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TO HEART SIDE STORY

"The Winner have not been in this World"


Prologue




 赤。

 ただ赤だけがある。

 横たわる肉体から飛び散る赤。

 命が砕け、散華する。

 二度と還ることはなく。


 無。

 少女の顔は何一つ映さない。

 眼前に横たわる肉親の躯を前に、全ての心は無に満たされていた。

 ふと目に映ったもの。

 そのフォトスタンドに移された人々の顔。

 陽気な老人、不敵に笑うロングヘアの美少女、表情を引き締めた空手着の少女、そして自分と肩を抱いて笑い合う青い髪の少女。

 少女はそれがごく当たり前の事であるかのようにそれを懐に入れ、そして眼前の景色を一瞥する。

 全てを失った少女は駆け出し、そして部屋から炎が燃え上がる。

 全てを飲み込む猛き紅蓮。

 後に、そこには何も残らず

 ただ、屍と残骸がそこにあるだけだった・・・




 黄金色。

 たわわに実る穂が示すもの。

 命の証。

 頭を垂れた穂を持つ植物は、少女の心に安堵をもたらす。
 
 実る稲穂が好きだった。

 家族と共に笑いあい、畦道を駆け抜けた遠い日。

 夕暮れに輝く穂を見つめ、少女は不意に涙をこぼす。




 緑。

 黄金色の穂を持つ畑を振り返ると、そこは緑で覆われていた。

 太く力強い緑の茎。

 陽光へとその手を伸ばす幾重もの葉。

 太陽と青空が好きだった。

 親友と畑で遊んだ夏の日。

 冷えたトマトを川辺で一緒に食べた記憶。

 共に学び、共に高め会った無二の親友。



 過去はいつしか記憶となり、心からその居場所を失う。



 緑と黄金に包まれながら、全てを失って少女は歩く。

 されど時は留まることなく、無情にも進み続ける。


 物語は、それより2年の時を経て動き出す・・・・




                TO BE CONTINUED....




  次回予告

 当たり前のように続く毎日。
 変わり映えする事が無くても、楽しい日々。
 自分の側にいてくれる、大切な人達。
 私、松原葵にとってもそのような人は多くいました。そして今もいます。
 エクストリームも終わり、先輩との日々が続いていたとき、ある人がやってきました。
 それは私の恩師。
 私や綾香さん、好恵さんを鍛えた人。
 そして・・・もう1人。

 次回 TO HEART SIDE STORY "The Winner have not been in this World"

 Episode 1 転換期−Turning Point−

 是非読んでくださいね。


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