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〜デート〜
・・・葵ちゃんの事情・・・
                 writed by Hiro
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「いっけな〜い、遅れちゃう!」
腕時計を何度も見ながら、駅までの道を一所懸命に走っています。
もう、9時55分。まにあうかな?
「うぅ、なんで寝坊しちゃうんだろ・・・」

そう、今日は先輩とデートです。
といっても、先輩って特定の人とお付き合いしてるって話は聞かないんです。
ところが、わたしのことを気軽に誘ってくれる・・・
もしかして、先輩はわたしの事を?
それともわたしが知らないだけで、本当は神岸先輩とお付き合いしてるのかなぁ?
ぷるぷる!
いまは、余計なことを考えないでおこうっと。

でも、わたしって子供みたいだなぁ。
遠足の前の夜みたいに、次の日に楽しみなことがあると、寝れなくなっちゃうんです。
もう何度も何度も、先輩とお出かけしているのに・・・・・
「やっぱり、先輩とお出かけするのは楽しみなんですよ。ね!」

ふぅ、やっと駅前に着いた。セーフ!
って、えっ?あれっ?えっ?
先輩、まだ来てないのかなぁ?
約束は10時だよね。たしか・・・
昨日の別れ際に、先輩に言われたことを思い出してみる。

「葵ちゃん、明日ヒマ?」
「明日ですか?明日は、たまたま道場がお休みですけど。なぜですか?」

もしかしたら、デートのお誘いかなぁ?
そういえば、最近どこにも連れていっていただいてないし・・・

「そうか・・・よかった。ここのところ、二人でどこにも行ってないだろ?
 だから、たまには映画でも。なんてな!」

ふふ、先輩ったら変わらないな。
わたしを誘ってくださるとき、照れくさいのか冗談みたいな口調になる。

「は、はい!あいてます!あいてますよ!」

思わずわたし、すかさず答えちゃいました。
だって・・・・・とてもうれしかったから・・・・・・・

「ん。じゃ、駅前に10時ね。楽しみにしてるぜ」

「先輩は確かに10時って言ってたよね」
誰ともなしにつぶやいてみる。自分に確認するように。
そう、確かに10時って言っていた。間違いない。
でも、なぜ・・・



・・・・・もう、30分経った。
先輩、どうしちゃったんですか?
約束を忘れちゃったんですか?
「先輩のおうちに電話してみよ!」

え〜と、公衆電話は・・・あ、あった。
カードを差し込み
ピ、ピ、パ・・・・・・トゥルル・・・・・・・・トゥルルル・・・・・
(でないなぁ。おうちからは出ているみたい・・・)
まさか、途中で・・・・・・・


心細い思いをしながら待っていると

「葵ちゃ〜ん!ゴメンゴメン、遅れちまったな」
「せんぱぁ〜い、心配しちゃいましたよぉ・・・」
「ホントにゴメン!!途中で志保に会っちまった。
 うるさいんだよな、アイツに会うと」

しほ・・・志保・・・あ、長岡先輩。
たしか、校内はおろか、校外までネットワークを拡げて、口の悪い人には、
”歩く東○ポ”とか言われてる人だよね。
あ!先輩もそう言っていたっけ。せんぱぁ〜い、先輩だけは違いますからね!

「そうですか・・・長岡先輩に会っちゃったんですね。・・・そうですか・・・」

なぜか、納得してしまうわたし・・・・・
いけない、いけない。みんないいところはあるよね。
フォローになってるかなぁ・・・

「・・・・・・・いいです・・・・先輩が無事に来てくれましたから・・・・・もういいです」
「・・・・怒ってる?」
「・・・怒ってません!」

わたし、プイって横向いちゃいました。
先輩は悪くないのに・・・・
素直じゃないなぁ、わたしって。

「葵ちゃん、ホントにゴメンな。オレもさっさと振り切ってくれば良かったんだけど・・・
 アイツ、適当にあしらうと、翌日からオレ、校内中で後ろ指さされるんだよ。
 あること無いことのデマでさ」

それって、脅迫じゃないかなぁ。

「わかりました」
「え?葵ちゃん、許してくれるの?」
「そのかわり、今日はぜ〜んぶ先輩のおごりですからね」
「うっ、それは仕方ないけど・・・葵ちゃん?」
「はい?」
「やっぱ、怒ってた」
「あ・・・・・」




結局、映画は封切り直後ということもあって、とても入れる状態でなく、
公園でひなたぼっこする事になりました。
先輩らしいです。

「葵ちゃん、今日はホントにホントにゴメン!!」

公園で二人してひなたぼっこして、もう夕方なんでご飯でも食べて帰ろうってことに
なったんですが、そのときのことです。
先輩が、今にも土下座をしてしまうような勢いで謝ってきました。

「オレが遅刻してこなかったら・・・チケットを先に押さえておけば・・・」
「いいんです。せんぱい・・・ただ・・・」
「ただ?」
「わたし、人がいっぱいいる所より、誰もいないところで、先輩とふたりっきり
 のほうが ・・・」

やだ!わたしって何言ってるんだろ!
大胆なこと言っちゃった。
朝、あんなに不安になったから?
もしかして、もう二度と逢えなくなるかもしれないと思ったから?
30分しか待ってないのに・・・・・

「あお・・い・・・ちゃん?」
「ははは、はい!!」
「いま、すごいこと言った」
「・・・・・・・・」
顔が火照ってゆくのがわかります・・・
「・・・葵ちゃん・・・」
「・・・・・・・・」
「ねぇ・・・」
「・・・せんぱい?・・・」
「ん?なに?」
「今から先輩のおうちに行ってもいいです・・・か?」

先輩の顔、まっすぐ見れない・・・
ついつい上目遣いになっちゃいます。

「そりゃかまわないけど・・・、ウチは共働きだし、
 親父もお袋も滅多に帰ってこないから、だれもいないぜ」

段々先輩の顔が固まってくるのが解ります。
どなたもいらっしゃらないことは知ってますよぉ。
だから・・・
先輩、にぶい!それとも・・・・・?

「・・・・・だから・・・・・」
「へ?聞こえない」
「・・・・・だから・・・・・」
「・・・・・いいのか?」

やっと解ってくれたみたいです。
わたし、返事をする前に先輩の胸に飛び込んじゃいました・・・




「おじゃましま〜す」
「おう、散らかってるけど」

・・・・・先輩、緊張しているみたい・・・・・
そうだよね、わたしから誘うなんて・・・・・
誘ってる?
わたし、誘ってる?・・・自分から。
朝、あんなに不安になったから。

「散らかってるけど・・・って、さっきも言ったよな。ハハハ・・・」

先輩・・・ぎこちないですよ。

「まぁ、適当に座っててよ。あ、コ、コーヒーでいいか?
 砂糖とミルクは・・・いるよな、やっぱり」

あたふたしてる・・・



「・・・・・」
「・・・・・」

長い沈黙
さっきから二人で向かい合ったまま、黙ってコーヒーをすすってます。
なにか話さなきゃ・・・

「あ、あお・・・」
「せんぱ・・・」
「え?」
「はい?」

先輩、見事に声がひっくり返っちゃってますよ。
わたしも・・・

「なに?」
「い、いえ、先輩こそ」
「ん〜、じゃあオレから。いったいどうしたの?今日は。
 葵ちゃんの口から、あんな言葉が出てくるとは思わなかったぜ」
「先輩がいけないんですよぉ。わたし、すっごく心配したんですからぁ。
 もしかしたら、事故にでも遭ったのかと思って・・・
 もう、逢えないかもって・・・」

わたし、知らないうちに涙声になっちゃいました。

「うっ、それに関しては弁解の余地・・・ない。
 オレも自分のことなんか気にしないで、葵ちゃんのことを最初に考えなきゃ
 いけなかったんだ。だから、ゴメン。あやまるよ」

先輩、ずるいです。そんな風に言われたら、何も言えないじゃないですかぁ。
わたし、もう完全に泣いちゃってます。

「・・・わるい。あやまる。だけどな、葵ちゃん」
「ぐす、・・・なんですか?・・・」
「心配性だな」
「ひっく、ぐす・・・しりません!」
「はぁ〜、泣かせちゃったな・・・オレってダメだよな。
 惚れた子を泣かせたり、心配かけたりして・・・はぁ〜」

え?・・・ ・・・ 惚れた子?いま先輩が、惚れた子って言った・・・
・・・惚れた子・・・惚れた子・・・聞き間違いじゃないよね?
初めて先輩が言ってくれた。私のことを好きだって。

「せんぱい・・・いま・・・」
「あ!ん、い、いや、ん〜、なんだよ!気が付いてなかったのか?
 オレが、葵ちゃんの事をただの後輩としてしか見てないと思ってたのか?
 社交辞令なんかしないよ!別に。
 オレは葵ちゃんが好きだからデートしてるんだ。
 そうだよ、オレは、藤田浩之は松原葵に惚れてるよ。これでいいか!?」

先輩、顔を真っ赤にして、まるで機関銃のように一気に言葉を吐き出しました。

「せ、せんぱ・・・」

(わたしも大好きです。先輩のことが)
心の中でそうつぶやいています。でも、声にすることはできません。そして・・・
涙も拭けず、先輩の言葉をただ、聞いている事しかできなくなっちゃいました。
あまりのことで・・・

「だから、その、いや・・・」
「せんぱぁ〜い!!!」


先輩の胸、とても暖かかったです・・・


・・・どれくらい時間がたったのでしょうか?
あれから先輩は、ずっとわたしのことを抱きしめていてくれました。
強く・・・優しく・・・

「・・・先輩?」
「ん?」
「先輩の部屋にいきたいです・・・」
「・・・だめ」
「・・・・・」
「だめだよ」
「・・・・・どうして・・・ですか?」

先輩なら、いえ、先輩だから抱かれてもいいと思ったのに。

「葵ちゃん、オレもはっきり言って葵ちゃんのことを抱きたい。
 さっきまでは、オレの部屋に連れていこうと思ってた。
 でもな、よく考えてみたら、それってフェアじゃないよ。
 なんか、気持ちが不安定な時をつけ込んで・・・なんてことになってしまうだろ?
 だからオレは、今の葵ちゃんを抱けない。解ってくれよ。
 もう少し、お互いに冷静になった時に。な?」

先輩、優しすぎます・・・

「さ、弥生ちゃん、飯でも食いに行かないか?オレ、腹がぺこぺこなんだ。
 遅刻のお詫びになんでも好きなもんおごる約束だもんな。
 公園で飲んだ缶コーヒーだけじゃ、いくらなんでも・・・だろ?」

先輩は、この重い空気を吹き飛ばすような明るい口調で、こう言ってくれました。
解りました。次の機会まで・・・ですね!
でも、わたしってこんなに大胆な子だったんだ。
先輩の前だから?
それとも、先輩がくれた魔法の力?

「そうですね。わたしもおなかがぺこぺこになっちゃいました。
 何でも好きなものでいいんですよね?」
「おう!まかせとけ!」
「じゃあ」
「じゃあ?」
「フランス料理のフルコース!」
「えぇ!でもあれって、予約とかいるんだろ?それに金が保つかな・・・・・」

うふふ、先輩、真剣に考えてます。あと頭の中でお財布の勘定を・・・

「先輩、冗談ですよ。本気にしないでくださいね」
「そうだろ〜、びっくりさせないでくれよ。
 いま、マジで、すぐ金になるバイト考えちまった」
「大げさですよぉ」
「でも、まじめな話、何がいい?」
「このおうちで食べられるものなら、なんでもいいです」
「?」

だって、一分でも、一秒でも永く、先輩とふたりっきりでいたいんです。
ふたりっきりで・・・

「でも、今あるのはインスタントラーメンぐらいしかないぜ。お湯を注ぐヤツ」
「それでいいです。先輩と一緒に食べられるなら、
 どんなものでもおいしいにきまってます」
「葵ちゃん・・・」



結局、ふたりでラーメン食べて、いろいろなことお話しして・・・
(そうそう、先輩の小さいときの写真を見せてもらいました。かわいかった・・・)

「すっかり、遅くなっちゃったな。送っていくよ」

・・・もう、そんな時間。今日はお泊まりしてもいいかなって思っていましたけど
先輩がわたしのことを、とても大事に想ってくれていることも解ったし、わがままも
言っていられないので、今日は帰ります。
今度、お泊まりさせてくださいね。せんぱい・・・

「いえ、ひとりで帰れますよぉ」
「いいって。今日の罪滅ぼしさ」
「じゃ、お言葉に甘えちゃいますね」




あの角をまがれば、家だ・・・もう、着いちゃう。

「先輩、今日はごめんなさい」
「あやまるのは、オレのほうだって」
「違います、夕ご飯がラーメンになっちゃいました」
「そんなことか。オレは葵ちゃんと食べたから、とてもうまかったぜ」

じわっ・・・だめ、また泣きそうになっちゃいます。
わたしが黙りこくってると、

「どうしたの?葵ちゃん」
「なんでもないです・・・それと・・・」
「それと?」
「ありがとうございました。」
「へ?」

先輩、なにかお礼をされることしたかな?なんて顔しています。

「先輩の気持ちが初めて解りました」

かぁ〜〜〜〜!先輩の顔がみるみる真っ赤になってゆくのが解ります。

「あ、葵ちゃん!」
「まさか、あの言葉って・・・」
「オレの本心だって。あまりいじめないでくれよ。恥ずかしいんだから」
「それだったら、ありがとうございました」
「やれやれ、葵ちゃんには、かなわないな。
 まてよ、オレ、まだ、葵ちゃんの気持ちを聞いてないぞ」
「わたしですか?わたしは・・・」

もう自信を持って、胸を張って言えちゃいます。

「わたしは、松原葵は藤田浩之先輩が大好きです!」



                         おしまい
                         



あとがき

みなさん、こんにちは。Hiroでございます。
調子に乗って、2作目のSSをつくってみました。
設定は、藤田浩之くんが雅史君エンディングを迎えてます。(ぉぃぉぃ、よくないって)
つまり、フリーってわけですね。
それから、本文ではふれていませんが、神社での練習は参加しています。
そうしないと、葵ちゃんと何度かデートをしているっていう設定があやふやなものに
なってしまいそうで。
ちょっと、邪道だったかな?

いかがだったでしょうか?
少し、タイトルがありきたり。
気の利いたタイトルが浮かばなかったんです〜〜。←これじゃ、マルチだって。

また、これだけ話を膨らませてくれた志保に、感謝ってとこでしょうか。(笑)
志保に捕まらなかったら、浩之君の本心も解らなかったわけですし。

まぁ、冗談はさておき、葵ちゃんってかわいいですね。(しみじみ)
結構、自分好みのキャラに味付けしていますけど、ベースがいいから
味付けも良くなる・・・って料理みたいになっちゃってますね (^^ゞ

実は、3作目もできてます。
・・・設定は全く一緒。
浩之君から見たお話です。
ただ、少しばかり長くなってしまったんです。
だらだらしているもんで。(^^ゞ
続けて読んでいただくと幸いです。


            1999年5月 自宅にて。子供に邪魔されながら Hiro


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