放課後。
いつものようにかったるい授業が終わった。
何もすることのない俺はとっとと家に帰ろうとしたが…

 くいくいっ。

 後ろから袖を引っ張られて振り向くと…。

浩之「おっ、先輩じゃねーか。どうしたの?」
芹香「……」
浩之「え? 今日お暇ですかって? うーん、まぁ暇だな」
芹香「……」
浩之「…今から部活に来ませんかって? 別にいいけど、今日は何するんだ?」
芹香「……」
浩之「…………悪魔の召喚? …ごめん俺用事思い出したわ」
芹香「……」じぃーーーーっ。
浩之「うっ……わかったよ、行けばいいんだろ行けば」

 …そんな目で見つめるなんて反則だぞ…綾香の入れ知恵だな…。
結局行くことになった俺は、先輩と一緒に部室へと移動した。

浩之「相変わらず不気味なところだなぁ」
綾香「そぉね…ちゃんと掃除とか換気とかしてるのかしら?」
浩之「埃もないみたいだし大丈夫なんじゃ…っておい綾香」
綾香「どうしたの?」
浩之「どうしてお前がここにいるんだよ!?」
綾香「…姉さんを迎えに来たら捕まっちゃったのよ…」
浩之「お互い大変だな…」
芹香「……」
浩之「わぁっ!! …え? 準備が出来たから始めますって? ああ…」

 いつものように魔法陣の前に立ち、本を見ながら呪文を詠唱し始める。
それにあわせて魔法陣が光を放ち始め、徐々に強さを増していく。

綾香「ねぇ浩之…悪魔召喚って本気だったの? てっきり冗談かと…」
浩之「先輩が冗談なんか言うように見えるか? 残念ながら本気だ」
綾香「そんなぁ………きゃぁぁっ!!」

 魔法陣が眩いばかりの光を放つ。俺達は思わず目を閉じた。
光が収まり、目を開けた俺達が見たものは…。

浩之「魔界も広いんだな…制服を着た女子高生の悪魔がいるなんて…」


<だよもん星人の謎・りんくばーじょん>


 そこに立っていたのはどこからどう見てもごく普通の女の子だった。
見知らぬ学校の制服を着たお下げの女の子。
…でも召喚されて現れたって言うことは…やっぱりそういうことなんだろうか…。

浩之「あの…もしもし?」
女の子「…なんでしょう?」
浩之「どう見ても女子高生にしか見えないんだけど、その辺どうなのかなぁと」
女の子「女子高生ですから」
浩之「やっぱりか…女子高生の格好した悪魔なんているはずないよな」
女の子「悪魔ですけど」
綾香「…あぁもうっ!! 一体なんだって言うのよぉ!!」
??「まぁまぁ落ち着いて、気にしない気にしない。
   しかしこの部屋って珍しいものがいっぱいあるのね〜」
綾香「そぉよね。私もびっくりしたわ…ってあなた誰よ?
   いつの間にここにいるのよっ!!」
??「さっきからずっといるわよ。ねぇ茜」
茜「あまり散らかしちゃ駄目ですよ、詩子」

 …どうやら茜と詩子というらしいこの2人。
本当に悪魔だというのだろうか?
そんなことを考えていると、お下げの子…茜が無表情のまま話しだした。

茜「私はアンドロメダから地球征服のために来た悪魔…。愛する人と戦わなければ
  ならない宿命に負けずに日々戦い続けています。私を召喚したあなた…
  あなたの魔力はかなり大きいです。私達と共に戦いませんか?
  征服した暁には世界の半分を…」

浩之「…闇の世界とかいうお約束なオチはなしな」
詩子「あなた折原君みたいなこと言うのね」
浩之「誰だよそれは…」
芹香「……」
浩之「どうしましょうかって? 真剣に悩むな!!」
茜「私は真剣です」
浩之「そっちも!!」

詩子「確かに魅力的な人材よね〜。こんなに精巧な分身を作れるんだし」

 詩子と名乗る女の子は分身…要するに綾香の全身をなめ回すように見ながら言った。

綾香「誰が分身よ!!」
詩子「へぇ、自我まであるんだ。ホムンクルス?ひょっとしたらドッペルゲンガーとか」
綾香「何わけのわかんないこと言ってるのよ!!」

 綾香が思わず拳を振り上げる。

浩之「待て綾香! お前がやると洒落にならない!!」
綾香「止めないで浩之…ってあれ? いない??」

 綾香が拳を振り下ろそうしたときにはもうそこにはいなかった。
詩子は…一体いつ移動したんだと言いたくなるスピードで茜の隣にいた。

詩子「茜、どうしたの?」
茜「…お腹空きました」
詩子「そぉね…じゃあワッフルでも食べて帰ろっか?」
茜「…詩子のおごりですね」
詩子「たまにはいいわよ。じゃ、行こっか」

 …全く緊張感のない会話を繰り広げたと思うと、先輩に魔法陣で召喚された
地球征服をたくらむ悪魔達は、部室の入り口からわきあいあいと出ていってしまった…。

綾香「…で、いったい何だったのよ、姉さん…」
芹香「……」
浩之「今度はもっとまともな悪魔を召喚しますって?
   ………頼むからもう勘弁してくれ…」
芹香「……」
浩之「…………世界征服、どうしましょうかって……」

 真剣に悩む先輩の隣で、俺と綾香は力無く立ちつくしていた…。

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あかり「保科さん、今帰り?」
智子「あぁ、神岸さん……と、そのおまけの藤田君」
浩之「何だよ委員長…その扱いの差は」
智子「当然の扱いやと思うけど」

 相変わらず言うことはきっついけど、その表情には以前のような曇りは感じられない。
委員長もすっかりこっちに馴染んでくれて、俺も一安心だ。

あかり「今から予備校かな?」
智子「うん」
浩之「今からヤック行くんだけどさ、ちょっとくらいつきあえないか?」
智子「ヤックやない! ヤクドやっ!!」
浩之「どっちでもいいよ…で、どうだ?」
智子「うーん…ちょっとくらいなら」

 帰りに寄り道につきあってくれるくらいに溶け込んでくれた。
あかりとは仲のいい友達らしいし。よかったよかった。

 ヤックに着き、それぞれ自分の分を手に持って席に着いた。
委員長にも訪れたごく普通の放課後の光景…のはずだったのだが…。

あかり「それで志保がね…あれ?」
浩之「どうした、あかり?」
あかり「浩之ちゃん、私の照り焼きヤック知らない?」
浩之「全部食べたんじゃないのか?」
あかり「ううん、まだ半分くらい残ってたよ」
智子「藤田君が食べたのとちゃうか?」
浩之「…そこまで意地汚くねーぞ…大体自分の分がまだ…ってあら?」
あかり「どうしたの?」
浩之「………俺の分も無くなってる…」
あかり「えっ!?」

 …どうしたというんだ? ハンバーガーが無くなるなんて…。
でも、1人だけなくなっていない奴がいるな…。

浩之「委員長…さてはお前が…」
智子「なんで私がそんなこと…痛たたたたたたたっっ!!」

 突然委員長が痛がり始めた。何が起きたと言うんだろう。

あかり「大丈夫、保科さん?」
浩之「そんなことでごまかそうったって駄目だぞ〜」
智子「あほっ!! そんなんちゃうわっ!!! 髪が、誰かが髪をひっぱっとる!!」

 俺達が委員長の後ろを伺おうとしたその時…。

志保「やっほぉ〜、ヒロ、あかり♪」
あかり「志保ぉ、遅いわよ」
志保「ごめんごめん、友達に捕まっちゃってさ…ところで珍しいわね、保科さんがいるなんて」
智子「あいたたたたたっ!!」
志保「…誰これ? 新種のアクセサリー? 女の子を髪にぶら下げるなんて」
浩之「………へっ?」

 俺とあかりは席を立ち、今度こそ委員長の後ろへと回り込む。そこには…。

少女「みゅ〜♪」

 そこには1人の見知らぬ女の子がいた。
とても楽しそうに委員長のお下げを引っ張っている。

あかり「…ああっ、浩之ちゃん、ハンバーガーがっ」

 お下げを引っ張る反対の手には、さっきまで俺が食べていたのと同じ種類の
ハンバーガーが握られている。足下には照り焼きヤックの包みが…。
この状況から考えて、ほぼ間違いなく…。

浩之「おいこら、何で人のハンバーガーを食べてるんだ、お前?」

 少女を委員長から引き剥がしながら問いつめる。
やっと解放された委員長は、頭を抱えてうずくまっている。
一方、少女は言うと、なんかえらく不満そうだ。

少女「…みゅ〜…」
浩之「腹減ってるんなら自分の金で買って食べろよな」
少女「みゅ?」
あかり「…お金無いの?」
少女「みゅみゅ?」
智子「…とりあえず人の髪で散々遊んだからにはごめんなさいの一言も…いたたっ!!」
少女「…みゅ〜♪」

 委員長のお下げが目に入った途端、再び引っ張り始める。

智子「と、とりあえず藤田君、何とかして!!」
浩之「何とかしてって言われてもなぁ…」
??「ああーーーっっ、やっと見つけた、マユっ!!!」

 苦しむ委員長に一人の女の子が近づいていったと思うと、
少女…どうやらマユという名前らしい…を強引に引き剥がした。

マユ「あ、七瀬〜♪」
七瀬「全くもう…どこに行ったかと思ったら、何見知らぬ人の髪を引っ張ってるのよ…
   それにそのハンバーガー! 自分で買った訳じゃないわよね…もしかして…」

 そういうと女の子…七瀬でいいのかな…はこっちを振り返って、

七瀬「ごめんなさい!! 弁償しますから!!!」
あかり「そんなに謝らなくっても…お腹が空いてたんだよ…ねっ?」
マユ「みゅ♪」
浩之「…ま、弁償してくれるならそれでいいさ」
智子「…私は納得したくないけど…私にも1個くらい買うてな」
七瀬「それはもう……うぎゃぁぁぁっ!!!!」
マユ「みゅ〜♪」

 今度は七瀬という女の子の長い髪を引っ張り始めた。
なるほど…きっと普段からこうなんだろうなぁ。

七瀬「それでは失礼します…ほら、マユも挨拶してっ」
マユ「みゅ♪」ぐいっ。
七瀬「とりあえず髪から手を離せぇぇぇぇっ!!」

 2人は去っていった。なんというか…騒々しい奴らだったなぁ…。

あかり「何だったんだろうね」
浩之「全くだ…志保並に迷惑な連中だったな」
志保「誰がよ! よく目の前でそんなこと言えるわね」
浩之「あ、いたのか?」
志保「……」

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浩之「よぉ、葵ちゃん。今日も練習頑張ってるな」
葵「あ、先輩! こんにちはっ!」
マルチ「葵さん、こんにちはー」
葵「あ、マルチさんも来てくださったんですか?」
マルチ「はいっ。浩之さんが今から練習だから見に来ないかって」
浩之「さ、練習練習。せっかく見学者がいるんだから格好いいところ見せないと」
葵「えっ!? 入部希望してくださるんですか、マルチさん!?」
マルチ「私には無理ですよぉー。意地悪しないでください、浩之さぁんっ」

 …とかいいつつも、気がつけば練習に参加しているマルチであった。

マルチ「ええっとぉ…これを叩けばいいんですね?」
葵「はいっ! 遠慮なくどうぞ!!」
浩之「頑張れよぉ、マルチ」
マルチ「いきますっ! ええぇーーーいっ!!」

 …へろへろ…ぱすんっ。

マルチ「きゃぁぁぁぁーーっ」

 …サンドバッグを殴ったはずのマルチは、逆にサンドバッグに吹っ飛ばされていた。

浩之「おいおい…大丈夫か、マルチ?」
マルチ「ううっ…サンドバッグって手強いんですねぇ…」
葵「あれ? マルチさん、耳当て…」
マルチ「えっ? …あ、な、ないですっ。ど、どこにいっちゃったんでしょう…」

 どうやらサンドバッグに吹っ飛ばされたときに落としてしまったらしい。
まぁさすがにそう遠くまで飛んでるはずもなく、すぐに見つかったんだが…。

浩之「しかしなぁ…改めて思うけどさ、2人ってよく似てるよな」
葵「えっ!? そぉですか?」
浩之「うんうん。耳当て外して髪の色が同じだったらそっくりだな。並んでみ」
マルチ「…あ、確かにそうかも知れませんねー」
浩之「おまけにこれを葵ちゃんが付ければ…っと」
葵「なんか変な感じですけど…どうですか?」
マルチ「わぁっ、お似合いですー」
浩之「…それは何か違うだろ、マルチ…」

マルチ「…でもなんだか不思議ですねぇ…ロボットの私と人間の葵さんが似てるなんて」
浩之「確かにな…葵ちゃん、知り合いにメイドロボットの開発者とかいたりしない?」
葵「えーっと…聞いたこと無いです」
浩之「じゃあ親戚に長瀬さんとかが…」
葵「どういうことです??」
浩之「あ、気にしないでくれ…しかし何でだろうなぁ…」

 …そんなことを悩んでいたその時!!

瑞佳「それはね、あなた達が実は前世でアンドロメダの悪魔と最後まで戦った双子の巫女の
   生まれ変わりだからなんだよ。あなた達の祈りで守られていたあの世界も、悪魔の手に
   よって滅ぼされちゃったんだもん。さぁ、今こそあなた達の力が再び必要な時だよ!
   悪魔の手からこの地球を守るんだもん!!」

 …なんだぁ!? このいっちゃってる台詞を吐く女の子は?
だいたいいつの間に現れたんだ?

浩之「あの…君、大丈夫?」
瑞佳「さぁ、2人とも! 私と一緒にこの世界を救いましょう!」
葵「そぉだったんですか…」
マルチ「私にもそんな力があったんですねー。それならきっと皆様のお役に立てますー」
浩之「だぁーっ!! ちょっと待てぇ2人とも!!
   そんないかにも怪しげな話に騙されてるんじゃなぁーいっ!!」

 …おいおい、俺の声って聞こえてないんじゃないのか?
この女、変な術でも使ってるんじゃねーか?
…ってそれはさておき、力ずくでもなんとかしないと…

 …ばきぃっっ!!!

 …へっ?
俺は何者かに後頭部を殴られ、そのまま意識を失ってしまった。
消えゆく意識の中、かすかに声が聞こえた。

浩平「許してくれ…俺の平穏な生活のためには仕方がなかったんだ…」


 目が覚めたとき、周りには誰もいなかった。
…というか、目が覚めたときには何故か自分の部屋にいた。
さっきまで神社にいたはず…ってーことはさっきのは夢ってことか?
なーんだ、心配して損したよ。そうだよな、あんなことあるはずないよな…。

 それが夢でないことに気づいたのは翌日以降のことになる。
そんなこととはつゆ知らず、俺は再び眠りに入った…。


< …一応続く(^_^;;) >




(後書き)
 ふっ…こうなりゃ狙ってやるさ、柳の下の何匹目かのドジョウ(核爆)。

 だよもん本編は進まないし、七瀬ちゃんは意に反してちょっとシリアス入ってるし。
ギャグが書きたいんだぁ〜と外伝のタイトルを考えて…あはは(^_^;;;)
#まず最初にタイトルありき(笑)

 ふつーならMOONとかかのんに行くべきなんだろうけどどっちもやってないし(^_^;;)
(かのんはぼちぼち始めるけど)つーわけで結局東鳩に落ち着く。
ここでふと思い出したのが葵ちゃん&マルチのだよもん風SSネタ(核爆)。
てなわけで最終的にこれをオチにして他のキャラの分を考えて…と。

 しかし…これは今まで以上に苦情が恐ろしいな(^_^;;;;)
そーゆーメールはできるだけ勘弁してね〜。
少なくとも怒るのはやめてやってね。あくまでギャグなんだからさぁ(^_^;;;;;)

 では次回「ぽくぽく姉妹の謎(仮)」でお会いしましょう(滅爆)。


(後書きその2)
 うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(T_T)

 書きかけが雷で全部吹っ飛んだぁぁぁぁぁぁぁ(T_T)

 …気を取り直して書き直してます…かのんも途中で止まるし…。