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♪ 踊りませんか? ♪


放課後。

俺達はいつものように、ゲームセンターに寄っている。
シューティングをやったり、UFOキャッチャーをやったりしていると、
ゲーセンの一角に人だかりが出来ているのを見つけた。

「…あれは?」
「あれは…最近流行の踊りゲーってやつだな」
「???」
「ほら、足下の上下左右の矢印があるだろ? で、画面上には音楽に合わせて
矢印が流れてくるから、それにあわせて足下のパネルを踏む…ってゲームなんだよ」
「へぇ…」
「俺は結構やってるんだけど…やってみる?」



<あかりの場合>

あかり「え? 私が?」
浩之「そう、お前が」
あかり「でも私こういうの苦手だし…それにやっぱり恥ずかしいよ〜」
浩之「なんとかなるって。ちゃんと一緒にやっててやるから」

 渋るあかりを強引に筐体の方へ連れていった。
とりあえず最初だし、簡単な曲を選択する。

あかり「ホントに無理だってば、浩之ちゃ〜ん」
浩之「…とか言ってる割にはそこまで嫌がってるようには見えないけどな」
あかり「えっ? …うーん、ホントはちょっとやってみたかったんだ。
    でも一人じゃ恥ずかしかったしね。浩之ちゃんいてくれて助かったよ」
浩之「ま、まぁな。あ、ほら、始まるぞ」

 1曲目がスタートする。余裕でステップ踏みながら隣を見てみると、
あかりは多少とまどいながらもちゃんと踊っている。
見るからに楽しそうなのが伝わってくる。

あかり「ふぅ…浩之ちゃん、どう? ちゃんと踊れてた?」
浩之「ああ。初めてにしては上手いんじゃないか」
あかり「へへー。才能あるのかな?」
浩之「…調子に乗るな!」
 ぽかっ!
あかり「ううっ…」

 そんな調子で2曲目スタート。さすがに難しくなってきたらしく、必死に矢印を追っている。
3曲目も同じような感じだ。やっぱり3曲目となるとミスを連発して、終わる頃には
ゲージも残ってなかった。

あかり「ふぅ…疲れたぁ。でも楽しかったね、浩之ちゃん」
浩之「最初は恥ずかしいとかいってたのにな…意外と図太いのな、あかり」
あかり「そ、それは…もう、浩之ちゃん、意地悪だよ」
浩之「冗談だよ冗談。でも楽しかったろ」
あかり「うん! またやろうねっ」

 …ダンサー1人誕生の瞬間であった。




<志保の場合>

志保「…ふっふっふっ〜」
浩之「何だよ気味わりいなぁ」
志保「いいわよ、受けてたとうじゃないの」
浩之「なんか凄い自信だなぁ…さては練習してやがるな」
志保「それは秘密ね〜。さ、空いたわよ、れっつだんしんぐ!」

 志保は俺から200円を受け取ると、慣れた手つきで400円を投入し、バーサスモードを選択した。
その後、フットパネルの上でコマンドを…っておい!!

浩之「おい志保! それってマニアックじゃねーか!?」
志保「そうよ。…もしかして浩之、踊れないの〜?」
 志保は嬉しそうに言い返してきた。くそぉ…こいつ勝ち誇ってやがる。
最初っからそのつもりだったんだな…さては既にみっちり練習してやがるな。
とはいえこうなったら引き下がるわけにはいかない。
浩之「ま、まさか…さぁ、始めるぞ!」
志保「じゃあ曲は私が選ぶわね〜」

 志保は当然のように選曲した…いきなりAMかよ…凄い自信だなぁ。
この曲くらいなら俺だって踊れるな。
 絶え間なく降ってくる矢印をなんとか見切りつつ必死で足を動かすした…。

 ゲージに余裕はないものの何とかクリア。一息入れつつ志保の方を見てみると…うげっ!!

浩之「うそ…SS…オールコンボかよ」
志保「どうしたの? これくらい簡単よぉ〜」

 得意げに笑う志保…くそぉ…憎らしいぜ…。

 2曲目に選んだのはゲタムー…これすらいとも簡単にオールコンボ。
そして3曲目…こう来たらやっぱり選ぶんだろなと思っていたら…。

志保「やっぱり最後はパラマックスよね〜」

 …頼む勘弁してくれ。
心の声は志保には届いてくれなかった…。

 …その後、志保は当然のようにマニパラマックスオールコンボを達成したあと、
アナザーダブルを始めて、アナザーダブルパラマックスを踊り始めた。
ギャラリーの盛り上がりは最骨頂に達している…と思ったその時。

志保「やぁやぁどうもどうも…うわぁっ!!」

 …台の上から突然志保の姿が消えた。
どうやら見事に足を踏み外して台から落ちてしまったらしい。
痛がっている志保を後目に見事にゲームオーバー。
なんつーか、最後にきっちりかましてくれるところが志保らしい。
思いっきり笑ってる俺に向かって志保が詰め寄ってきた。

志保「なに笑ってるのよ! たまたま調子が悪かっただけよ!!」
浩之「…ああ、そうだな…あははははっ!!」
志保「いつまで笑ってんのよ!」
浩之「やっぱりお前、志保だよなぁ。そういうとこ好きだよ、うん」

 その後、すっかり機嫌を損ねた志保と一緒にヤックに向かった。




<いいんちょの場合>

智子「…なんや、こんなん簡単やないか。つまらん」
浩之「いいのか委員長、そんなこと言ってて」
智子「当たり前やん。こんなん誰だって出来るわ」
浩之「じゃあやってみようぜ」
智子「えっ? ………うん」

 俺はわざと委員長に200円を渡してゲームを始めさせた。
浩之「いいんちょ〜、もちろんハードやるよな?」
智子「…えっ? あ、いや、とりあえずノーマルでええやろ。藤田君にあわせてな」
 そんな会話をしてる間に、さりげなく↓X2…アナザーにしておく。
曲も委員長に選ばせて早速スタート。
予想通り、最初はメロウを選択した。

浩之「…あれ、どうしたんだ委員長? 足が動いてないぞぉ」
智子「え? あ、あら?」

 委員長は必死にパネルを踏んでいるが、見事に追いつかずミスを連発している。
思った通りの結果に必死に笑いをこらえる。
1曲目終了…結果は予想通りだった。

浩之「…見事に失敗してるよなぁ」
智子「う、うるさいっ! たまたま失敗しただけや」
 顔を真っ赤にして必死にいいわけをする。
浩之「はいはい、じゃ次ね」
 軽く聞き流しつつさっさと次の曲を選ぶ。

智子「くっ…なんやこれ…こんなん出来るわけないやん…」
 必死に矢印を追いかけつつ、こっちを見ては「もう勘弁して」と目で懇願してくる。
予想通りの展開だ。そんな委員長の様子を楽しみつつ、俺はステップを踏み続ける。

 …この調子で3曲目まで終わった。
委員長の結果は…見るまでもなかった。

浩之「どうだ委員長、結構難しいだろ…っておい委員長」
智子「………」

 委員長はじっと立ちつくしたまま動かない。
…ちょっといじめすぎたかなぁ…と思ったその瞬間。

智子「こんなんできるかぁ!!!」

 げしげしっ!!!

 …なんと委員長は筐体に蹴りを入れ始めた。

浩之「ちょっ、ちょっと、落ち着け委員長!」
智子「あんたもあんたや!! 人が困ってるのを見て楽しむなっ!!!」

 怒り狂う委員長を必死で抑えつつ、俺達はゲーセンを後にした…。

(注)良い子も悪い子も真似しないよーに。




<レミィの場合>

レミィ「OK!! やろっ、ヒロユキ!!」
浩之「おっし、やるか」
レミィ「…で、どうやるの?」
浩之「聞いてなかったのかよ…」

 俺は改めてレミィに説明した。
今度はうなずきながら聞いているが…ホントに大丈夫なんだろうか?

レミィ「ちゃんと分かってまーす。音楽に合わせて踊ればいいんだよね?」
浩之「ああ、そうだな。じゃあレミィ、曲を選んでくれ」
レミィ「All right! …ってどうやって選ぶの?」
浩之「………」

 曲の選び方を教えた後、レミィは楽しそうに曲を聴き比べつつボーイスを選んだ。
…まぁ最初にはちょうどいいくらいかなぁ。

レミィ「Yeah! Let’s dancing!!」
浩之「えらく楽しそうだなレミィ」
レミィ「ウン! 楽しいよ!!」

 曲がスタートし、俺はいつものように踊りだした。
隣を見てみると…なんとレミィは矢印を完全に無視して思いっきり踊っている。
後ろで見ていたギャラリーは驚きつつもレミィの踊りに注目している。
それどころか歓声をかけたり、手拍子したり、一緒に踊り出す連中までいる。
うーん…なんだかわかんないけどすごいぞ。

 1曲目が終わり、ギャラリーの拍手に答えつつレミィが話しかけてきた。

レミィ「楽しいねっ、ヒロユキ!!」
浩之「あ、ああ…」

 結局レミィはその調子で3曲目まで踊りきった。
俺はというと…周りの勢いに完全に圧倒されてしまった。
…途中で落ちたらきっと視線が痛いだろうな…と思いつつ必死で矢印を追っていた…。

レミィ「楽しかったね、ヒロユキ! またやろうねっ!」
浩之「………」

 どこか釈然としないものを感じつつ、俺達はゲーセンを後にした。




<葵ちゃんの場合>

葵「えっ? そ、そんな、私には無理ですよっ」
浩之「そんなことないって、葵ちゃん運動神経いいからできるって」
葵「でも私、格闘技以外は…」
浩之「葵ちゃん!!」
葵「は、はい!」
浩之「これだって立派に格闘技に関係あると思うぜ」
葵「そうなんですか?」
浩之「ほら、今踊ってる人を見ろ! あの華麗なフットワークを! 格闘技に通じるものが
   あるとは思わないか?」
葵「…確かにそうかもしれませんね…」
浩之「大丈夫!! 葵ちゃんは強い!!!」←何の関係があるんだ?
葵「…はい! 頑張りますっ!」

浩之「…じゃあまず簡単な曲から…」
葵「先輩…やっぱり自信ないです…」
浩之「うーん…そうだ、いつもの練習と同じ間隔でやったらいいんじゃない?」
葵「練習…ですか?」
浩之「そうそう、相手の攻撃をフットワークでかわして攻撃する、イメトレみたいな感じ」
葵「うーん…やってみます」

 そうやって曲がスタート。
葵ちゃんは矢印にあわせて一生懸命踊って…というよりまだまだ踏んでいるという感じだ。
俺も隣でゲームオーバーにならないように踊る。
さすがに余裕があるので、軽く回転なども入れながら踊ってみる。
葵ちゃんの方を見てみると、ちゃんと矢印にはついてきている。
やっぱり基本的な運動神経の違いというやつだろうか。

浩之「…ほら、もう少しでフィニッシュだ! 頑張れ葵ちゃん!」
葵「…はいっ!!!」
浩之「…3,2,1,フィニッシュ!」
葵「…はぁっっ!!!」

 ………ばきーーーーんっ!!!

浩之「…なんだ、この音は…」
葵「せんぱい…」
浩之「どうした、葵ちゃん?」
葵「あの…その…ちょっと…見てみてください」
浩之「へっ?? …うそだろ、おい…」

 葵ちゃんの足下を見てみると…なんと足下の矢印パネルを見事なまでに踏み抜いていた。
ついでに手の先を見てみると…見事に筐体にクリティカルヒットしていた。

葵「…練習のつもりでやってたら…つい…」
浩之「…さすが葵ちゃん…でも…」
葵「…えっ?」
浩之「…逃げるぞっ!!!」
葵「え?え?え???」

 …俺達は一目散に逃げ出した…。

(注)本物はこんなことくらいじゃ絶対に壊れたりしない…と思います(笑)。




<マルチの場合>

マルチ「えっ? あ、はい!」
浩之「…当然やったことはないよな」
マルチ「はいっ、初めてですー。でも頑張りますっ」

 …とはいってもなぁ…なんたってあのエアホッケーを見てるからな…。
とにかく楽しもう。踊れるかは二の次だな。
というわけで、とりあえずはメロウを選択して…。

マルチ「始まりますねー。どきどきしますー」

 そういって曲がスタートした。マルチの様子は…。

マルチ「あわっ、あわわっ、あわわわわっっ」

 …予想通りというかなんというか、見事なまでにタイミングを外している。
むしろここまで外せるとある意味すごいんではないかとさえ思える。
 1曲終了…マルチは…なんと0点。
でもマルチはとても楽しそうだ。

マルチ「ふぅ…楽しかったですねー」
浩之「…あ、ああ」

 2曲目にはザッツ…結果は予想通りだったけど、まぁマルチが楽しければ
それでいいかなぁとも思う。でも、ちょっとくらいはきちんと踏ませてやりたいよな。

マルチ「ふぅ…オーバーヒートしそうです〜」
浩之「うーん…マルチ、次はステップバトルな」
マルチ「えっ? なんですかそれ?」

 …とりあえず説明した。なんかよくわかってないような気もするけど。
3曲目スタート。俺はわざと1方向の矢印のみの簡単なステップを送り込む。
さすがにこれなら踏めるんじゃないかな?
 マルチの方からは予想通り、あまり多くは送られてこなかった。
それを簡単に踏みつつ、マルチの方を見てみると…。

マルチ「えいっ! えいっ! えぇ〜〜〜いっ!!!」

 一生懸命踏んでいるものの、なぜかどれ一つタイミングが合わず、やっぱり
ミスを連発している…さすがに言葉を失ってしまった…。

マルチ「ふぅ…疲れましたぁ…でも楽しかったですー」
浩之「……」
マルチ「また来ましょうね、浩之さん…浩之さん?」

 …いくらなんでももう少し運動能力改善してやってくれよ、長瀬さん…。




<琴音ちゃんの場合>

琴音「えっ…私にはできませんよ」
浩之「いいからいいから。ねっ」
琴音「体動かすのってあんまり得意じゃないし…」
浩之「大丈夫大丈夫。さぁさぁ」
 嫌がる琴音ちゃんをなかば強引に連れていった。

琴音「ホントにできませんって言ってるのに…」
浩之「すねた顔も可愛いよ、琴音ちゃん」
琴音「…そんな言葉に誤魔化されたりしませんからね」
浩之「うっ…」

 …やば、琴音ちゃんマジで怒ってるかも知れない。
ちょっとだけ後ろめたいものを感じつつも、俺はゲームを始めた。

 本人の言っていた通り、琴音ちゃんはあんまりこういうのが得意ではないようだ。
必死に両足をばたばたさせている。
 琴音ちゃんには悪いけど、やっぱりそんな様子は見てて可愛いと思う。

琴音「ふぅ…やっぱり無理ですよ…ひどいです藤田さん」
浩之「まぁまぁ。じゃあ次ね」

 …ここで俺はわざと難しい曲を選んだ。
琴音ちゃんは何も気づかずに後ろのバーにもたれながら息を切らしている。
 曲が始まると、たくさん降ってくる矢印の洪水に琴音ちゃんは呆然としている。

琴音「こんなの踊れませんよぉ…」
浩之「ほらほら、頑張らなきゃ」
琴音「…藤田さん」
浩之「どうした?」
琴音「…難しいって分かってて選んだんですね…ひどいです」
浩之「そ、そんなことないよ、あはははは〜」

 …やば、ばれたか。
仕方ない。終わったらちゃんと謝っておこう。
見てて楽しかったしね。後でケーキでも奢ってあげよう…とか考えていたら、

琴音「……藤田さん、危ないっ!!」

 踊るのをあきらめたのか、じっと立っていた琴音ちゃんがいきなり叫んだ。
何が危ないんだろう…と思ったその時。

 足首を誰かに掴まれるような感触。
まさか…と思った瞬間、俺は思いっきり倒れ込んでいた。

琴音「藤田さんが倒れるっていう予知が…」
浩之「………」

 …そう言った琴音ちゃんの顔は、なんだかとても楽しそうだった。




<芹香先輩の場合>

芹香「……」
浩之「え? 私運動はあんまり…か。まぁいいじゃないか。
   きちんと踊れなくっても体動かすのもたまには楽しいぜ、先輩」
芹香「……」こくん。

 …というわけで、早速踊り始める。
やっぱり簡単な曲からだろうな…ということでとりあえずメロウ。
 途中先輩の様子を伺ってみると…ほとんど動けてない。
たま〜にちょこんと足を動かしてみる程度だ。

浩之「どうしたの、先輩?」
芹香「……」
浩之「えっ? 矢印に目が追いつきませんって? うーん…そこまでとは…。
   それじゃあ仕方ないなぁ。まぁとりあえずあと2曲がんばろっか」
芹香「……」しゅん…。

 うーん…先輩落ち込んじゃったよ…やらなきゃよかったかなぁ…。

芹香「……」
浩之「えっ? 浩之さんのを見てるだけで楽しいですって?」
芹香「……」こくん。
浩之「ううっ、先輩…んじゃ頑張って踊るよ、俺」

 …というわけで2曲目はちょっと難しめなのを選択。1人でなんとか頑張ろう。
…やば、ミス出しちゃったよ…ゲージやばいじゃん。ここで踏ん張らないと…。

 こんな感じで2曲目を踊りきった。
失敗したなぁと思いつつ画面を見てみると…。

浩之「あれ? 2P側のランクがSSになってる…先輩?」
芹香「…?」
浩之「さすがに先輩には無理だよな…何があったの?」
芹香「……」
浩之「…………困ってるのを見て、皆さんが助けてくれたって?
   でも周りには誰もいないよな…まさか、皆さんって…」
芹香「……」
浩之「………………まだそこにいますよ、ってやっぱり…」

 3曲目にSPトリップ…。
必死に踊る俺の隣では、再び何もせずにパーフェクトを連発する光景が…。


 数日後、そのゲーセンは怪奇スポットとして雑誌に紹介されていた。




<綾香の場合>

綾香「へぇ…話には聞いてたけど実際に見るのは初めてだわ」
浩之「そうなのか? ちょっとだけ意外だな」
綾香「まぁあんまりこういう所には来ないしね…いいわ、やってみましょ」

 そういうと綾香は張り切って筐体の方へと向かっていった。
簡単にルールの説明をして、とりあえずノーマルを選ぼうとしたとき…。

綾香「ん…別にハードでも大丈夫だと思うわよ」
浩之「とはいってもなぁ…初めてなんだろ?」
綾香「大丈夫大丈夫。さぁ始めましょ」

 そういうなら…ということでハードを選択。
曲は…とりあえずバタフライ。いくら綾香でも初めてじゃ無理だろ…。
 …だが、俺が綾香を過小評価してることはその後あっさり思い知らされた。

綾香「…まぁこんなもんね」
浩之「うそだろ…初めてでいきなりSS出すなんて…」
綾香「だから言ったでしょ? じゃあ2曲目は私が選ぶわね」

 そういって綾香は曲を選び出した。
…ブリリアント2Uオーケストラ…まぁそこまで難しくないけど、さすがにこれで
SSは出せないだろ…俺だってそうそう出せないし…。

浩之「……嘘だろ」
綾香「まぁこんなもんかな」

 なんと綾香はいとも簡単そうにオールコンボを出してしまった。
…いくらなんでも何者だよこいつ。

浩之「綾香…何かコツでもあるのか?」
綾香「別に、単に来た矢印を踏んでるだけよ」
浩之「そりゃそうだけど…じゃあ試しにパラマックスでも」

 うっ…選ばなきゃ良かった…。
予想通り、綾香はこれまた見事にオールコンボ。
一方の俺は…終盤で失敗して見事にゲージがゼロに…。

綾香「なにやってんのよ浩之。初めての私に負けるなんて情けないわよ」
浩之「…お前が特別なんだよ…何者だよお前」
綾香「あら、どこにでもいる普通のかわいい女子高生じゃない」
浩之「………」

 …その後、綾香はアナザーやマニアック、ダブルさえもあっさり踊ってのけた。
しかもダブルを後ろから見ていて気づいたが、踊ってる姿が実に絵になる。
最後の1曲(それもダブルパラマックス)を踊っているときには、後ろにいた
ギャラリーが当初の倍くらいはいたよなぁ…。

綾香「ふぅ…楽しかった。こういう所もたまにはいいわね。また来ようねっ」
浩之「ん? ああ…」
綾香「あれ? 浩之は楽しくなかったの?」
浩之「いや、楽しかったよ。綾香の踊ってる姿も見れたしな」
綾香「じゃあ見物料にラーメンでも奢ってね。お腹空いちゃった」
浩之「…はいはい」




<理緒の場合>

理緒「え? あ、うん…でも私あんまりお金持ってないよ」
浩之「仕方ねぇな…まぁ最初の1回だし、奢ってやるよ」
理緒「ホント!? ありがと〜藤田君! じゃあ早速やろやろ!」
浩之「おいおい待てよ…」

 奢ってやるって言ったら急にやる気になったなぁ、理緒ちゃん。
まぁいいか、嬉しそうだしな。
 というわけで早速プレイ開始…とりあえずバタフライでもやってみるかな。
理緒ちゃんは必死で踊っている…と思ったら突然、

理緒「きゃあ!」

 ばたーんっ!!
…唐突に思いっきり転んでしまった。
 ちょうど1曲目のラストだったので、すぐに終わった直後に
理緒ちゃんの方へと向き変わった。

理緒「ううっ…なんで何もないところで転ぶの〜?」

 理緒ちゃんは顔を押さえながら立ち上がった…って顔面から落ちたんかいな…。
それにしてもホント、何でこんなところで転べるんだろ…。

浩之「きっとパネルの段差につまずいたんだよ。大丈夫か?」
理緒「うん…大丈夫だよ」
浩之「いくら突然でもせめて顔くらいはカバーしような」
理緒「うん…ありがとう」

 …しかし理緒ちゃんの不幸はこの程度では収まらなかった。

理緒「きゃあっ!!」
 ばたん!
理緒「うわぁっ!!」
 ばたんっ!!
理緒「あらっ!」
 ばたんっっ!!!

 …2曲目を踊ってる最中、なんつーかわざとやってるんじゃないかと思えるほど
理緒ちゃんはつまずきまくった。とはいえこっちも踊ってる最中だから、できることは
「大丈夫か?」と尋ねることくらいしかできないし…うーん…。
 こんな感じで3曲目…相変わらず理緒ちゃんはよくつまずく…あっ!!!

理緒「う、うわぁ!!!」

 …やばいっ!!
理緒ちゃんは筐体の方へ向かって倒れていってしまった。
さすがにアレにぶつかってはタダでは済まないかも知れない。
俺はとっさに理緒ちゃんの下に入り、そのまま受け止めた。

理緒「きゃぁぁぁぁ!! ……あれ? 藤田君?」
浩之「ふぅ…なんとかセーフだな。気をつけろよ」
理緒「ありがとう…あっ! ゲーム!!」

 さすがに俺がプレイをやめてしまうとあっさりゲームオーバーになってしまった。
台を離れようとしたとき、理緒ちゃんがすまなそうに俺に話しかけてきた。

理緒「ごめん…私がドジだから…」
浩之「気にすんなよ。怪我させるわけにはいかねーじゃねぇか。
   それに…ゲームだったらまたやればいいだろ?」
理緒「うん…そうだね…また一緒にやろうね、藤田君」

 …まぁたまにはこういうのもいいかな。


   おしまい♪



(後書き)

 …何やってんだろ私(^_^;;;)
他のSS(「長い〜」とか「雨〜」とか)が完全に詰まってて、
そんでその息抜きにかるーい気持ちで書き始めたはずなのに…気がつきゃ
3日も経ってるぞおい(核爆)。

 ネタ自体はいつか書くぞって思ってたものですから基本的に
スムーズにいきましたが。

 つまったのがあかり、マルチ、理緒。
あかりなんて結局思いつかなかったんで、ついに「ありふれた光景」に
なってしまってます(^_^;;;)
理緒は…PS版プレイ直後なんでベクトルがそういう方向にしか
向かなかったとご理解ください(要は壊れてるということで(核爆)理緒かぁいい〜)

 まぁ、PS版発売記念&エイプリルフール(UPされたのがいつだろうと
書きあがったのはエイプリルフールだいっ)ということでご容赦ください(^_^;;;)
#琴音ちゃんはPC版準拠だけど(笑)。

 それではぁ次こそは普通のSSでお会いしましょ〜(^_^;)/
…えっ、だよもん編? ワッフル編? スケッチ編?
…じゃっ…((((((((((;;-_-)


                1999/04/01 瑞希@だぶらー(^_^;)

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