんといてな。」
「ハイ!」
 保科先輩はセンパイの歩いて行った方向へと走っていった。
私たちの行く島は、丸に近い形をした島で、直径約180kmの陸地と、150mの浅瀬が広がっている無人島とも言える島だ。
私たちの寝泊りする所は空港のすぐ近くの第4研究所だそうで、そこにも魔物が入り込んでいる可能性がある。
つまり、最初の戦いは第4研究所の解放と寝床の確保だということになる。
内容はこうだ、空港に降りたらすぐに戦闘員は飛行機の護衛と非戦闘員を守り、ひと段落したら、私とセンパイだけで研究所内に潜入、他の戦闘員は非戦闘員の護衛をする。非戦闘員も銃火器で戦闘員を援護、宮内先輩は射撃専門だから長距離の敵を、綾香さんや好恵さんは宮内先輩の倒し損ねた敵の駆除をしながら研究所内の私たちの仕事の終わりを待つ、という一連の流れになっている。
「せやからぁ、さっきもゆうたやろ?来栖川さんの次にスーツの調整をするさかい、準備しておいてって。」
 保科先輩の声だ。先輩見つかったのかな?
「だから、悪かったって言ってるだろ?それに落ち込んでるやつをほっておけるかよ。」
 ふふ、先輩らしいセリフだ。私や他のみんなに元気を与えてくれるそんな先輩・・・。
「それは、藤田君のええとこやけども、それと約束とは全くの別物や。」
「ハハ、相変わらず厳しいぜ・・・・。」
 ふふ、センパイったら・・・。
「あ!松原さん。藤田君の次に調整があるさかい、一緒に来てや。」
「ハ、ハイ!!」
 スーツか・・・。センパイのスーツって一体どんなのかな・・・?
 この飛行機の最後尾に特別に作ってもらったスーツの調整用の部屋に入る。
 私は、保科先輩に連れられてコンピュータとガラスが張ってある部屋に来た。センパイは来る途中でロッカー室に入っていった。
「保科先輩、どういうふうにやるんですか?スーツの調整。」
 すると、保科先輩はああ、という感じで、
「そういえば説明してなかったなぁ。ええか、こっちからランダムで出す立体映像を倒していくだけのシンプルなもんや。ただし、立体映像といってもきちんと触れることのできる、本物とさほど変わらんさかいきいつけや。」
 なるほど、でも何のためにこんなことするんだろう?わざわざこんな大掛かりな仕掛けは必要ないと思うんだけど・・・。
「これで出た数値や反応速度をデータ化して、スーツに直接送るんや。そうすれば、スーツはこのデータから本人の行動を分析、調査、展開、構築、さまざまな過程を経て、本人の本来の力を倍以上に発揮させることができるんや。」
 すごい、こんな技術がもう開発されていたなんて・・・・。
 すると、ガラスの向こうのドアが開き、センパイが入ってくる。 
 赤いスーツに身を包み、ヘルメットを腰に抱えている。かっこいい・・・・。
「藤田君、ヘルメット着けてや。それがないとこの訓練の意味の半分は水の泡なんやから。」
 センパイは、ヘルメットを被る。
「保科先輩。どういうことですか?」
「あのヘルメットはな、藤田君の思考、視界、攻撃時の目の位置などを正確にこのコンピュータに送ってくれるんや。他にも、通信機代わりになったり、こっちからデータを送ってそれをヘルメットの視界の部分で見ることができる。」
 要するに、あのヘルメットが戦闘時の要のなってくることは間違いないわけだ。
「藤田君ほな始めるで。」
「おう、準備は出来てる。いつでも来いだ!!」
 センパイの周りに少しうすい影が出てくる。多分これを倒すのだろう、センパイも状況を確認している。
「よ〜い、始め!!」
 一斉に影がセンパイに襲い掛かる。センパイは影の少ないところを突破し、自分の目の前に標的を集める。
 影はセンパイを追い、大量に群がっていく。そこに、センパイの中段の蹴りが炸裂、4・5体巻き込んで吹き飛ぶ。
「すごい・・・、センパイ・・・。」
 センパイの動きは普段の動きからは、予想できないほど速い。
「あれで、格闘と射撃のオールレンジタイプなんやから驚きだわ〜。」
 忘れてた・・・。センパイのスーツは格闘、射撃、両方ができるオールレンジタイプ、私や綾香さんのは格闘専用のファイタータイプ、宮内先輩のは射撃専用のスナイパータイプ、その他の人は防御を優先としたガードタイプ、この三種類があるのだ・・。
「これは、松原さんあんたの戦い、今から楽しみやわ・・。」
「ハ、ハイ!」
 そうこうしている内に、センパイは最後の一体を空中に舞い上げると、背中に用意していた大型の銃で一撃。
「ああ、アレは避けようがあらへんなぁ・・。」
 これが銃火器と格闘とのコンビネーション・・・。
「藤田君お疲れさん。あがってええよ。」
 しばらくしてセンパイが出てくる。センパイはまだ息が切れている、あのスーツは相当体力の消耗が激しいようだ。
「なんかすっごいきつかったぞ・・。」
「そりゃそうや、まだ藤田君の動きを完全にスーツに伝えたわけやないんやから、到着までには普通の手足のように動かせるさかいそれまではカンニンな。」
 するとセンパイは私のほうを向いて
「次は葵ちゃんだな?見守ってるから頑張って来いよ。」
 そういうとセンパイはニッコリ笑って背中をポンとたたく。
「ハイ、センパイ私頑張りますね!!」
 私はそういうとロッカー室に入った。
 そう、闘いの第一歩を私たちは踏み出したのだ・・・。


続く  



あとがき

 なんか感情が先走ってますよねぇ・・・(汗)トホホホ・・・(泣)でも、最初にしてはまずまずのものになったと思います。(あくまでも個人的にですが・・・)まぁ、自虐的になっても仕方がないと思い、次回作を書いているところです。次は、藤田 浩之編です。できれば期待してほしいなぁ・・・。ユン・ファローナでした。では!!


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