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  したごころ

by はぐ          

「おはようございます」
 目を覚ましたら、そこに葵ちゃんがいた。
 なんか体がむずむずすると思ったら、なるほど。
 葵ちゃんが俺の体にすりついてたわけか。
「どうしたぁ、朝から」
 葵ちゃんはさらに、俺の胸に頬をすりつけてる。
 やわらかい頬とこすれて、かなりくすぐったい。
「あったかいんです」
 一瞬聞き逃してしまいそうなほど、小声で呟いた。
「まぁ、寝起きだしな」
「はい。すごくあったかくて、気持ちいいです」
 そういう葵ちゃんだって、温かいんだけどな。
 胸を擦る頬も柔らかくて気持ちいい。
 肩にあてられた手もそうだ。
 それに何よりも。
「葵ちゃんの体のほうがいいぞ」
「え? そうですか?」
「おぅ」
 なにしろ、さっきからわき腹あたりにあたってるんだよな。
 葵ちゃんの胸が。
「こういうのっていいですよね」
「ん?」
「あははは」
 突然笑い出した。
 見るからに、ごまかし笑いだな。
「どうしたんだよ、いきなり」
「私、変なこと考えちゃいました」
「変なこと?」
 一瞬エッチなことかともおもったけど。
 葵ちゃんがこうハッキリ言うってことは違うな。
「どんなことだ?」
「あはは、言えません」
「なんだ、それ」
「ちょっと、恥ずかしすぎて言えません」
 体を震わせて笑ってる。
 俺と目を合わせようとしないし。
 なんか、気になるなぁ。
 よし。
「うりゃ」
「きゃ」
 腕を引っぱって、葵ちゃんの体を俺の上に乗せた。
 背中に手を回して、これで完了だ。
「さ、さぁ、何を考えていたか白状しろ」
 少し頭を起せば、キスだって出来そうな至近距離。
 少し赤い顔して微笑んでる葵ちゃん。
 その顔が何か、今までの葵ちゃんと違って見えた。
 一瞬にして、心臓がバクバクと鳴り始めた。
 けれど、それをなんとか気づかれないようにと。
「ほらほらほら」
 手をわき腹におろして、くすぐった。
「きゃっ、わ、わ、あは、あはは、やめて、先輩っ」
「やめる前に言うんだ、ほらほら」
「きゃははは」
 体をよじる葵ちゃんを逃がしてなるものか。
 さらに全力を込めてくすぐり続けた。
「い、言います。言いますからっ、ああはは、あぅっ」
 瞬間、腕をぎゅっと握られた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
 それを合図に俺も止めた。
「さぁさぁ、言ってもらおうか」
「ちょっと恥ずかしいです」
「じゃぁ、もう一回」
「い、言いますよぉ」
 慌てて首を横にふる。
 まぁ、俺もこれ以上やる気はないけどな。
 なにしろ、やばい。
 この状態はどっちかと言えば俺にとっての拷問だ。
「女の子なんだって、思ったんですよ」
「は?」
 言ってる意味が、いまいち解らない。
 思わず、目を見つめてしまった。
 少し潤んだ、けれど嬉しそうな目をしている。
「ほんの少し前まで、裸だって恥ずかしかったです」
「あ、あぁ」
 それはよく知ってるけどな。
 葵ちゃんと始めて結ばれたあの日から、今の今もだが。
 葵ちゃんはエッチに対して、かなり純だ。
 いつも、俺にされるがままで、そして恥ずかしがる。
「でも、今日はこうやって裸同士で朝まで寝ちゃったんですよ」
「確かに初めてだよな」
「はいっ」
 嬉しそうに頷く。
「こうして、先輩と一緒に裸んぼで抱き合って眠るなんて」
 そう言って、少しはにかんで。
「夢みたいです」
「そっか」
 口元を抑えるその顔は、喜びで溢れている。
 少なくとも俺はそう感じた。
「先輩」
「ん?」
「私、今、恥ずかしくないんです」
「裸のこと?」
 他に思い当たらない。
 すると、案の定。
「あの、はい」
 そう答えた。
 が、その答え方が恥ずかしそうに見えなくもないけれど。
 まぁ、昨夜までに比べたら全然違うよな。
「恥ずかしいどころか嬉しいんです」
「嬉しいかぁ」
「どうしてでしょうね」
 そんなこと、俺にたずねられても解らないって。
「そう思ったら、わかったんです」
 葵ちゃんが一層嬉しそうな顔を見せる。
「私、女の子なんですね」
「いやまぁ、そうだろ」
「クラスメイトの子たちが言ってたんです」
「なんて」
「女の子は、好きな人の胸の中にいる時が一番幸せなのよ、って」
「ははは」
「あはは」
 葵ちゃんのその言葉で、思わずふたりして笑ってしまった。
 ひとしきり、笑い終えたところで。
「んっ」
 葵ちゃんの顔を近づけさせて、キスをした。
「で、女の子だって実感した感想は?」
「嬉しいです」
 即答だ。
「それは光栄だな」
「はいっ。んっ」
 今度は、葵ちゃんから。
「先輩」
 唇を放して、一瞬の後。
「私、女の子なんですね」
「あぁ」
「先輩は男の人で。私、女の子で」
 首に抱きついてきた葵ちゃんの頭をそっと撫でてやる。
「先輩」
「なんだ?」
「今日は一日中こうしてていいですか?」
 甘えた声。
 あまり聞いたことのない猫なで声だった。
「気が済むまでどうぞ」
「はい」


 その通り、昼を過ぎても葵ちゃんはずっと俺に抱きついていた。
 俺も、葵ちゃんも裸のままで。
 けれど、いやらしいことは何ひとつしないままで。
 ただ体を寄せ合って、ずっと話をした。
「先輩」
「ん?」
「何もしないんですか?」
 思いがけない言葉だった。
 葵ちゃんがこういう言葉を使うのは初めてじゃないか?
「正直、我慢の限界だけどな」
「いいですよ、先輩」
「いいですよって。葵ちゃん?」
「エッチなこと、していいです。私、したいです」
 うわぁ。
 これは正真正銘、絶対に初めてだ。
 葵ちゃんから、エッチがしたいなんて言葉聞ける時が来るとは。
「今日はどうしたんだ?」
「え? どうしたって」
「すごい変わりようだし。昨日までと比べて」
 そう言った瞬間、声をあげて笑い出した。
「あはははは。いつも強引なのに、先輩」
 いや、確かにそうだけどさ。
 そうしないと葵ちゃんとできないからな。
「もう大丈夫ですよ。先輩。ちょっと大丈夫じゃないかもしれないですけど」
「どっちだよ」
「まだ、恥ずかしいですけど。先輩に」
「俺に?」
 葵ちゃんが言葉を詰まらせる。
 俺もじっと次の言葉を待った。
 そして出てきた言葉はこれだった。
「もっと愛されて、それで。もっと女の子にしてもらいたいです」
「お、おぅ」
「先輩に、えっち、されて。もっと幸せになりたいです」
 あまりにも強烈な言葉。
 俺は思わず抱きしめて、早速行為を始めてしまった。


 興奮しすぎて、激しすぎたエッチの中でひとつだけ。
 なんとなくひとつの言葉が頭のまん中に残っていた。
「先輩。先輩。もらって、もらってください、私を」
 その言葉が何を意味するのか。
 少し考えるのが怖かったりもするけれど。
 不思議と嫌ではない。
 これってなんだろうな。
 結局、葵ちゃんが帰った後はその言葉を反すうする羽目になっていたけれど。
「でも、いつでももらってやるよ、って言っちまったんだよなぁ」
 参ったよなぁなんて考えながら、どうしても頬が緩んでしまう俺がいたわけだ。

〜ぽすとすくりぷと〜

 えっちはないけど、雰囲気がエッチなお話です(笑)。

 どうも、ボクはこの「ベッドでのふれあい」が大好きなようです(笑)。
 葵ちゃん以外にも数多くしてまして(笑)<気づいたら
 まぁ、なんというか、そういう雰囲気を楽しんでくれたら幸い。
 ボクは大層な話を書けるようなアレではないけど、
 こういう話で楽しんで貰いたいなぁというのが目標なんで(笑)。

 では、心地よい時間があなたに届いたことを祈って、後書きはシマイ。



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