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 RPGとぅうはあと ROAD4
                                                  火鳥泉行


 街の中心にある広場、そこの中心一一一つまり街のちょうどど真ん中に大勢の人が集まっている。
 人々の視線と期待の先は、リング上の2人の少女に向けられていた。
「いいわね・・・手加減なしよ葵」
「はい・・・よろしくお願いします」
 両者向き合い、ファイティングポーズを取る。
「葵ちゃん・・・・頑張れ!」
「・・・・・(綾香ちゃん、ここはひとつカワイイ後輩に勝たせてあげませんか?)」
「だからぁ!手加減なしって言ってるでしょ姉さん!!」
 間髪入れず綾香のツッコミが入る。
「・・・(ほんの冗談です)」
「・・・浩之、なんかここのキャラ性格変わってない?」
「言うな・・・俺も結構つらいんだ・・・」
 冷ややかな視線が浩之を痛めつける。
「あのー、ギャラリーの方たちからブーイングが飛んでるんですけど・・・」
 リング越しの会話に葵が口を挟む。
「え?・・・ああ、そうね!それじゃいくわよっ!!」
「ハイッ!!」

 カーン

 文字通り、戦いのコングが鳴り響いた。
「ヒュッ!!」
 息吹とともに一瞬で綾香の素早い蹴りが、目の前を横切る。
「牽制か!?」
「・・・・(いえ、今のは松原さんが瞬時に避けたのです)」
「マジかよ・・・ところで先輩?」
「・・・(なんでしょう?)」
「なんで綾香は先輩の妹なのに別々に生活してるんだ?」
「・・・(・・・知りたいですか?)」
「・・・ちょっとな」
 ニヤリ。
 無表情を保ってきた芹香の唇の先がかすかに動いた。
「せ、先輩?」
「・・・・(どうしても知りたいと言うのなら・・・仕方ありませんね)」
「い、いや別にどうしもってワケじゃ・・・ちょ・・先輩なんでふところから蝋燭と血の付いた魔術書なんか取り出すんだよ!?・・・わかった!もう聞かない!二度と口にしないぞ!」
「・・・・(・・・人間知らないほうがいいことも多いのです)」
 そう言って魔術道具を再びふところにしまう芹香の方から、なにやら舌打ちするような音が聞こえたように思えたが、あえて浩之は深入りするのをやめることにした。


 そのころリング上では。

「くっ!・・・」
「どうしたの葵、もう終わり?まだ私は本気を出していないわよ?」
「(やっぱり綾香さんは強い・・・こんなの勝てるわけがない)」
 荒い息づかいでめいいっぱい下半身に体重を落とす。
「そっちが来ないなら、私がとどめを刺しちゃうわよっ!!」
 低い姿勢で葵に近づき、10本の指だけで身を支えて足を振りかぶる。
 足払い。
 それに気付いた時はすでに遅かった。

 視界が回転する。
 直後、背中に激痛が走った。
 それは地面に着くより速くに綾香の放ったブローによる衝撃だ。
「っっっ!!!!」
 見ていて鮮やかなほどの連続技に、為すすべなく体力を奪い取られる葵。
「ケホッ!・・・クッ・・ケホッ!!」
 リングに倒れ込み、息ができないのか、むせる。
 かすむ視界の先に、綾香の姿がぼんやりと映る。
「残念だけど、これ以上は無理みたいね・・・・まぁ、よくがんばったわよ葵は・・・」
 一一一悔しい・・・
 横でレフェリーがカウントを数えている。
「またいつでも相手してあげるから・・・めいいっぱいがんばりなさい」
 一一一綾香さんに本気を出させずに負けるなんて・・・悔しすぎる・・・・
「3・・・4・・・5・・」
 一度葵をちらりと見やって、綾香はゆっくりとリングサイドに歩き出した。
 その時、ギャラリーから大きな声が上がる。
「葵ちゃん!頑張れ!!」
 一一一藤田・・先輩・・・?
 薄くなる意識の中でその声を聞き取る。
「6・・・7・・」
「葵ちゃんはこんな所で負けるわけにはいかないだろ!?」
 一一一先輩が・・・応援してくれてる・・・・・でももう・・・・
 まぶたが重くのしかかる。
「葵ちゃんは強い!葵ちゃんは負けない!葵ちゃんは・・・えーと・・・」
「・・・・(浩之さん・・・目が3000Gに輝いてますよ)」
 ギクリ、ときたが、浩之はあえて聞こえなかったことにする。
「えーと・・・葵ちゃんは・・・・」
「・・・(浩之さんちょっと・・・)」
 ふいに、芹香が耳打ちを仕掛けてきた。
 なにやらボソボソと、小さい声をさらに小さくして芹香が告げる。
 そうしている間にも、カウントは着々と重ねられていく。
「8・・・9」
「葵ちゃん!」
 一一一ああ・・・もうダメです・・・・ごめんなさい先輩・・・・
「葵ちゃんよく聞くんだ!」
 わずかに小さい声でしか、彼女の耳には届かない。
「俺、この試合で葵ちゃんが負けたら、綾香と結婚しなきゃなんねーんだ!!」


 一一一・・・・・
「じゅぅ・・・」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇl!!?』
 大声を上げて立ち上がる葵。
 そして同時に大声を上げて振り返る綾香。
「ファイト続行可能!カウントを無効にします!」
「よっし!成功だ!」
 レフェリーの声を聞き、浩之は大きくガッツポーズをする。
 しかし次の瞬間・・・
「せせせ先輩!け・・けけけ・・結婚するって本当なんですか!!?」
「結婚ってどーゆーことよ浩之!私そんな約束した覚えないわよ!?」
「いや、まあそれはだな・・・」
 冷や汗を流してたじろぐ浩之。
「そそ・・そそそんなの私は・・・み、認めないって言うか・・・・あ、いえ、そうじゃないくてあの・・・そのなんて言うのかよくわからないんですけど・・・」
「それに『しなきゃいけない』って何よ!?私にどこか不満があるっていうの!?」
「いや、そうじゃなくて・・・・あ、葵ちゃん!まあとにかくそういうワケだからできれば勝ってほしいんだけど・・・」
「ちょっと浩之!まだ私の質問に答えてないわよ!それに・・・」
 ふと、後に殺意を感じた綾香が振り返る。
 そこに立っていたのは、闘志の炎に包まれた葵の姿だった。
「ちょ・・・葵!?」
「渡しませんから・・・絶対に!!」
 体中から溢れる『気』(?)によって髪の毛が舞い上がっている。
「・・・・(どうやらうまくいったみたいですね)」
「ああ、さすが先輩。葵ちゃんを『スーパー松原葵』にする方法なんてよく考えたもんだな」
「姉さんの仕業かぁ!!」
 すでに傍観者に戻った2人の満足げな会話に間髪入れず綾香がツッ込む。
 しかし、現実に戻った次の瞬間から、綾香にそんな余裕はなくなった。
「ハァッ!!」
 ヒュッ!!
 葵のパンチが綾香の髪をかする。
 もちろん、一瞬速く反応した綾香が避けたから当たらなかったものの、そうでなかったら確実に顔面を捕らえていた。
「ぜえええぇぇえぇっっっったいに渡しませんから!!!!たあああああああああ!!!!!!」
「ねえ・・・ちょっと葵・・・待っ・・キャァァァァァァァ!!!・・・・」

 ・・・・・・・・



「ごめんなさい・・・私、勝てませんでした・・・・」
「いいっていいって。葵ちゃんはよくがんばったことだし」
 街の出口。
 惜しくも綾香との勝負に負けてしまった葵と2人は、まだ昼時のリーフの街を出ようとしていた。
「帰ってきた時のお金はどうするんですか?」
 申し訳なさそうに葵が聞く。
「大丈夫、またその時捜せばいいさ」
「・・・・・(いざという時は私の黒魔術ショーを開けばなんとかなります)」
「まあ・・・それは最後の手段ということで・・・・」
 半ば強引に浩之が受け流す。
「・・・(みなさん、それではそろそろ・・・)」
「よし、行くとするか!」
「ハイッ!」
「ちょっと待ちなさい!」
 突然、後方から声がかかる。
 3人がゆっくりと振り返ったその先には・・・
「綾香さん・・・」
「なんだ、まだいたのか・・・」
「なによ!いちゃ悪いの!?」
 呆れ顔で進行方向に向き直る浩之に罵声を浴びせる綾香。
「・・・・(それで何かご用ですか?綾香ちゃん)」
「ええ、ちょっとね・・・葵に一言言いたいことがあるの」
「わ、私にですか!?・・・そんな・・・さっき負けたばかりなのに・・・」
 もじもじと葵が口ごもる。
「葵、さっきのファイト、なかなか闘志が溢れててよかったわよ。負けを悔やむことはないわ」
「なに調子いいこと言ってやがんだ。あの後スーパーになった葵ちゃんの攻撃からキャーキャー叫びながら逃げ回ってたら、いつのまにか時間切れになって、結局前半の優勢で判定勝ちしただけのクセに」
「う、うるさいわね!外野は黙ってなさい!」
 図星を突かれ、ごまかすように浩之を怒鳴る。
 コホン、と一つ咳払いをして綾香は続けた。
「だからね、私もこれからがんばるから葵も負けないくらいがんばるのよ!」
「綾香さん・・・」
「またやろうね、葵!!」
「ハイッ!!」
 しっかりと、2人はお互いの闘志をたたえ、手を組み合った。
「それと・・・これ、あなたたちが持っていなさい」
 そう言って、綾香は葵に袋を手渡した。
「綾香さん・・・これ・・・?」
「賞金の3000Gじゃねーか!」
 いつの間にか横に立っていた浩之が声を上げる。
「私が持っていてもあんまり意味がないから、あなたたちの旅の資金にしてちょうだい」
「い、いいのか綾香?」
「まーね。お金には不自由してないし、強くなった葵へのご褒美、ってトコかしら」
「綾香さん・・・・ありがとうございます!!」
「・・・(綾香ちゃん・・・)」
『なでなで』
「ちょ・・姉さん!?」
「・・・・(いい子の綾香ちゃんにご褒美です)」
『なでなで』
「は、はずかしいって!姉さんってば!・・・・」


 こうして、3人は綾香の見送る中、決意新たに(何が?)冒険へと旅立つのだった。






「ちょい、そこのアンタら!」
 街を出てとある森を歩いていた3人に突然声がかかった。
「・・・これまでのパターンからだいたいは予想していたが・・・・」
「・・・・(今回は本当に唐突ですね・・・)」
「どちらさまでしょうか・・・?」
 ゆっくりと3人が振り返る。
 そこにいたのは、一人の少女。
「突然悪いんやけど、ウチは智子、旅の学者や。ついさっき魔物に襲われて大切な本を奪われてしまってん・・・アンタら見たトコなかなかの手練れ揃いみたいやから・・・頼むわ!ウチと一緒に魔物から本取り返すの手伝ってくれへん?」






「やっぱりまたこのパターンか・・・・」
 こうなることは分かっていつつも、3人はゆっくりと息を吐き出して嘆息するのであった。



                            −つづく




  【あとがきといえようか?】

 ども、火鳥です。
 RPGとぅうはあとRoad.4、綾香vs葵、は楽しんでいただけましたでしょうか?

 はあ・・・・今現在、10月18日の午前1時・・・・あと8時間ほどで中間テストがあるのになぜ自分はSSなんか書いてるんだろう・・・・
 そういえば夏休みも・・・(以下云々)

 葵ちゃんSSらしくない、ということで今回ではちょっと葵の浩之への想いをあーゆー形で表現してみました。
 万死に値する最悪の表現かも・・・・・

 またSS掲示板なんかに感想書いてくれると嬉しいです。

 それでは、できるだけ速くRoad.5で会いましょう。 >火鳥


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