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〜デート〜
・・・浩之の事情・・・
                 writed by Hiro
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シャー!
朝起きてカーテンを開ける。
「ん〜〜!いい天気だぜ!」
目覚めはいいし、天気も上々。
「今日は葵ちゃんとデートだぜぃ!」思わず、ガッツポーズを取ってしまうオレって・・・
でもな、久しぶりだもんな。リキも入るってもんだ。
って、自分に言い聞かせてどうすんだ?

昨日葵ちゃんをデートに誘った。

「葵ちゃん、明日ヒマ?」
「明日ですか?明日は、たまたま道場がお休みですけど。なぜですか?」
「そうか・・・よかった。ここのところ、二人でどこにも行ってないだろ?
 だから、たまには映画でも。なんてな!」

最近、練習が忙しくって、なかなか一緒に出かけられなかったし
制服姿の葵ちゃんもいいけど、たまには私服姿も見てみたい。
そんなわけで、誘ったんだが・・・
オレもなぁ、デートの誘いぐらい、ちゃんと言えばいいものを
照れくさいんだよなぁ。最後に ”なんてな!”と余計な言葉を付け足しちまう。
もし、断られたときの予防線を張っているかも知れない。・・・臆病なオレ・・・
あかり相手だと強気でいけるんだが、葵ちゃん相手だとなぁ・・・・・

さーてと、時間は・・・8時45分
駅前まで15分もあれば充分だな。
余裕を見て、9時30分に出ればいいな。
さて、準備っと。

朝飯・・・のどに通らん。緊張してるのかな?オレ。
久しぶりだもんな、葵ちゃんとデート。
メシはパス!

何着ていこうか?
洋服ダンスを開けてみる。
ん?なんでタキシードなんてあるんだ?
あ、この間、雅史のお姉さんの結婚式に着ていったんだよな。
気合い入れて作ったのはいいけど、高かったんだよな。
今日、着ていくか。
いかんいかん、オペラパンプスがないじゃないか。
ローファー履いて思いっきり笑われたもんな、志保に。
第一、セバスチャンを呼ばなきゃいけない。
・・・却下・・・
いーや、紺ブレ(紺色のブレザー)で。
東○ラブ○トーリーも終わったけどいいよな。
やべ!9時40分になっちまったよ。
そろそろ出なきゃ。

ホンットにいい天気だなぁ。
玄関から出て深呼吸。
気持ちいいな。
やっぱな、男が先に行っていて待つのが礼儀ってもんだ。
なんて思いながら道を歩いていると・・・

「ゲッ!志保だ」

ん?なんか雑誌を読んでるな。
”ジャ○ール”? 個人情報誌じゃねーか。
相変わらず、あんなの読んでるのか?
ラッキーなことに、オレのこと気づいてないみたいだな。
シメシメ、道の反対側に寄って・・・

「あ〜〜!ヒロ!」
「!!」

あちゃ〜

「なになに!どこ行くのよぉ!あ、紺ブレなんか着てぇ!デート?デートでしょ」

いやなヤツに見つかっちゃったな。

「相手はあかりじゃないわね。あかりは親戚の所に行ってるはずだし・・・」
「え?い、いや、あのな・・・」
「誰よぉ!相手は」
「ん?あの、雅史と・・・」
「な〜にいってんのよぉ!いつもGパンにトレーナーのくせに」

あぁ〜あ、神様のばか・・・

「だ・れ・な・のぉ?」
「・・・・・・・・」
「ヒロ!」

びっくぅ!

「言わないの?ふ〜ん、わかったわよぉ」

どうしよう・・・

「きゃ〜〜〜〜〜!だれかぁ〜〜〜〜」
「ししし、志保!」
「白状する気になったかしらん?」
「わかったよ、言います、言えばいいんだろ?葵ちゃんだよ。葵ちゃん!」

ばれた・・・

「葵ちゃん?あ〜松原さんね。ふぅ〜〜ん」
「しほぉ・・・」
「今ね、ヤックのバリューセットがねぇ・・・」
「・・・ドリンクはLでいいか・・・」
「なぁに〜〜?聞こえないわよぉ」
「ドリンクはLでいいかって聞いてんだよ!」
「さっすが、ヒロ。話せるわねぇ」
「てめぇ、もし、んなこと学校で広まったらただじゃおかねーからな!」
「わかってるわよ〜 じゃね!」

はぁ〜、ただでさえ金がないのに・・・
おやじぃ、今月の生活費はまだかぁ?

そうだ、今何時だ?
やっべ〜〜〜、10時33分
葵ちゃんが待っている・・・

「葵ちゃ〜ん!ゴメンゴメン、遅れちまったな」
「せんぱぁ〜い、心配しちゃいましたよぉ・・・」
「ホントにゴメン!!途中で志保に会っちまった。
 うるさいんだよな、アイツに会うと」

くぅ、こんな理由で遅刻するなんて情けない・・・

「そうですか・・・長岡先輩に会っちゃったんですね。・・・そうですか・・・」

変に納得してるみたいだけど・・・
葵ちゃん、怒っている・・・よな

「・・・・・・・いいです・・・・先輩が無事に来てくれましたから・・・・・もういいです」
「・・・・怒ってる?」
「・・・怒ってません!」

おいおい、怒ってるよ

「葵ちゃん、ホントにゴメンな。オレもさっさと振り切ってくれば良かったんだけど・・・
 アイツ、適当にあしらうと、翌日からオレ、校内中で後ろ指さされるんだよ。
 あること無いことのデマでさ」

すっげ〜言い訳がましい・・・な

「わかりました」
「え?葵ちゃん、許してくれるの?」
「そのかわり、今日はぜ〜んぶ先輩のおごりですからね」
「うっ、それは仕方ないけど・・・葵ちゃん?」
「はい?」
「やっぱ、怒ってた」
「あ・・・・・」

なんとか、ポイント稼がにゃ



まずいなぁ、映画館満員だよ。入れそうもないな、こりゃ。
え〜い、公園でひなたぼっこだ。




ブル!寒くなってきたな。そろそろ帰るかな。
っと、その前に・・・もう一度だけ葵ちゃんに謝っておこう。

「葵ちゃん、今日はホントにホントにゴメン!!」

もう、土下座覚悟だ。

「オレが遅刻してこなかったら・・・チケットを先に押さえておけば・・・」
「いいんです。せんぱい・・・ただ・・・」
「ただ?」
「わたし、人がいっぱいいる所より、誰もいないところで、先輩とふたりっきり
 のほうが ・・・」

い!!葵ちゃんの口からこんな言葉が・・・

「あお・・い・・・ちゃん?」
「ははは、はい!!」
「いま、すごいこと言った」
「・・・・・・・・」

葵ちゃん、顔が真っ赤になってるよ。カワイ・・・なんて言ってる場合じゃないよな。

「・・・葵ちゃん・・・」
「・・・・・・・・」
「ねぇ・・・」
「・・・せんぱい?・・・」
「ん?なに?」
「今から先輩のおうちに行ってもいいです・・・か?」

ありゃ〜、すごい展開になっちまった・・・

「そりゃかまわないけど・・・、ウチは共働きだし、
 親父もお袋も滅多に帰ってこないから、だれもいないぜ」

自分でも顔が固まってくるのがわかる。

「・・・・・だから・・・・・」
「へ?聞こえない」
「・・・・・だから・・・・・」
「・・・・・いいのか?」

成り行き上仕方ないかな・・・え?
葵ちゃん・・・いきなり抱きつかれたら・・・あせるよ。



「おじゃましま〜す」
「おう、散らかってるけど」

やっぱ、緊張するよな。あかりの時は気になんないんだけどなぁ。

「散らかってるけど・・・って、さっきも言ったよな。ハハハ・・・」

なーに、あせってんだか、オレ・・・

「まぁ、適当に座っててよ。あ、コ、コーヒーでいいか?
 砂糖とミルクは・・・いるよな、やっぱり」

落ち着け〜落ち着くんだ!浩之

「・・・・・」
「・・・・・」



空気が重い・・・
葵ちゃんだってまさかコーヒーを飲みに来た訳じゃないだろうし・・・
なんとか、話題を振らなきゃ。

「あ、あお・・・」
「せんぱ・・・」
「え?」
「はい?」

声がひっくり返っちまった。
葵ちゃんもだけど・・・

「なに?」
「い、いえ、先輩こそ」
「ん〜、じゃあオレから。いったいどうしたの?今日は。
 葵ちゃんの口から、あんな言葉が出てくるとは思わなかったぜ」
「先輩がいけないんですよぉ。わたし、すっごく心配したんですからぁ。
 もしかしたら、事故にでも遭ったのかと思って・・・
 もう、逢えないかもって・・・」

泣かせることいってくれるぜ・・・って、ありゃ、葵ちゃん涙目になってる。

「うっ、それに関しては弁解の余地・・・ない。
 オレも自分のことなんか気にしないで、葵ちゃんのことを最初に考えなきゃ
 いけなかったんだ。だから、ゴメン。あやまるよ」

・・・・やばい!葵ちゃんの目に、だんだん涙があふれてきてる。

「・・・わるい。あやまる。だけどな、葵ちゃん」
「ぐす、・・・なんですか?・・・」
「心配性だな」

火に油注いでどうする。

「ひっく、ぐす・・・しりません!」

あぁ〜あ、泣いちゃった

「はぁ〜、泣かせちゃったな・・・オレってダメだよな。
 惚れた子を泣かせたり、心配かけたりして・・・はぁ〜」

何言ってんだ、オレ!つい、本音が・・・

「せんぱい・・・いま・・・」
「あ!ん、い、いや、ん〜、なんだよ!気が付いてなかったのか?
 オレが、葵ちゃんの事をただの後輩としてしか見てないと思ってたのか?
 社交辞令なんかしないよ!別に。
 オレは葵ちゃんが好きだからデートしてるんだ。
 そうだよ、オレは、藤田浩之は松原葵に惚れてるよ。これでいいか!?」

もう、ヤケだ!

「せ、せんぱ・・・」

ここまで来たら、開き直るしかないな・・・
とは言うものの・・・やっぱ、最後のあがき。

「だから、その、いや・・・」
「せんぱぁ〜い!!!」

う、本日二度目の抱きつき。葵ちゃんって意外と華奢だな・・・なんて言ってる場合か?




どれくらい時間が経ったんだろう?
あれから、ずっと葵ちゃんを抱きしめてる。

「・・・先輩?」
「ん?」
「先輩の部屋にいきたいです・・・」
「・・・だめ」
「・・・・・」
「だめだよ」
「・・・・・どうして・・・ですか?」

どうして?って言われてもなぁ。
今はまずいよ・・・葵ちゃん。

「葵ちゃん、オレもはっきり言って葵ちゃんのことを抱きたい。
 さっきまでは、オレの部屋に連れていこうと思ってた。
 でもな、よく考えてみたら、それってフェアじゃないよ。
 なんか、気持ちが不安定な時をつけ込んで・・・なんてことになってしまうだろ?
 だからオレは、今の葵ちゃんを抱けない。解ってくれよ。
 もう少し、お互いに冷静になった時に。な?」

カッコつけすぎ・・・かな?

「さ、葵ちゃん、飯でも食いに行かないか?オレ、腹がぺこぺこなんだ。
 遅刻のお詫びになんでも好きなもんおごる約束だもんな。
 公園で飲んだ缶コーヒーだけじゃ、いくらなんでも・・・だろ?」

ふ〜、なんとか、風向きがかわりそうだな。
葵ちゃんの笑顔も戻ってきたし。

「そうですね。わたしもおなかがぺこぺこになっちゃいました。
 何でも好きなものでいいんですよね?」
「おう!まかせとけ!」
「じゃあ」
「じゃあ?」
「フランス料理のフルコース!」
「えぇ!でもあれって、予約とかいるんだろ?それに金が保つかな・・・・・」

おいおい、葵ちゃん、そんな急に・・・
ホントにお金が無いんだってば。
それどころか、志保にヤックのバリューおごらにゃならんのに・・・

「先輩、冗談ですよ。本気にしないでくださいね」
「そうだろ〜、びっくりさせないでくれよ。
 いま、マジで、すぐ金になるバイト考えちまった」
「大げさですよぉ」
「でも、まじめな話、何がいい?」
「このおうちで食べられるものなら、なんでもいいです」
「?」

なに?

「でも、今あるのはインスタントラーメンぐらいしかないぜ。お湯を注ぐヤツ」
「それでいいです。先輩と一緒に食べられるなら、
 どんなものでもおいしいにきまってます」
「葵ちゃん・・・」



結局、カッ○ヌー○ルで済ませてしまった・・・
こらこら、葵ちゃん、人のガキの頃の写真見て笑ってんじゃないの。
・・・やべ、あかりと一緒に写ってる写真を見られたよ。
・・・ん、ダイジョブそうだな。

「すっかり、遅くなっちゃったな。送っていくよ」
「いえ、ひとりで帰れますよぉ」
「いいって。今日の罪滅ぼしさ」
「じゃ、お言葉に甘えちゃいますね」

そう、罪滅ぼし罪滅ぼし。



葵ちゃんの家は・・・あの角を曲がったところだよな。

「先輩、今日はごめんなさい」
「あやまるのは、オレのほうだって」
「違います、夕ご飯がラーメンになっちゃいました」
「そんなことか。オレは葵ちゃんと食べたから、とてもうまかったぜ」

うっわ〜、オレってすっげーキザ。
あれ、葵ちゃん黙っちゃったよ。
あきれてものも言えないってやつか?

「どうしたの?葵ちゃん」
「なんでもないです・・・それと・・・」
「それと?」
「ありがとうございました。」
「へ?」

あれ、オレって今日、なんかした?
あのカッ○ヌー○ルがそんなにうまかったか?
でも、そうしたら、ふつうは「ごちそうさま」だよな?

「先輩の気持ちが初めて解りました」

くっ!葵ちゃ〜〜ん、それは勘弁してくれ〜
思い出すだけで激恥ずかしい。

「あ、葵ちゃん!」
「まさか、あの言葉って・・・」
「オレの本心だって。あまりいじめないでくれよ。恥ずかしいんだから」
「それだったら、ありがとうございました」

こうなりゃ、逆襲だ。

「やれやれ、葵ちゃんには、かなわないな。
 まてよ、オレ、まだ、葵ちゃんの気持ちを聞いてないぞ」
「わたしですか?わたしは・・・」

ふんふん

「わたしは、松原葵は藤田浩之先輩が大好きです!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・も、だめ。葵ちゃんには勝てない・・・・・・・




                           おしまい





 あとがき
みなさん、こんにちは。Hiroでございます。
これは、浩之君から見た葵ちゃんとのデートの光景です。
(んなもん見ればわかるって)
一つのテーマで二度おいしい。
せりふはカット&コピーで・・・よぉ〜し、楽勝ぉ〜〜〜
なんて気楽な気持ちで始めたんですが・・・・・
浩之君のモノローグと葵ちゃんとの会話で整合性をとるのに、以外に苦労しました。
あと、浩之君が起きてから出かけるまで&道中での志保との会話が
だらだら長くなってしまい、2作目より長くなってしまいました。
(このHPの主役ってだれ?)
やれやれ、です。
まぁ、如何にうまくまとめるかが今後の課題ですね。

そして、エンディング。
締め方が少し不満です。
もう少しうまくいったらなぁ。
書いて、書いて、書きまくるべし・・・です。

この、3作品はGW中に書きました。
家族サービスを全くしてない証拠です。
(おかげでウチの奥さん、少しばかり不機嫌です)

次はいつかな?お披露目できるのは。
ネタ探しの旅に出ます・・・・

                   1999年5月 自宅にて Hiro


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