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         奇跡の想い Forever
                                      
                                      火鳥泉行



  あの事件の翌日の朝がやってきた

  「浩之ちゃーん」

  外からいつもの声が聞こえる

  が、その声もいつもとどこか淋しい


   ガチャ

  「わりぃ。待たせたな、あかり」

  「浩之ちゃん・・・・今日は制服の上着を持っていかなきゃ・・・・」

  「・・・・・そうだったな・・・取ってくるからちょっと待っててくれ・・・」

  そう言って振り返る後ろ姿が小さく見える

  「浩之ちゃん・・・・・・」

  片手に提げているカバンは いつもより軽い

  今日は授業がなしだと 昨夜 クラスの連絡網で廻ってきた


  今日は 全校集会があるらしい

  その理由を あかりは知っている

  無論 浩之も



    今日は――――慰霊式だ――――――



  



「やっほ。あかり、ヒロ」
「志保・・・・」
 行きの坂道で、志保に出会った。
「・・・今日の志保ちゃん情報は・・・・言うまでもないわね・・・・」
「・・・・・・」
 彼の顔が少しうつむく。
「・・・ごめん・・・そんなこと言うべきじゃないわね・・・・」
「・・・・・・」
 沈黙が流れる中、コンクリートを踏みしめる音だけが、3人の耳に入ってくる。






「えー・・・みなさんに大変残念なお話が・・・・」
 式が始まった。

 すでに泣いている人もいた。
 おそらく理由を知っているのだろう。

 校長の話が進むにつれ、辺りはざあざあとどよめき、やがて至る所で泣き声が聞こえだした。






 最後はかすれるような校長の声で、話は終わった。

「続きまして・・・・」

 次は、慰霊になる。

 死んだ彼女に思い入れがある人が前に出てくるよう指示された。

 もちろんその中に、あかりと並んだ浩之の姿もあった。





 横で、あかりが泣いていた。

 浩之は、線香を立て、じっと慰霊を見つめた。

 そこにあった少女の写真は、くもりのない笑顔だった。


 やがて、あかりが泣き崩れた。

 大声を上げて泣き叫ぶ彼女の肩をやさしく抱えて、彼らは慰霊を後にした。



   涙の一粒も出なかった








「それでは・・・・これで臨時の全校集会を終わります・・・・生徒は速やかに下校してください」




 気をつかってくれたのか、泣きやまないあかりは志保が引き取ってくれた。


 一人になった俺は神社に向かった。











 いつものこの場所が、やたらと淋しく感じる。

 神社――――2人だけの同好会の練習場――――俺と葵ちゃんの思い出の場所――――――


 サンドバッグが掛かった木に行ってみた。

 サンドバッグの無数の傷が、彼女の存在を物語っている。

 しかし、彼女の姿はもうない。

 ここに来ることは・・・・またあるだろうか・・・・





 彼は、ポケットからウレタンナックルを取り出した。

 同好会に入って、葵ちゃんからもらったウレタンナックル――――


 彼は、木の根元を掘り出した。

 そして、できた穴にそれを入れ、ゆっくりと土をかぶせていく。

 ――――葵ちゃん・・・・

 やがて、その姿は見えなくなった。



   「さよなら・・・・・」




  心地よい風が流れた


  昨日の出来事がすべて現れていくような――――――


  彼は 昨夜の奇跡に感謝しながら 神社を去る











  しかし 奇跡はこれだけでは終わらなかった




                                      
  〈つづく〉






  あとがき

 ・・・は、続きの作品でまとめて書きます。

 中途半端な終わりかたになってしまいました。理由はとくにないです・・・・

 こんなあとがきを読んだら、感動も感動じゃなくなってしまいますが、どうか次回 作にご期待ください。


                              疲れてる体に鞭を 打って、火鳥泉行でした。


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