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 6月のある日の放課後。

 私達はいつものように練習をしていました。

「…ほらほら、先輩! もう少しですよ!」
「はぁっ、はぁっ…まだまだぁっ!!」

 先輩は息を切らせながらサンドバッグに突きや蹴りを叩き込んでいる。
少し前に比べればだいぶ上達はしたけど、やはりまだ無駄な力がかかっているせいか
余計な体力を消耗しているようだ。

「頑張って、先輩! ……あれ?」

 頬に当たる冷たいものを感じて、私は空を見上げた。
先輩も気づいたのか、手を止めて同じように見上げている。

「…やばっ、雨だ! 早いとこ隠れるぞ、葵ちゃん!」


< 明日はきっと♪ >


 急いでサンドバッグを境内の下にしまい、私達も神社の軒下に入った。
同じくらいのタイミングで、雨はさらに勢いを増して激しく降り始めた。

「…やばぁ…傘なんて持ってきてねぇぞ」
「私は持ってきてますよ。やっぱり梅雨ですからね」
「助かった…こんな雨の中濡れて帰るなんて洒落にもならねぇしな」
「そうですね…ふふっ………くしゅんっ!」
「大丈夫か? …よく見たらお互いもうずぶ濡れだな」

 言われてみると、先輩も私もびっしょり濡れてしまっている。
慌ててサンドバッグをしまっている間に濡れたんだろう。あんな短い時間だったのに。

「荷物は濡れてないみたいだし…とりあえず着替えるか」
「えっ!? でも…」
「葵ちゃんは神社の中で着替えて来な。この際仕方ないだろ」
「あ、そ、そうですねっ。はっ、はいっ!!」
「何想像したんだぁ? 葵ちゃんって結構えっちなんだな」
「もぉっ! からかわないでください!!」
「ごめんごめん。じゃ、入った入った。大丈夫だよ、のぞいたりはしないから」
「…先輩こそえっちじゃないですか…もぉ…」

 そう言いながら私は神社の中に入っていった。
薄暗いし、ちょっと罰当たりな気もするけど仕方がないか。
…くしゅんっ!! …いけない、早く着替えないと。
私は雨で重くなった体操服を脱ぎ、タオルで体を拭いていく。
下着がちょっと濡れちゃってるのはこの際ガマンするしか…。
そして手早く制服を着て、私は表に出た。

 先輩も既に着替え終わって境内に腰掛けていた。
その後ろでは、相変わらず雨が激しく降っている。
私も先輩の隣に腰を下ろした。

「止みませんね、雨」
「ああ、そうだな。残念だな、せっかくの練習の最中に」
「ええ、そうですね。でも…」
…先輩と2人で雨を眺めるのも悪くないかなぁなんて。
しばらくの間、私達はぼーっと雨を眺めていた。

「…くしゅんっ!!」
「うーん、どうやらホントに風邪引いちゃったのかなぁ…寒くないか?」
「…ちょっとだけ寒いかも知れません…」
「そっか。それじゃ…あまりにもベタだけど」
そういって先輩は私の後ろに回ると、後ろから私を抱きしめてきた。
「ホント、お約束ですね、そういうの…でも、あったかいです」
私も先輩に体を預けていった。

 雨は未だに止まず、それどころかさらに勢いを増しているようにも見える。
だけど私は妙に楽しかった。多分それは…先輩と一緒にいるからだろうけど。

「…派手に降るなぁ」
「でもですね、先輩? この雨が止めば、きっと夏がやってくるんですよ」
「うーん、確かにそうかもな…葵ちゃんは夏って好き?」
「はい!大好きです! なんだか海も山も、草花も空気も、いろんなものが
 輝いて見えませんか? 私、そういうのって大好きです!」
「葵ちゃんらしいや。それに、体を動かすのにもちょうどいいしな」
「まぁ、それもありますけど…えへへっ」
「ってーことはさ、泳ぐのとかも好きそうだね」
「そうですね。特に海で泳ぐのって気持ちよくないですか?
 なんか自分も自然の一部になれるような感じがして」
「へぇ…そういうもんかなぁ」
「そうですよ! じゃあ先輩、今度確かめに行きませんか?」
「…それってデートの誘いって事かな? 嬉しいな、葵ちゃんから誘ってくれるなんて」
「あっ…そ、そうですね…先輩と一緒だともっと好きになれそうですし」
「葵ちゃんの水着姿か…楽しみだなぁ」
「もう…先輩ったらそんなのばっかり…」

 …気がつけば辺りはすっかり暗くなっていた。
時間はそんなに遅いわけじゃないけど、まだ降り続いてる雨のせいだ。

「そろそろ帰ろっか、葵ちゃん」
「はい、そうですね。これ以上待ってても止みそうにないですしね」

 私の傘に2人で入って歩き出した。
余り大きな傘じゃなかったのと、私が何度言っても先輩が私の方にばっかり傘を
向けてくるので、先輩の反対側の肩はすっかり濡れてしまっていたけど。

「うーん…明日は晴れるかなぁ」
「大丈夫ですよ、明日はきっと晴れますよ」
「すごい自信だなぁ、葵ちゃん」
「雨も悪くないですけど、やっぱり晴れの方がいいですよね。 
 それに…先輩がいてくれるんなら、雨雲なんかどっかに飛ばしちゃいます♪
 だから一緒にいてくださいね、先輩!」


< 完 >





(後書き)
 …葵ちゃんだったら崩拳一発で吹っ飛ばしちゃうか?(核爆)。

 つーわけでひろりんちゃんへ、
「葵ちゃん応援ページ」60000ヒット記念です〜(^_^)
#ちょっと遅れたけどごめんね(笑)。

 ま、今回はSSっつーかもう単純にほのぼのらぶらぶ〜を追求してます(笑)。
ちょうど梅雨時期ですしね。というわりに雨降ってませんが(^_^;;)

 煩悩全開でもう書いてて楽しいです(笑)1時間で構想から全ていけたし(^_^)

 …で、このあと海に行って、「長い〜」に続くとか(嘘爆)
やっぱりギャグからぶ〜なものしか書けなくなってるかも私(大笑)


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