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          RPGとぅうはあと

                                 火鳥泉行


「おーい葵ちゃん、そろそろ出発するぞー」
「あ、ハイ!今行きます!」
 ここはとある町の宿屋。
 一本しかない狭い廊下に人影が一つ、一番奥のドアの前に立っている。
 紺色のマントに身を包んだ青年―――浩之はドアの横の壁にもたれかかるようにして部屋から少女が出てくるのを待つ。
「おまたせしました、先輩」
「おお、んじゃいくぜ」
「ハイ!」
 そう答えると、拳法着を纏った少女―――葵は入り口へと歩き出す浩之の後にひょこひょこと付いていく。
 歩きながら浩之は革製の財布を取りだし、小さく宿代の計算をして、150ゴールドを手に取った。
 ここの宿は見かけはあまり高価な所ではないが、食事もうまく、部屋もわりかし大きい。それで、一人50ゴールドだ。
 一人50ゴールドで150ゴールド、ということは・・・
「そーだ、葵ちゃん、先輩は?」
 ふと思い出したように、浩之が振り返る。
「先に出てるって言ってましたけど・・・あ、ホラ、あちらにいますよ」
 葵がそう言って指した方向の入り口付近に、漆黒のローブに三角帽子を身につけた人物―――芹香が立っていた。
 二人がこちらに突くと、芹香はゆっくりと頭を下げて小さくつぶやいた。
「・・・・・・」
「ああ、おはよう、先輩」
「おはようございます、来栖川先輩。今日は絶好の冒険日和ですね」
「・・・・(こくこく)」
「んじゃそろそろ行こっか・・・おーい理緒ちゃん、宿代ここに置いとくぜ」
 そう言って浩之が3人分の宿代を番台に置くと、その奥から元気な声とともに小柄な少女が顔を出した。
「あー、みなさんお出かけですかぁ?えっと勘定は、と・・・ハイ調度ありますね!」
「オイオイ、客の前で堂々とそんなこと確認してたら客が減っちまうぜ?」
 それとなく手厳しい少女―――理緒の行動に、浩之は苦笑した。
 理緒は彼の言葉に愛想笑いを浮かべながらも、落とさないよう丁寧にお金を奥にしまう。
「今日のお帰りはいつごろになるか分かりますか?」
「いや、今回はちょっと遠出するつもりだから、2、3日は帰ってこないと思うよ」
 そうなのだ、浩之たちはこの町―――リーフを拠点に大陸を冒険しているのだ。
 というわけで、理緒が経営するこの宿屋はもうすっかり馴染みのある、いわばマイホームのようなものだった。
「先輩行きますよー!」
「あーわかった。じゃな理緒ちゃん」
「お気をつけてー!」
 そんなこんなで3人は宿を後にした。



「あ、先輩。町を出る前にちょっと武器やに寄ってもいいですか?」
「そーだな。ちょうどオレの剣も刃こぼれが目立ってきた所だから、いっそ全部買い換えよっか」
「・・・・・・(私も少し買い足さなくてはならないものが・・・)」
「なに買うの、先輩?」
「・・・・・・(黒魔術専用の蝋燭と魔術書と厄よけのお守りと・・・)」
「さすが大陸No,1と言われている黒魔術師・・・・」
 少し後ずさりしながら浩之が呻く。
「私はナックルです。ヌンチャクとかもほしいけど、やっぱり武闘家にはナックルですよね!」
「ま、そーだろーな。戦ってる時の葵ちゃんってカッコイイしな」
「そ、そんなことないです・・・・」
 浩之の言葉に、葵はボボッと赤面する。
「・・・・・・」
「え・・・先輩の戦ってる姿は・・・周りから見て少し怖いけど、先輩の黒魔術のおかげでオレたちも助かってるのは確かだよ」
「・・・・(ポッ)」
『なでなで』
「ちょ、先輩っ、恥ずかしいって!」
『なでなで』
「いいなぁ先輩だけ・・・」
「葵ちゃん・・・それはちょっと違うぞ・・・(でもうれしい)」



「へー、いろいろ置いてあるんだなぁ」
 ここは武器屋、その中でも中心に一番多く置かれている剣専用の場所に浩之はいた。
 少し離れた所に葵の姿が見える。どうやらほしいのが多すぎてどれにするか迷っているようだ。
 そして、部屋の一番隅にある、なにやら周りの空気が黒くなっている所は、黒魔術専用のフロア、少し他と隔離されているように作ってある場所。当然その中に芹香はいるハズだ。
 本能的にできるだけそっちは見ないように、浩之は近くにあった剣を手にとってみた。
「うーん・・・これは少し軽すぎてしっくりこない・・・・こっちは重みがあってズッシリくるみたいだけど威力がなさそうだ・・・」
 一本一本を手に取るたびにブツブツと感想を言い、また違う剣を選ぶ浩之。
 やがてそんな彼のもとに、一人の店員が話しかけてきた。
「どのようなものをお探しでしょうか、お客様」
 振りかざして剣をもとに戻し、浩之はそっちに向き直った。
「んー、片手剣で、長持ちするヤツないかな」
「それでしたらこちらが・・・」
 そう言って男が取って出した剣を握ってみる。
「こちらはかの有名な『プロフェッサー・ナガセ』が愛用していた長尺剣でございます」
「なんでプロフェッサーが剣なんか使ってたんだ・・・?それにオレはそんなヤツ知らんが・・・」
 浩之の疑問を無視するように店員が続ける。
「とにかく威力抜群!使い安さもピカイチの当店オススメの一品でございますよ!」
「うーん・・・」
 眉をひそめて悩む浩之のもとに、片手にそれぞれの購入品を抱えて葵と芹香が集まってきた。
「先輩、どうですか決まりましたか?私はこれに決めました」
「・・・・・・(私もこれくらいで・・・)」
「あーそーだ。2人とも、この剣どうだと思う?」
 剣先に布を被せて、剣を2人に見せる。
「あ、いいんじゃないですか?だいぶ使い込まれているようですし」
「・・・・・・(その剣から100人の霊を感じます・・・おそらくその剣で殺された人たちでしょう・・・)」
 芹香以外全員、一斉に引く。
「こ、怖いこと言わないでよ先輩・・・(ドキドキ)」
「び、びっくりした・・・背筋に寒気感じちゃった・・・(ドキドキ)」
「・・・・・・(大丈夫です。今は守護霊となって敵からあなたを守ってくれます)」
「そ、そっか。じゃ、これにするか!それじゃ、これとあれとあっちのまとめて頼むぜ」
「ありがとうございます。お会計1300ゴールドになります」
 そう言われると、浩之は再び財布の中からお金を取り出し、台上に置いた。
「うわっ、これで金がほとんどなくなっちゃったよ。なんとかして稼がなくちゃな!じゃ、みんな行こうぜ」
「ハーイ!」
「毎度どうもありがとうございましたー」




「さーて、もう買うもんねーかな、っつってももうなんか買う金なんかねーけど」
「食料は前に買いだめしておいたから大丈夫です」
「・・・・・・(それより町を出る前に少しバイトをしなければ・・・)」
 一瞬、浩之の動きが止まる。
「そ、そーだよな。今度帰ってきた時に金がなかったら疲れた身体でバイトしなきゃなんねーもんな」
「そーですねぇ・・・・」
「短時間で結構稼げるバイトねーかな・・・」
「・・・・・・(バイトではないですけど、町の広場で私の黒魔術を披露すればカンパが集まるのでは・・・)」
「いや、それだけはやめとこう。2度とこの町にいられなくなるから」
「なにかないものでしょうか・・・」

――――と、その時!!

  ビュッ ガキーン!!

「なんだ!?」
「魔物でしょうか!?」
 突然戦闘を歩く浩之の3歩ほど前に矢が突き刺さった。
 同時に3人は一斉に戦闘態勢に入る。
「どこだ!どこにいる!?」
「・・・・(そこの屋根の上に何かがいます)」
 芹香の言葉を聞き、2人はバッと彼女の視線の先に全身を向ける。
 と同時に、屋根の上から高々とした笑い声が聞こえてきた。
「ワーハッハッハッハネ!!」
「『ネ』?」
「なんかあんま迫力のない笑い方だな・・・」
「・・・・(あの姿は・・・)」
 3人の向かう先に仁王立ちしているその正体は!?
「ワタシ、邪悪なる魔王様のしもべ、闇の狩人ことダークハンター(某パクリ)!その名もレミィネ!勇者一行よ、お前たちの旅もここまでだヨ!!」


                                         −つづく−






 ・あとがきらしきもの

 お久しぶりです。火鳥泉行です。代表作は「奇跡の想い」、って誰も聞いてませんね・・・。
 えー、かなり前の作品の終章は現在温め中です。もうちょっと待ってください。っつーか忘れてもらっても結構です。
 はあ・・・自分、何書いてるんだろう・・・今日は8月30日。自分はまだ高校生なので宿題が山積みに残っています。なのになんでSS書いてるんでしょうね。ま、いっか。楽しいし。(あとで痛い目見るタイプ)
 なんか勝手に「連載モノ」ということでやらせてもらうつもりなのですが、いつまで続くことか・・・(ォィ
 それにしてもWEBドラマが大人気ですねー。もちろん自分も参加させてもらってます。主に使用するキャラはやっぱ浩之ですかね。雅史も結構使ってるけど、怪談時の暴走は自分じゃありませんよ。まあ何回かはボケをやりましたけど、それはかなり前のことです(仮設置して一週間後くらい)。
 まあ、そんなこんなでこれからも迷惑掛けると思いますがどうかよろしくお願いします。
 
                              それでは 火鳥泉行でした


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