SSのお部屋に戻る   トップのページに戻る


柱     〜序章 予感〜

長瀬祐介編

あの忌々しい事件から3ヶ月がすぎた…
僕はあれからずっと瑞穂ちゃんを支えつづけている。
そして、僕自身支えてもらっている…
太田さんはあいかわらずべットの上寝たままだ…
沙織ちゃんはすべてを忘れ、バレーの大会に向けてがんばっている。
瑠璃子さんは…

彼女は消化器で頭を殴られた月島さんの病室で意識を失っていたらしい…
お兄さんの上で…

彼女は今も月島さんと同じ病室で寝たままだ。

由紀さんと美和子さんの二人はあの時の記憶がなかったらしく、普通に暮らしている。

あれから3ヶ月たった今…
太田さんに回復のきざしは見えないが、瑞穂ちゃんも少しづつ笑顔をとりもどしてきている。

しかし…

ここ最近いやな予感がする…
なにも起きなければ良いけど…










柏木耕一編

柳川が死に、俺も鬼のの力が制御できるようになった今、心配することはなにもなくなった…

しかし…
柏木家の中であの戦いで唯一帰ってこれなかった人がいる…


楓ちゃん…


楓ちゃんは…

あの時…鬼の力を十分にコントロールできなかった俺をかばって…


俺はまた彼女を守れなかった…


あれから8ヶ月…
一人欠けた柏木家の食卓も、少しずつ明るくなってきた。

俺は今、彼女たちの家にいる。










藤田浩之編

坂下と戦ったあの日から、俺と葵ちゃんはずっと鍛練してきた。
たまに来てくれる綾香が葵ちゃんの相手をしてくれたりして、葵ちゃんはすくすく強くなっていった。

ん?俺?

……はっはっはっはっ…聞かないでくれ…

いや、葵ちゃんの話ではかなりのスピードで強くなってるらしいのだが
葵ちゃんと組み手始めるとすぐやられるし…

綾香も俺はそうとうのスピードで腕を上げていると言っていたが
葵ちゃんもかなりのスピードで強くなっているため、どうにも差が縮まないらしい。

そして秋…

ついにエクストリームへ俺と葵ちゃんはでた。

俺はともかく葵ちゃんの方は立ちふさがる強敵を次々倒して行き
ついに決勝戦まで駒を進めた。当然相手は綾香だ。

そこで葵ちゃんと綾香は壮絶な戦いをくりひろげたのだが
あと一歩のところで負けてしまった。

が、その時葵ちゃんは笑顔だったな…
悔いがない戦いだったんだろう。

と、いうわけで葵ちゃんはみごとエクストリーム初出場で準優勝を飾るったわけだ。


…俺か?俺は…

予戦は通過したもののみごと1回戦で撃破されてしまった…

まあ、半年前までド素人だった俺がこの半年間で予戦通過できるまで強くなれたのはすごい事だ!

…と、葵ちゃんは言うけどね。
まあ、たしかにそうかもな。

それと、次ぎの大会から坂下がエクストリームに参戦することになった。
んなもんだから葵ちゃんはかなりはりきっている。
当然俺もな!!


そんなある日…




















1つの横断歩道がある…

信号が青のかわる…

人々が同時に動き出す…

そこである三人の男たちがすれ違う


ピシィ!!

「!!」「!?」「ッ!!」


(くっ…なんだ?今のピリピリした感じ…まるで…)
(うっ…このベタベタした感じは…)
(なんだ…このモヤモヤ感は…)


一瞬足を止めた三人だが、またすぐに歩き出す…

そして次ぎの日へ…




















授業…退屈だが平穏な日々が続く。
しかし僕はそれが不満ではなくなった。

そしてなにも退屈なことばかりじゃない…

今の僕には瑞穂ちゃんがいる。
だから僕はこの生活に満足している。
今の僕と瑞穂ちゃんは同じクラスだ。
瑞穂ちゃんあいかわらず生徒会の役員、しかも生徒会長をしている。

が、しかし、瑞穂ちゃん一人では正直辛い…

月島さんがつとめ、太田さんがなる予定だったのだから…

だから僕はよく手伝いに来ている。

「いつもすみません、祐介さん…本当は役員でもないのに…」
「気にしなくていいよ。僕がでくることがあったらなんでも言っね」
「祐介さん…ありがとうございます…」

瑞穂ちゃんがぺコッとおじぎする。その顔は笑顔だ。
あれから1年…瑞穂ちゃんはよく笑うようになった。
彼女の傷も…やっと癒えてきたみたいだ…

「フゥ、今日の分はこれで終わりですね…祐介さん、帰りましょうか?」
「うん、そうだね」



「祐介さん、今日もありがとうございます」
「ははは…いちいちお礼言ってたらきりないよ。僕も好きでやってるんだから」
「でも…手伝ってもらったのは事実ですから…」

あいかわらず神経質というか真面目というか…ま、そこが瑞穂ちゃんのいい所でもあるんだけどね。

「そういえば…」
「? どうしたんだい?」
「私、昨日香奈子ちゃんみたいな人みたんですよ」
「えっ!?もしかして意識が!?」
「いえ、私もそう思って病院へいったらやっぱり病室で寝てるって言われて…」
「そっか…」

太田さんが…また元気な姿にもどれば瑞穂ちゃんは完全に笑顔をとりもどすんだろうけど…

「あれから3ヶ月ですか…」
「うん…」

………………

「瑞穂ちゃん?大丈夫かい?」
「…はい。平気です…今の私には香奈子ちゃんと同じくらい…大切な人が目の前にいますから…」
「瑞穂ちゃん…ありがとう…」

ちょっとまずい話になったから心配だったけど、彼女は笑顔だ(ちょっとほほが赤くて下にうつむいているが)
しかもうれしいことを言ってくれる。

「そうだ!明日香奈子ちゃんの所に行くんですけど、いっしょにいきませんか?」
「えっ、病院に行くのかい?」

そうだね…太田さんの様子も見たいし…

「よし、行こうか。」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」

瑞穂ちゃんはうれしそうに返事をしてくれた。たぶん大丈夫だとは思うけど…
瑞穂ちゃんをなるべく一人にしたくないからね…

「あ、私こっちですから…」
「そっか…じゃ、また明日…ね」
「はい…さよなら、祐介さん」



瑞穂ちゃんは行った。
一人になった僕は少し考え事をしていた…

僕の頭の中に瑞穂ちゃんが言った言葉がよぎる。



「私、香奈子ちゃんみたいな人見たんですよ」



(今日…太田さんみたいな人を見た…?)



ピシィ!!



(まさか…ね…)










「ふう〜今日も疲れたなぁ〜」

俺は今、鶴来屋で働いている。

「よし、今日の分はこれで終わりっと!さ、千鶴さんの所でも行こうかな」

うむ、そういうわけで千鶴さんのいる社長室にGo!!

コン、コン、

「失礼します」

そう俺が言うと…

「どうぞ」

ガチャ

俺は社長室の中に入った。

「千鶴さん、今日の仕事終わらせてきましてよ」
「ごくろうさまです」

千鶴さんがニコッと笑う。

「それで…千鶴さんのほうは?」
「ええ、私ももう帰れますよ」
「それじゃ、帰りましょうか?」
「はい」

俺と千鶴さんは鶴来屋をでた。



「耕一さん…最近、妹たちの様子はどうですか?」
「ん…梓も初音ちゃんも元気ですよ。あいかわらずにぎやかですしね」
「そうですか…」

千鶴さんの妹…本当はもう一人いるはずなのに、その人がいない…
俺たちはそのことにひどい違和感をかんじている…

あたりまだ。彼女たちはずっといっしょに暮らしていたのだから…

そして俺は…

「明日…なんの日か…わかりますよね…?」
「…当然ですよ…絶対…忘れちゃいけない日ですから…」
「…はい…」

あれから8ヶ月がたとうとしている…あの事件から…

あの事件が終わったあと、俺はすぐ大学をやめてこっちに来た。
理由は当然彼女たちのそばにいてやるためだ。
あの日から俺はあの暖かい食卓がもどってくるように全力で努力してきた。
完全にもとの形にもどすのは無理でも、みんなの笑顔が少しでももどるよう…

そのかいあって、今の柏木家は少しずつ暖かさをとりもどしてきている。

「それより千鶴さん」
「はい?」
「梓と初音ちゃんを心配するのも大切です…でも、一番休まなくてはいけないのは千鶴さんなんですから
 あんまり無理しないで…」
「…はい…ありがとうございます…」

俺と千鶴さんは無言で歩きつづける…
いくら最近笑顔をとりもどしつつあると言っても、明日があの日だからな…



ピシィ!!

「ッ!?」

突然、頭の中になにかが走る。

「! どうしました!?」
「い、いや…大丈夫、なんともないですよ。ただちょっと頭痛がしただけで…」
「仕事…減らしましょうか?」

千鶴さんが不安そうな顔で聞いてくる。

「本当に大丈夫ですって。別に仕事のせいじゃないでしょうし」

俺がそう言うと千鶴さんはホッとため息をついた。

「よかった…耕一さんになにかあったら私…」
「千鶴さん…」

スッ

俺は千鶴さんのことをソッと抱きしめた。

「…!」



「…ありがとう」



「…はい」



俺と千鶴さんはしばらくそのまま動かなかった。



しかし…
あの頭の中に電流が流れるような感じはなんだったんだろうか…?
なにか前にも感じたことがあったような…
まあ、いいさ。

さて、俺も明日に備えなきゃな…

そう…明日は…



楓ちゃんの…命日だ…




















「はぁぁぁぁぁ!!!」

ズバン!!

俺のパンチがサンドバックをゆらす。

「そこまでです!」

と、それと同時に葵ちゃんの声がかけられる。

「フィ〜終わった終わった」
「すごいですね…先輩、もう私に追いついてしまわれたんじゃないですか?」
「いやいや、さすがにそこまでは…」
「そんなことないですよ。先輩は本当に上達するのが速いんですから」

葵ちゃんがまるで自分のことを誇るように言う。
まあたしかに自分でも俺がここまで強くなれるとわ思わなかったよ。
いちおう葵ちゃんの組み手もできるようになったしな。

「たぶん、前の私だったら今の先輩に勝てるかどうか…」
「そーか?ま、どちらにせよ今の葵ちゃんにはまだ勝てないぜ?」
「わかりませんよ?そんなこと」
「えっ?」
「なにしろ先輩はあの短い期間でエクストリーム予選通過という恐ろしい記録を持ってますからね…
 私もうかうかしてると秋までに抜かされちゃうかも…」

そう、俺はエクストリーム予選を通過している。我ながらよく行けたと思うよ。

「まあ、あれはまぐれもあったからな」

そう、今言ったとうりまぐれあたりがあったのも事実だ。が…

「いいえ、運も実力の内ですよ!!」

と、葵ちゃんは言う。

「それに…しってます?」
「ん?」
「戦いにまぐれはないんですよ」
「?」

どういうことだ?現に試合の時は俺が偶然出したパンチが当たったりして決ってたぞ?

「わかりませんか?それなら、私が坂下先輩と戦った時の最後を思い出してください」

あの戦いの最後?

「そりゃ、葵ちゃんが崩拳で…」
「その崩拳が出た理由…お話しましたよね?」

ん…理由?………あ!

「そうですよ。あれもまぐれなんです。でも、先輩は私があの技を鍛練していたおかげと言いました」

と、いうことは…

「そうですよ。まぐれなんてないんです。まぐれででた拳は、その拳に自分のすべてをこめて鍛練していた証です」
「…そっか」

さすが…葵ちゃんが言うと説得力がある。

「あと…もう一つの理由もあったんですけど…」
「!…そう…だったな…」




「じゃ、俺が勝てたのは葵ちゃんのおかげだな!」
「え!?」
「そうだな!うん!全部葵ちゃんのおかげだ!」
「そ、そんな…さっきはなしたとうり、それは先輩の努力が…あ」

ポス

俺は葵ちゃんの頭の上に手を乗せ、なでなでしながら話す。

「でもな…その努力をさせてくれたのは葵ちゃんだ…ずっと俺を鍛えてきてくれたのは他の誰でもない、葵ちゃんなんだ!」
「せ…せんぱい…」

葵ちゃんのほほが少し赤くなる。

「それにな…もう一つの理由も葵ちゃんといっしょだぜ…」
「えっ!?」
「わかるよな…?」

コクン

今度は顔を真っ赤にしながら葵ちゃんがうなずく。

「よし、だったらそろそろ行こうぜ!いつまでもここにいると日が暮れちまうからな」
「は…はい!」

そういうわけで神社をあとにする。

「ッ!!」

と、突然葵ちゃんが頭をおさえる。

「どうした!?大丈夫か!!」
「いえ、心配しなくても大丈夫です。ちょっと最近頭がピリピリするときがあるんです」
「大丈夫かよ?葵ちゃんは格闘家なんだから体大事にしないと…」
「クスッ、大丈夫ですよ。そんな大げさなものじゃないですし」

うーん…まあ、見たところ葵ちゃんも無理してなさそうだしな…大丈夫だろ。

「あ、先輩。もうお別れですね」
「んっ…おお、そうだな…じゃ…また明日な…」
「はい!先輩!!」





















それぞれが別れた。
みな、明日になればまたあえる。

そう思っていた。

そしてこの先も
痕を癒すものは癒し続け
痕を抱えるものは抱え続け
充実した日々を送る者はその生活を維持し続けていける。

そう思っていた。

しかし…
なにかが壊れ始めていた。

平穏をとりもどした日常が変わってしまう…

そう…

狂気というものの前に…




















僕はいつもどうり学校に登校している途中だ。

「………」

しかし…
僕の頭の中でなにか引っかかるものがあった。

(私、昨日香奈子ちゃんみたいな人をみたんですよ)

「………」

ブンブン

僕は頭を振る。

(そんなことあるわけないだろ!もう…全部終わったんだから…)

そう、もう終わったんだよ…あの悪夢は…


その時…

「!?」

僕のむこうに見覚えのある後姿がうつる。

スッ

その人はすぐに僕の視界から消えた。

(な…そんなバカな!!)

僕は夢中でその人を追いかけていた。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」

しかし、その人はもはやどこにもいなかった…

(気のせいか…?それとも…)

僕も…瑞穂ちゃんと同じ太田さんに似てる人を見たのか?
…これは偶然か?それとも…

(なにか…なにかが…)

僕の心の中で、なにかが崩れ落ちるのを感じる…
それは崩れてはいけないもののはずだった…

(今日の放課後…すべてわかる…)










俺は今、一人であの場所にきている。
朝めしはいらないというメモをおいてきたので、梓も初音ちゃんも学校に行っただろう…

ここは…

そう…8ヶ月前のあの日…
俺と柳川が戦った場所だ。

そして…


「楓ちゃん…」


400年に恋をし、愛をちかった人…


ずっと…俺を待ち続けてくれた人…


約束を…


また…


守れなかった人…


ポタッ…ポタッ…

いつのまにか自分が涙を落としていることに気づく。

「俺が…もっとしっかりしていれば…」

いや…もう過去は振り返らないと決めた。
楓ちゃんはあの時…俺に幸せになってくれと言った…


そして…


また会おうとも…


恐らく何百年たとうとも彼女は待っていてくれるだろう…




グイ

俺は涙をぬぐう。

「今度は…必ず…約束を守る…」

俺はそう言ってから、水門をあとにした。










「浩之ちゃーん!!」

うー、またあかりのやつが外で叫んでやがる…
だからその浩之ちゃんってのは…

だめだな…あれはいっしょうなおりそうにねぇ…

「浩之ちゃーん!!起きてよー!!」

「えーいうるさい!!今行くから待ってろ!!」

ドタドタドタ

俺は3分でみじたくをととのえると、外に出た。

「おはよう。浩之ちゃん」

「おっすあかり!てな〜」

「?」

あかりはきょとんとした顔をしている。

「たのむから外で叫ばないでくれ!この辺の笑い者になっちまう!!」

「で、でも、こうしないと浩之ちゃん起きないし…」

「じゃあこの際だから起こしに来てくれ!そっちのほうがまだましだ!!」

「え!?で…でも…」

あかりは困った顔をしている。

「でももなにもあるか!いくぞ!」

「あ、待って!浩之ちゃん!!」




しばらく、俺はあかりと話していた。

「うーん」

「どうした?」

「ちょっと最近ぐあいが悪いの…」

「? 風邪でもひいたか?」

「ううん、そうじゃなくて…なんて言うかな…なんかこう、頭がピリピリするっていうか…」

「? なんだそりゃ?」

「私にもわからなくて…」

「疲れてるんじゃねーか?」

「そうかも…」

まあ、あかりには普段から苦労かけてるからな…
ちょっと気をつけるか…

ん?待てよ…
今あかりが言った言葉、どっかで聞いたような…

(ちょっと、最近頭がピリピリする時があるんです)

そうだ!葵ちゃんだ!!
…しかしこれはどういうことだ?葵ちゃんも疲れがたまってるのか?

だが…そうは見えなかったが…


ま、いいか。
今日葵ちゃんに聞いてみよう。












そして、悪夢が始まる…



あとがき

みなさん、はじめまして。瑞穂と葵に命を捧げたRyoです。

今回これがはじめてだすSSとなるわけですがどうでしょう?

感想があればSS掲示板で言っていただけるとうれしいです。

しかし…難しいものだ…SSとは…

続きはたぶん今年の夏までにはでます。たぶんだけど…(爆死)

さあ!これからも葵ちゃんと瑞穂ちゃんを幸せにするため、がんばるぞ!!

んではこれからもよろしくお願いします。


SSのお部屋に戻る   トップのページに戻る