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ここは東鳩


あ、葵チャン?!

東鳩を愛する人達へ
あ、葵ちゃん?!


書いた日時:1999年10月23日(土)の昼。
登場人物:藤田浩之、松原葵
時期設定:体育祭のあと。浩之が葵ちゃんが格闘家と知らない…と、思ってる葵ちゃん。



「やべえ!カツサンドが…」
浩之が購買のパンを目指し、走って廊下の角を曲がると、前から歩いてきた他の生徒にぶ つかってしまった。浩之も、その生徒も廊下に尻餅をついてしまった。
「…いってえ〜…あ、わりい。急いでて…大丈夫か?」
浩之は相手が女子生徒とわかると、手を差し出した。
「あ…」
浩之が差し出した手が見えていないのか、浩之の顔を見ると、一言、驚きの声を上げただ けで、時間が止まっていた。浩之はそれを不審に思ったが、もしかしたら、立てないほど なのかと思いもう1度声をかける。
「おい…大丈夫か?立てないほど、どっか、痛いのか?」
相手の女の子は、瞬きを二回すると、顔を真っ赤にして、
「あ、え、は…いえ!大丈夫です!」
そういうと、ぱっと軽い身のこなしで立ちあがり、
「すいませんでした!」
と走っていってしまった。一人、所在無さげな差し伸べた右手のまま、
「いや、俺が悪かったって…もう行っちまったな…」
と、頭をかいた。


―――せ、先輩にぶつかっちゃった…―――

教室で授業を受けながら、先ほど浩之にぶつかった女子生徒、松原葵は、その時の事を反 芻していた。廊下を歩きながら珍しくぼおっとしていたところで、ぶつかってきたのが、 憧れの先輩、藤田浩之だった。

―――先輩、あの時のこと…覚えてないよね…やっぱり…―――




体育祭の昼時。実行委員の一人である、葵は、かなり重めのダンボール箱を運んでいた。

―――…んっ…結構重いけど、大丈夫だよね…―――

と思い、持ち上げてみたが、予想以上の重さが、葵の両腕と腰に来て、フラフラとしてい た。前がほとんど箱で見えないので、周りに謝りながら進む。
「あ…」
ちょっとした段差があったらしく、思わず、つまずいてしまう。ダンボール箱ごと倒れて しまうと思った葵の予想を裏切り、自分もダンボール箱も、なぜか、安定を保っていた。
「おい、大丈夫か?」
声がしてはじめて、自分の肩と、ダンボール箱に他の人の、手がかかっているのに気がつ いた。
「あ、ハイ!ありがとうございます!」
「これずいぶん重いんじゃねえか…?……んッ!」
「え…」
その男子生徒は、ダンボールを抱えるとそのまま、運び出した。
「体育館のわきでいいのか?」
「え…あ、ハイ!…あ、あの…」
彼は、微笑むと、
「気にすんな。女の子が困ってるのを助けるのは、男の務めだろ?それに、キミみたいに 非力な女の子に、こんなもん持たせる奴が悪いんだ。」
と、言って、スタスタと運んで行った。
体育館わきまで運ぶと、それをおろし、彼は、
「ここでいいのか?」
「ハイ!ありがとうございます!あの…」
『……2年400mリレーに出場される選手は、正面ゲートにお集まりください。2年400m
リレーに出場され…』
「あ、やべえ、俺出るんだっけ…じゃあな。」
「あ…」
そう言って、走って行く彼を、葵は見送ることしかできなかった。ただ、彼の体操服のネ ームタグは確認した。

……藤田浩之……

―――藤田…先輩…―――

心の中でそれをつぶやいた葵は、自分の体温が上がって行くことに気がついた。

―――先輩…リレーに出るんだ…―――

葵はその気持ちに誘われるままにグランドに向かうと、ちょうど、第1走者が走り出した
ところだった。

―――先輩は……アンカー…?!―――

第3走者からアンカーへ、順番にバトンが渡っていく。
「まかせたよ!浩之!」
「おう!」
雅史から浩之にバトンが渡る。浩之の走りを見て、

―――…きれい…―――

葵の心にひとつの言葉と、大きな鼓動が広がった。葵の鼓動は、浩之が前との差を詰める たびに大きくなった。2位から、1位を目指し、浩之の走りはさらに力強くなる。
「せんぱ〜〜〜〜い!」
葵の声援に押されるように、浩之はさらに、スピードを上げた。
「……わあああ!………あ……」
浩之が、ゴールラインを切ると、葵は、自分が声を上げていることに周りの視線で気付き、 顔を真っ赤にして、その場を立ち去った。
グランドに背を向けながら、葵は自分の気持ちに気付いていた。たったひとつの大事な気 持ちに…




「昨日は失敗しちゃったなあ…」
弁当を暖かな日差しの中、中庭のベンチで食べながら、独り言をつぶやいていた。
「おっ、うまそうな弁当だな…」
葵の肩越しに、浩之が弁当を覗いていた。
「えっ!あ、藤田先輩!」
「はぁ?なんで俺の名前知ってんの?」
「え、あ……」
「ま、いいや…それよりこれ、落としたぜ。葵ちゃん。」
「え!!なんで私の名前を知ってるんですか!?」
浩之は、その落し物を示しながら、
「いや、これ…生徒手帳だから…」
「…あっ…」
それを聞いて真っ赤になり下を向いてしまった葵に、
「…生徒手帳…いらねえの?」
「あ、いります!いります!」
葵は浩之から、手帳を受け取ると、顔を伏せながら、
「……ありがとうございます…」
「おう!…じゃ!」
と言って後ろを向こうとした浩之に、葵は、
「あ、あの…」
「…なに?」
「あ、あの先輩、お昼ご飯は…」
「あ、俺…?これ…」
そう言って笑うと、浩之は、左手に持ったパンの袋を少し上げた。
葵は精一杯の勇気を振り絞って、
「あ、あの!よろしかったら、ご一緒に…」
浩之は少しのあいだ、何か考えたようだったが、すたすたと歩いてきて、どかっと葵の隣 に座ると、
「そうだな…一人より二人の方が楽しいもんな。」
「ハイ!」


「へえ、葵ちゃん、自分で弁当作るんだ…えらいなあ…」
「そんな…すごいもんじゃありませんよ。卵焼きとか、冷凍のハンバーグとか、そのくら ですから…」
「それでも、すげえよ。俺なんか、自分でマトモにご飯なんか作ったことねえからなあ。」
「それで、いつもパンなんですか?」
「いつも?なんで葵ちゃん、俺がいつもパンだって知ってるの?」
「え、あ、その…」
いつも見てたなんて言えない葵は、どもるしかなかった。それを見たからか、浩之は、
「俺、葵ちゃんの作った弁当、食べてえなあ…」
「えっ!!わ、私のですか?!」
「おう、作ってくれねえか?」
「は、ハイ!!作ります!」
浩之は、
「期待してるぜ。」
「ハイ!がんばります!」




―――先輩の喜んでくれるような、お弁当ってどんなのだろう?…―――

葵は、練習を終え、家に帰ってから、料理の本をいくつも持ち出して見ていた。葵の母が それを見つけ、感慨深そうに、
「葵も料理を作って上げられる人ができたのね…」
「え、あ、そんな…まだそんなんじゃ…」
「それじゃあ、なおさらがんばらないとね!葵、教えてあげるわ。」
「え、ホント…ありがと、お母さん…」




「先輩!」
昼休みに、浩之のクラスまで行き、葵は、浩之に呼びかけた。
「葵ちゃん…あ、もしかして…」
「は、ハイ!お弁当です。」
「よっしゃああああああ!!」
浩之は高らかに喜びの叫びを上げると、
「早く行こうぜ、葵ちゃん!」
「あ、ハイ!」

「この弁当ホントにうめえよ。」
「そんな…」
浩之が弁当に、がっつくのを見ながら葵は、自分の思いを整理していた。

―――先輩…私のこと、どう思ってるんだろう…それに…―――

葵は、自分が浩之に非力な女の子だと思われてることに、ある種の罪悪感を感じていた。

―――私、空手もできるし…エクストリーム目指してるし…ホントはそんなに非力じゃな い……先輩は私のこと…非力な女の子だと…これじゃ、先輩に嘘ついてるみたい…―――

「葵ちゃん?どうしたんだ?」
箸が止まったままになって下を向いている葵に、弁当を食べ終わった浩之は心配そうに話 しかける。
「あ、なんでもありません。」
「そうか…それならいいだけど…」
そう言うと、今度は浩之が、下を向いて何かを考えているようだった。
「どうしたんですか、先輩?」
意を決したように浩之は葵の瞳を見ると、
「葵ちゃん!」
「は、ハイ?!?」
いつになく真剣な浩之の目に葵は一瞬たじろいだ。
「驚かないで聞いてくれ……!実は俺……葵ちゃんのこと……好きなんだ!」
「えッ!?!そんな先輩…」
「葵ちゃんの気持ちが聞きたい!」
真剣な浩之に葵は、
「先輩…実は私…先輩に秘密にしてたことがあるんです…それを聞いたら、先輩…私のこ と嫌いになっちゃうかも…」
「俺が葵ちゃんのこと嫌いになるわけねえだろ?」
葵は、眼を伏せながら、
「私、ホントは非力じゃないんです…空手もやるし、エクストリームっていう総合格闘技 の大会目指してるし……こんな女の子嫌いですよね……」
葵の瞳から、きらりと、光るものがこぼれる。
「…知ってるよ…」
「えっ……!」
涙でいっぱいになった瞳のまま顔を上げた葵に、
「…あの体育祭の時の、葵ちゃんの声…聞こえたぜ…」
「あの時の…覚えていて…くれたんですか…」
照れて、頭をかきながら、浩之は、
「俺、もうだめかなって、あの時思ったんだぜ。そしたら、すげえでけえ声で、せんぱ〜 い…って聞こえて…な……」
「あれから、葵ちゃんのこと学校で見るたび声かけようと思ったんだけど、なんかタイミ ングがさ…だから、今、葵ちゃんの気持ち教えてくれよ!」
「先輩…私……」
葵は、嬉し涙で瞳をぬらしながら、
「好きです!誰よりも、先輩が!」



終わり




スタッフルーム

K3:あ〜あ、つかれた。とっとと寝よ…ぐはぁっ!!!
いいんちょ(以下・い):この世間のガンが!!寝られると思っとんのか!
K3:まったく、なんです、いいんちょ?僕は眠いから寝ますよ。話は僕が起きたらね…
い:……永遠の眠りにつきたいんか?
K3:いや〜、もう目ぱっちり!さ、話、始めましょう!!
い:卑屈な奴やな…
葵:あ、K3さん、今回、私のお話で…ありがとうございます!
い:それや!
K3:なんですか?いいんちょ?
い:なんですか?…や、ないやろ!今回、プールでうちの話やったはずやろ!
マルチ(以下・ま):あ、そういえば…
K3:でも、もう寒いでしょう、温水とはいえ、プールは?
ま:ああ!もう10月も半分、終わってしまいました…
い:何日かけて、SS書いとるんや!一ヶ月も経ってるやないの!
K3:それはまあ、いろいろありまして…まず、ペルソナですねえ…あと、CGとか…MIDI
とか…
ま:いろいろ、やっていらっしゃるんですね…
葵:それで、遅れてしまったんですか?
い:そないなわけあるか。たぶん、ネットでもやって、時間がなくなったんやろ?
K3:ちょっと、用事を思い出しましたので、ワタシ、カエラセテ、イタダキマス。
い:のがさへん!松原さん、そのゴミ、捕まえや!
葵:あ、ハイ!K3さん、ごめんなさい!
K3:…ごぼっ…グハァッ…あ、葵ちゃん…む、無念…
ま:あ、K3さんが死んでしまわれました〜。
い:このゴミがこのくらいで死ぬわけあらへんやろ?
葵:でも私、思わず、三連撃で、急所に入れていまいましたが…
い:あ、ホンマや…完全に伸びとる。まあ、ええ、そろそろ終わりにするわ。マルチ!
ま:あ、ハイ!メールと書きこみ、お待ちしてます!
葵:保科先輩!K3さん…心音がしないんですが…
い:……ほな、どこにほかすか考えんといかんな…

続かないのか、K3?!

メールはk3home@geocities.co.jpへ


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