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                 おれは忘れない。あの日、
       
                 おれに向かって微笑んだ、
 
                   あの天使のような

                少女の微笑みを・・・・・・・・


     小説To Heart
 
             天使の微笑み

                  writed by ぶらっくばいす
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「・・・・・・・・・」
 おれは再びこの場にいる。
『あの時』と同じように。
 ただ一つ違うのは、目の前の少女があの頃と見違える程、
 きれいになったと言うことか。
 
 あれは、高2の時だった。
 マルチと観覧車に乗った。マルチが乗りたいと言い出したからだ。
 おれは観覧車はあまり好きでは無い。むしろ、嫌いと言ってもいい。
 こんなゆっくり回る物の、何が楽しいんだ、と。その日までは・・・・・
『わあ〜、すごいです!!こんな高くまで・・・・・あ、研究所が見えますう〜』
 ・・・・観覧車も案外悪く無いかな・・・・・(笑)

 マルチのテスト期間も終わり、数日したある日、1本の電話がかかってきた。
「はい、もしもし、藤田ですが」
「あ、あ、あの、そのお、ひろ、ひろひろ、浩之さんはっ・・・」
「!!?マルチ!!マルチじゃねえか!!」
「あ、浩之さんですか〜。おはようございます!」
「どうしたんだ?元気にしてるか?」
「はい!とても元気です!!それで〜、その・・・・・」
 何でもお手伝いします!!と言う。なにやら気合い十分のようだ。
 ようするに、学校で世話になったお礼をしたいらしい。
 それからしばらくして、迷子になったマルチを迎えに行った。

「さすがはマルチだな・・・・」
 マルチに掃除してもらうと、ほんときれいになる。
 掃除が終わった後、まだ時間があるらしいので、
 掃除のお礼もかねて、遊園地に行こう、という事になったのだ。

 そして、あれから3年たち、こうして、マルチとまた観覧車に乗っているのだ。
 マルチは、先程からずうっと外を眺めている。
 スッと髪をかきあげる動作に、おもわずドキッとする。
 髪、伸びたかな?
 長瀬さんに伸ばしてもらったんだろうか・・・
 ともかく、目の前の少女は、少女というよりも女性と呼ぶにふさわしい身体に
 なっていた。
 昔のような、おっちょこちょいな所は微塵も感じさせない。
 『人間』だった。

「浩之さん----」
 ふと、現実に引き戻される。
「----今日は、どうもありがとうございました。
 私、浩之さんに会えて、うれしかったです。」
 なにを急にかしこまってんだ?
 マルチらしくないぞ?
「おいおいマルチ、なにいってん・・・・・・」
 その時おれがみたのは-----------
 マルチの瞳から流れ落ちる雫・・・・・・
 純粋な心を持った『人間』の涙。
 やっぱり、マルチはあの頃のままのマルチだった。
「あれ、あ・・・れ?どうしたんでしょう、涙が止まりません・・・・
 おかしいですね、浩之さんにあえて、うれし、うっ、うれしいはずなのに」
 おれは何も言わずマルチを抱き寄せる。
「ヒロ、浩之さ〜〜〜〜ん!!!!」
 
 なでなでなでなでなで・・・・・・

 なでなでなでなでなで・・・・・・

「ひ、浩之さん、恥ずかしいです・・・・」
 顔をぽ〜〜っと赤らめて、頭をなでなでされることに酔ってるようだ。
「いいじゃねえか。マルチはなでなでされるの、好きなんだろ?」
「は、はい・・・・・・だいすきです・・・・・」


「すみませんでした・・・・私、もう浩之さんの前で泣かないって決めたのに・・・・
 やっぱり泣いちゃいました。これじゃあ、あの時と変わらないですね〜」

 あの時。やっぱりこうしてマルチを抱き締めてた。ずっと、ずっと、放さないと。
 このまま時が止まればと。だけど、やっぱり別れの時がきて・・・・・・
『私、今日のこのこと、メモリのいちばん、いちばん大切な所に焼きつけて
 おきますね!!』
 そういって笑ったマルチの笑顔が一瞬、天使の微笑みに見えた・・・・・

「大人びた格好をすれば、泣かないでお別れできるかな〜って思ったんですけど・・・・
 やっぱりだめでした・・・・・当たり前ですよね・・・・」
 そうこうしてるうちに観覧車が地上に着いて・・・・・
「もういっしゅう、しませんか、浩之さん」
「・・・そうだな」
 また回り出した観覧車の中で、おれはマルチにくちづけする。
 ずっと。ずっと。ずっと。ずっと・・・・・・
 放したく無い。けれど、やはり時は無情で・・・・・


「また・・・・・『眠る』んだな・・・・?」
 あのころよくマルチを送った、駅前のバス停。
 ここらへんも、すっかり変わってしまった。
 
 キキイイイイーーーーー!!プシュ〜〜・・・・

 バスがきた。これで又お別れ。
「浩之さん、私はまた『眠り』ます。けど、浩之さんとの思い出があれば
 きっと、さびしくないと思います。今日の事は、あの日のようにメモリのいちばん
 大事な所に焼きつけておきますから!」
「・・・・・・・・・」
 夕日を浴びて、ほほを赤く写し出す。
「これ、浩之さんにお預けします」
 すっ、とマルチが差し出したもの。
「・・・・・・これは・・・・・・」
 麦わら帽子・・・・・あの日、最後の思い出にと、プレゼントしたやつだ。
「どうして・・・・?」
 疑問が口を突く。
「私の事を忘れないでほしいから・・・・・・」

 プープップー

「出ますよ、早く乗って下さい」
「浩之さん、行きますね・・・・・」
 マルチの眼がまた潤んできた。
「ばっか。泣くやつがあるかよ」
「そうですね、・・・・・・浩之さん」
「なんだ?」
 マルチの顔が、ちょっと悲し気に見えた。
「あの約束・・・・まだ覚えてますか?」

-------『お前の妹達が発売されたら、おれ絶対に買うぜ!!』-------

ばっかやろう・・・・忘れる訳ねえだろ・・・・

「覚えてるぜ。ちゃーんとな」
 バスに乗り込むマルチにそう答えると、にこっと笑った顔。
 ・・・・・・あのころと変わらない・・・・・・・

    ----天使の微笑み----

去って行くバスに、おれはいつまでも手を振っていた。


      ---そして---
「マルチ、マルチ!!」
 あれから1年だろうか。
 発売されたマルチの妹を、おれは親に借金して購入した。
 一人暮らしだからとか何とか理由を付けて。
「マルチ--」

ブウン・・・・・・
 虚ろな眼。
「御命令ヲドウゾ。御主人様」
 機械的な台詞。

プツン・・・・・・

ブレーカーを落とす。
「・・・・・・・・」
 何度目だろうか。こんな意味のない行為をするのは。
 いつか、あの微笑みでおれを迎えてくれるんじゃないか
 という期待とそれを打ち砕く現実。

 それから数週間過ぎ・・・・・

 チュン・・・・チュチュ・・・

「おはよう・・・・マルチ・・・・・」
 うごかない『それ』にくちづけし、
 ポストの中をのぞく。
「?・・・・これは・・・・」
 その手紙には、『来栖川エレクトロニクス』と書かれていた。
 
 拝啓 藤田浩之殿---------

 この度は、『HM-12』をお買い求め頂き、まことにありがとうございます。
 --とまあ、社交辞令はこれくらいにしましょう。
 今回はとても重要な事を言わせてもらいます。
 実は、あなたの手元にあるメイドロボは、新品ではありません。
 以前、貴方が通っていた高校でテスト運用していた物です。
 オーバーホールは万全ですので、心配はいりませんが。
 
 同封されている、CD-ROMを立ち上げて、『HMX-12』にインストールして
 あげて下さい。そうすれば------

「以前のHMX-12、いや、マルチが眼を覚まします・・・・だと!?」
 読み終えるより先におれの足は2階へと向かっていた。
「マルチ!!マルチ!!!」
 そこに置いてあった、麦わら帽をかぶって。
 CDを読み込んで、解凍して・・・・・・
 インストール・・・・・・
「マルチ!!解るか!!おれだ!!浩之だよ!!」
 
 ブン・・・・・・
 
 
「え・・・・・?ここ・・は?あれ?浩之さん!?ああ・・・・・また・・・・
 また会えました・・・・!!」
 マルチがおれの胸にとびこんでくる。
「浩之さん、浩之さ〜〜〜〜〜ん!!!!」
「マルチ!!マルチ!!!」
 マルチを痛いぐらい抱き締めてやる。
 ・・・・もう放さない!!
 おれだけの・・・・・天使の微笑み!!

 その時おれの手から、例の手紙が宙に舞った。
 その手紙の最後には、

 p.s. 私達の大事な愛娘を、どうか末永くよろしく頼みます。
 
            HM開発課 所長 長瀬源五郎

                      と、書いてあった。



どうも、はじめまして。ぶらっくばいすです。
一応、こういう場で発表するのは始めてなんですけど。
マルチがなんかちがーう!!とか、つまらん!!って突っ込みはなしです(^^;)
はぐ☆マルチさん風に言うなら、
シリアス・こっぱSSってとこですかね。

題名からしてこっぱだもん。

マルチ(以下マ):チャットしながら書いたそうですよ、浩之さん。
浩之(以下ひ):なんか、はぐ☆マルチさんだのとっちさんだのに
        ネタもらって書いたらしいぜ。
あかり(以下あ):使いますよ〜って言ってホントに使っちゃったね・・・・
ぶらっくばいす(以下ぶ):んな事言わないで、構想からたった3時間で書いた事を
             認めたっていいだろ?
マ:はあ、それは凄いかも知れませんねえ・・・・。
ぶ:だろ?マルチえらいぞ〜★なでなでなでなでなでりんこ〜
マ:はううううう・・・・は、はずかしいですう・・・
ひ:ただ単に周りのサポートの結果じゃねえか・・・・
あ:そうだね。というわけで、

ありがとうございました☆ 
次回はコミカルタッチのマルチ物を書くつもりです☆
おやすみなさい〜・・・・
って、もう朝や・・・・・

H11.11.23/ネタくれた皆様に感謝しながら・・・・・・


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