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        ToHeart[Leaf]/松原葵SS

            SunsetKiss
             〜夕陽色の森3〜


                           write: M.Hagu
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 閉じた瞼の向こう側。
 オレンジ色が映ってる。

 吹き込まれる熱い息が。
 喉の奥で熱くて。

 体が一瞬ふにゃって崩れそうになって。
 きゅって抱き留められて。

 私の体が私のものじゃないみたいに。
 飛んでしまいそうになります。

 そっと目を開けば。
 そこには目を閉じた先輩の顔。

 先輩の顔もオレンジに染まって。
 じぃっと見つめていると幸せな気持ちになれる。

 目の前に先輩がいる。
 私を抱きしめてくれる。

 熱い温もりと。
 先輩らしい力強い唇。

 その何もかもが幸せで。
 幸せ過ぎて。

 ほぉって息が出てしまいます。
 息を吐いたらもっとからだが自分のものでなくなって。

 いつまで続くんだろうって。
 いつまでこうしてくれるんだろうって。

 ずっとこうして。
 こうして抱きしめてほしいって。

 言葉には出来ないけれど。
 腕からきゅって力を加えたら。

 きっと伝わるから。
 先輩は解ってくれるから。

 力の抜けた腕に必死に力を込めて。
 先輩に抱きつく力を強めました。

 ずっとずっと。
 先輩の腕の中でずっと。

 温かい胸の中で。
 幸せを感じていました。


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「はっはっ」
 バシッバシッ。

「もう一発!」
 先輩の声でミットを蹴る。

「はっはっ!」
 何度も何度も。

「よーしっ」
 先輩の合図で動きを止める。

「今日の練習は終わりだ」
 夕暮れの境内に先輩の声が響き渡る。

「はぁー」
 地面に座り込んで大きく息を吐いた私を後ろから撫でてくれる手。

「疲れた?」
 振り返らないでも解ります。

「ちょっと疲れましたね」
 先輩が優しい笑顔で見つめてくれてること。

「今日はハードだったからなぁ」
 手が頭の上から肩筋に移動します。

「先輩の練習時間無くなっちゃいましたね」
 そっと後ろから抱きしめられます。

「俺は筋肉痛なんだよなぁ」
 その優しさとは裏腹に言葉はちょっと戯けていて。

「くすっ」
 思わず笑いが込み上げちゃいます。

「マッサージしましょうか?」
 先輩の腕を解いて体を横に向けて。

「おいおい」
 先輩の横に回り込んで。

「じょ・う・だ・ん・ですっ」
 きゅって横から抱きつきました。

「なら俺が葵ちゃんに」
 先輩がそんなことを言うからすぐに飛び退いちゃいます。

「先輩はエッチなことするから嫌です」
 べって舌を出して飛び退きます。

「しないしないって」
 慌てて手を振って誤解を解こうとする先輩。

「しますっ」
 笑い顔で言い返す私。

「しないってば」
 苦笑いで。

「します」
 微笑みで。

「あぁーもういいよ」
 結局は肩をがっくりと落として。

「あは」
 私の勝ちです。

「いいよいいよ俺なんて」
 先輩拗ねちゃいます。

「せぇんぱい」
 ダメですよぉ拗ねても。

「それじゃぁマッサージの代わりにですね」
 また先輩に近寄って隣にしゃがんで。

「へっ」
 素っ頓狂な声を上げる先輩。

「帰りましょ先輩」
 何も無かったようにスッと立ち上がって。

「葵ちゃん」
 呆然と前を見たままで。

「着替えてきますね」
 私も本当は顔が真っ赤なんですけどね。

「葵ちゃん今……」
 だって私。

「キス……」
 したんですから。

「……」
 何も答えないで逃げるように林の中に駆け込んじゃいました。

「えへへ、しちゃった」
 体が熱いです。

「先輩驚いて」
 私からするのは初めてのキス。

「あはは」
 照れ隠しで笑っちゃいます。

「ドキドキしてる」
 心臓の音がしっかりと聞こえちゃいます。

「……」
 悪ふざけのようなキス。

「でも……」
 キスしてる時は真剣だからドキドキするんです。

「しばらく収まらないなぁ」
 そう呟いたその時。

「きゃっ!」
 物音にも気配にも気がつかなかった。

「せ先輩?」
 後ろから抱きつかれて。

「卑怯者」
 その腕は先輩ので。

「そんなぁ」
 その腕は強引に私を振り返らせて。

「そんな悪い子には罰だね」
 その腕は私の首筋を優しく抱えて。

「んっ!」
 その腕は私の顔を引き寄せて。

「……」
 夕陽色の森で優しく唇を交わしたんです。

「せんぱぁい」
 先輩の大好きがこもった熱いサンセットキス。


                             END






〜あとがき〜
新作葵ちゃんSS完成です。
倒置式(手法名を知らん)の書き方で書いてみました。
ようするに、最後が一番上のに繋がる、と。

どないなもんでしょ?( ̄_ ̄;)

                        はぐ[multi@suki.net]


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