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   葵ちゃん誤解する!
                             K3

東鳩を愛する人達へ



書いた日:990822
登場人物:松原葵、神岸あかり、藤田浩之
背景知識:葵ちゃんエンディングを迎えた後の話。



「あ、きれい…」
私が、授業中に何の気なしに窓のそとを見ると、東の空に虹がかかっていました。
「なにか、いいこと、あるといいな。」
そんな独り言をつぶやく私の胸に、そういう、いいことの象徴のように、一人の人の顔 が浮かんできました。
「そういえば、先輩、今の時間、体育の時間のはず…」
虹のしたには、グランドに、先輩達のクラスの男子生徒がサッカーをしているのが見え た。女子は、バレーをしているみたいです。先輩の姿を確認して、ちょっぴり幸せな気 分になり、気持ちを授業に戻しました。

「…あれ…?」
すこし時間がたったころ、また外を見ると、バレーコートの方に生徒が集まっているの が見えました。そのなかから、神岸先輩を背負った先輩が出て来るのが見えました。
「せ、先輩…?!」
よくわからないけど、神岸先輩がどうかしたみたい。私は、胸がすこしぎゅっとなった けど、このときは、
「神岸先輩…大丈夫かな…?」
神岸先輩のことを心配してました。いつのまにか、虹はもう見えませんでした。

一階の廊下を抜け、保健室の前に来た私に、先輩の声が聞こえる。
「…心配するなって…俺に任せろ…」
「…うん、ありがと、浩之ちゃん…」
神岸先輩を気遣う声は、私の胸にまた、感情を膨らませました。ドアを静かにすこし開 け、なかの先輩達を探すと、
―――ドキッ―――
私の胸に衝撃が走りぬけ、ベットに寝ている神岸先輩の顔に先輩の顔が近づく。
『…そんな…イヤ…』
顔をそむけた私に、聞こえる声は、
「ありがとう、浩之ちゃん。」
「気にすんな、このくらい。」
このくらい…それは私にとって、このくらいじゃない。それは大事なこと。
『先輩が……神岸先輩と……キスした………やっぱり先輩は…私のことより……神岸先 輩のことが…』
私の気持ちはあふれる涙になった。
『…そうだよね、神岸先輩の方が…グシュッ…私よりかわいいし…女の子らしいし…料 理も上手だし…グシュッ…そうだよね…』
私の胸の中に、もう夢は終わりなんだ、という気持ちが広がって、さっき見た虹のよう に、きれいものはすぐに壊れてなくなってしまう。そんな思いが、私の中に広がってい く。

その日、私は、先輩とは会いませんでした。練習をサボってでも、先輩と今、会いたく なかった…ううん、会えなかった…

―――ガラッ―――
私のいる教室のドアが開き、私の今一番会いたい人で、一番会いたくない人がそこにい た。
「せ、先輩!」
私に気付き、先輩は心配そうな顔をしながら、
「お、葵ちゃん、からだ大丈夫か?」
「え、あ、あの~」
「昨日練習休んだだろ?体の具合が悪かったんじゃねえのか?」
「え、あの…違います。」
「それじゃあ、なんか用事があったんだ。でも、そういう事言ってくんねえと、心配に なるだろ?」
「あ、すいません。」
先輩は微笑みながら、
「ま、そんな誤るほどのことじゃないけどな。今日は練習するんだろ?」
先輩の問いに私は慌てて、
「え、その…」
また心配そうな顔をして、先輩は、
「なんか今日の葵ちゃんは歯切れが悪いなあ?なんかあったのか?」
「あの、あとで…はなします…」
「ん、そうか、分かった。じゃ、昼にまた来るわ。」
「あ、はい…」
私は一つの決心をしていました。先輩との楽しい日々を壊してでも、前に進もうと…
「先輩にもらったもの…勇気…『私は強い』って気持ち…現実を受け止める心…」

中庭にでて、ベンチにふたりで、座る。私は、お弁当を食べる前にといって、
「先輩、聞きたいことがあるんです!」
「なんだよ、葵ちゃん。突然真剣な目をして…」
「ホントの気持ちで答えてください!」
「あ、ああ。分かった。本気で答えるよ。で、なんだ?」
「はい…その…私と神岸先輩…どっちが本当…なんですか…」
「本当?どっちが本気かってことか?」
「はい!」
「俺が本気で、好きなのは、葵ちゃんだけだよ。」
「でも!…でも、昨日…」
「昨日?あかりが怪我して保健室に連れてったことか?」
な~んだそのことっと言った感じで先輩が、きいてきて、
「その後、保健室で、私、見ちゃったんです。先輩が、神岸先輩に…」
「あ、あれ見てたのかよ…参ったなあ…」
「あれを見て…私…もうだめなんだって…だから…ホントのこと…言って下さい…」
涙を我慢する私に、
「え、なにがダメなんだ?あんなことくらい…」
先輩は腑に落ちないって感じで聞いてきました。私はあふれそうになる涙を我慢しなが ら、
「あんなことくらいじゃないです!私には…先輩が…」
最後まで、言えない。言ったら泣いちゃう。顔を下に向け涙をこらえていると、先輩は、
「なんかよくわかんねえんだけど…もしかして…なんか葵ちゃん誤解してる…?」
驚いて、顔を上げ、
「え、だって、あのとき先輩…神岸先輩と…キス…」
恥ずかしそうにしながら先輩は
「はぁ?キス?違う違う!あのときやってたのは…」


「浩之ちゃん、あのね、お願いがあるの。」
ベットに横たわるあかりが浩之にはとても弱々しく見えた。
「なんだよ、あかり。とりあえず言ってみろ。」
「うん。あのね、昔やってくれたおまじない…して欲しいの…」
「おまじない…?あっ!あれか…」
「ダメ…かな…?」
「…しゃあねえなあ…分かった。してやるよ。」
「まだ…覚えてる…?」
「…心配するなって…俺に任せろ…」
「…うん、ありがと、浩之ちゃん…」
そう言って、浩之はあかりの顔のちかくまでよると、人差し指を立てて、
「あかりの怪我が早く治りますように。神様、俺の元気をあかりに分けてやってくれ。」
そう言って、あかりの鼻に人差し指を当てた。
あかりからすこし離れた浩之に、
「ありがとう、浩之ちゃん。」
「気にすんな、このくらい…それにしても、こんな恥ずかしいことさせて、元気になん なかったら承知しねえぞ。」
「うん。すぐ元気になるよ。だって浩之ちゃんのおまじないだもん。」
「そうか…早く元気になれよ。」
「うん。」


「と、言うわけ。」
「そっ!、それじゃあ、全部私の誤解だったんですね!」
「そうみたいだな。でもしょうがねえよ。あのとき、かなり顔近づけてたのは事実だし。
俺も悪かったんだよな。ごめんな、葵ちゃん。」
「そんな、私が勝手に誤解しただけです。先輩のこと信じられなくて、ごめんなさい。」
頭を下げ謝る私の肩を抱き、
「葵ちゃん、虹が見えるぜ。」
「えっ、どこですか?」
顔を上げ、虹を探す私に、先輩は、自分の顔を近づかせ、
―――ぺろっ―――
「ここだよ。」
涙をなめてくれました。
「せ、先輩!」
「ごめん、ごめん。葵ちゃんの涙ってどんな味がするのかなって思ってさ。」
「もう……今度は、私に先輩の涙…くださいね。」
空にはいつのまにか本当の虹が見えていました。

終わり


スタッフルーム

浩之(以下・ひ):あのダメ人間はどうしたんだ?今回は俺は、あいつに、いろいろ言
    いたい事がある。
葵:あ、先輩、なんかこれを先輩に渡せって。
ひ:なんだこりゃ?『拝啓藤田浩之君、そして読者の皆さんこんにちは。K3です。実
    は今日はいろいろ事情があって、いけないので、かわりに、いいんちょに頼んで
    おきました。がんばってください。では、皆さん、またですぅ。』って、委員長
    が来るのか?
いいんちょ(以下・い):もう来とる。せやけど、ホンマ、恥ずかしい話やな、これ。
ひ:げっ、いいんちょう。台本読むなよ。
い:何やて…『虹が見えるよ…ここだよ』…あほやな、ホンマ。
ひ:俺だってあんなことやりたかったわけじゃねえよ。
い:ホンマかどうか。あとは、『神様、俺の元気をあかりに分けてやってくれ。』なんて
   爆笑もんや。
葵:そ、そんな、先輩は本気です。本気で、神岸先輩のこと心配だったからあんなこと
   できたんです。
い:あんなこと…やっぱり松原さんもおもっとんのや。あんな恥ずかしいことやってな。
葵:あ、その…そういう意味じゃなくて…
ひ:くそおお、いいだろ、別に。あのやろう、今度会ったら、ただじゃおかねえ。
葵:ところで、つぎのSSについて、保科先輩、なにかお聞きですか?
い:うちの誕生日近いもんやから、そろそろ書くいうとったわ。
葵:じゃあ、当分私のはお預けですか?
い:そうやろね。
ひ:お、この手紙続きがあるぞ、『追伸・葵ちゃんへ、必ず、いいんちょのより先にSS
    書くからね。』
葵:え、ホントですか!
い:なんやこれ…うちにいっとたのと逆や。
ひ:どっちがホントなんだ?もしかして、人気順か?
葵:あ、じゃ、感想メールください。私のがいいって書いて。
い:ずるいで、松原さん!うちのこと書きや!
ひ:とりあえず時間がないので、この辺までだな。
マルチ(以下・ま):遅れてすいませ〜ん。
い:もう終わりや、マルチ…

続くのでしょうか?

mailto:k3home@geocities.co.jp

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