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春のうららの葵ちゃん   はぐ☆マルチ

since : 25/May/1998


「なんだか毎日こうしていたのが、何年も前みたいに感じちゃいます…」
 空を見つめたまま、葵がポツリ。
 ここはいつもの神社。
 練習も終わって、境内の脇で並んでゴロ〜ンとしているわけだが…

「………ぷっ! くくっ」
「…?」
 なにがおかしいのか、急にふきだした浩之。
「ど、どうしたんですか? 先輩」
 葵は、浩之の横顔を不思議そうに見つめる。
「いや、確かに前は毎日のようにやってたよな。こう、ゴロンてさ」

 こうやって、木陰でしばらく寝転ること。
 それがかつては、二人の練習後の日課になっていた。
 それが…

「あの日からだもんなぁ、くくっ」
「えっ? あの日って? なにがなんですか?」
 再び意味ありげに、含み笑う浩之を葵は怪訝に見つめている。

「二人で寝転がってることさ」
「それが、あの日ですか? あの日って…?」
「俺が葵ちゃんに告白した日♪」
 いかにも、含み有りだな。こいつは…
「………」
 数秒間の沈黙。そして…

 ボンッ!!!
 葵の色白の肌が「指の先までまっかっか」である。
 はい、茹でダコの出来上がり。

「せせせせせせせ、せん、せせせせんぱいっ!」

 葵、どもるどもる。
 その醜態は、驚きやら動転なんてものではない。
 まさに、目がぐるぐる回っちゃっている状態なのだ。

 結局、葵はいつまで経っても、純情というか、正直者というか…

「くくっ」
 そういう葵を見て楽しんでいる浩之も浩之だが。

「ももも、もうっ! せ、先輩のバカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)
バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)
バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)バカ(ポク)」
「あはははは、いたい、いたいって、葵ちゃん」
 ぽくぽく葵ちゃんの本領発揮。
 痛がってみせる浩之もその表情はにこやかだ。
 ようするに甘々100%、二人だけの世界。

「バカバカ(ポクポク)」
 相変わらず、ぽくぽくを続ける葵。
「バカバカバカ(ポクポクポク)バカァ〜ッ(ボクッ)」
 お、パンチがみぞおちにモロに入ったな。

「うぐっ〜」
 地面をのたうち回る浩之。さながら陸あげされたトラフグ。
 そして、葵は…

 ブンブンブン
 スカスカスカ

 浩之がいた場所にポクポク…いや、この場合はブンブンといったほうがいいか…を続けていた。
 浩之のもがきなど、これっぽっちも気付くはずもなし。

「ぅぐぐぅーーーっ」
「え? え? あ、あ、あ、あぁ!!!」
 葵が事態に気が付いたのは浩之がうめき声を発せられた頃のことだった。

「いでぇ〜っ」
「ご、ごごめんなさぁいっ! 大丈夫ですかぁ! 先輩ぃ!?」
 もう、半泣き顔で浩之の横へしゃがみ込む。

「…あ、葵ちゃん…」
「は、はいぃーっ!」
 完全に声が裏返っている。

「俺はもうダメだ…」
「え…えーっっっ」
 サーと血の気が引いていく葵。
 その表情は、もう完全に泣き顔体勢。

「さ、最後に…」
「せ、せんぱぁい…ぐずっ」
「最後に…キスを…」
「えっぐ…いや、いやです、先輩ぃ〜」
 葵は完全に泣き始めてしまった。
 あぁ〜あ、泣かしてもうたぞ、浩之。

「…って、おいおい、葵ちゃん」
 尋常な様子でない葵ちゃんを見て、さすがの浩之も洒落ですまなくなった
と感じてきたようで。

「じょ、冗談だよ、冗談。だれが死ぬかよ、葵ちゃんを置いて」
「えっぐ…え? せ、先輩?」
 涙をぼろぼろ流しながらきょとんとした顔をする葵。

「まったく、こんなの本気にするなよな」
「…あ、はい。すみません」
 これまた本気でしょんぼりしてしまう葵に、浩之には呵責の念が。

「い、いや、俺の冗談が悪かったんだし」
「いえ、私が」
「…」
「…」
 ・・・あぁあ・・・
 もう、勝手にやっとくれ。



                     春のうららの葵ちゃん END



作者あとがき♪

あ、あほらしいものを書いてしまった(笑)
まぁ、昔から作者ツッコミ好きだし(笑)
感想……来るのがこわい(^_^;)

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