志保その1「ねつ造」

「最近志保ちゃん情報のネタがないわね……」
 志保は悩んでいた。
 なにをかと言うと、独り言を見れば一目で見当が付くだろう。
「ヤバイわね……これじゃいつもあたしの志保ちゃん情報を期待している人に申し訳ないわ…」
 自意識過剰もいいところだ。
 いったい彼女はこの言葉を本心で言ってるのか冗談なのか分からない。

 ふと、志保はあることを思いついた。
「そうだわ。スクープが起きないのなら、起こせばいいじゃない!」

 次の日。
 浩之は廊下を歩いていた。

 曲がり角を曲がったところで、足を止める。

 目の前に、バナナの皮が落ちていた。
「………?」
 胡散臭そうにそれを見る。

 目線を上げてみると、少し先の女子トイレの陰に、カメラのシャッターを今か今かと待ちかまえている志保の姿があった。
「…………」
 この一瞬で浩之は全てを悟った。
 志保に気づいてないふりをして、少し考えてみる。

 ちょうどいい所に、融通の利かない堅物なことで有名な木林先生が浩之の後方を歩いていた。
 それを見て浩之はニヤリと含み笑いを浮かべる。

「木林先生、あそこで長岡さんがカメラ持って不審なことしてるんですけど」
「なに?それは見過ごせんな……おい長岡…」
 そう言って先生が歩き出そうとした時、浩之は素早く足下のバナナの皮を先生の進行先に蹴った。

『ずってぇぇぇ〜ん!!』
「ちゃ〜んす!!」
『カシャッ!』
 派手な音とともに宙に舞う瞬間を、志保はカメラで捕らえた。
 その人物が木林先生とも知らずに。

 これから後のことは、もはや言うまでもないだろう。

ーEND

【ひとこと】「ねつ造」
 カメラマンがスクープを作るのは犯罪です☆
 犯罪名はタイトルの通り。災いは自分にリバウンドしてくるものです(笑)



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