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マルチその2「いぬさん」

 中庭に出ると、俺は明らかに目立っているマルチを見つけた。
「いぬさんいぬさんこんにちわ〜」
 マルチは今日も犬っころにご飯をあげていた。
「よぅ、マルチ」
「あ、浩之さん!こんにちわ〜」
 俺が声をかけるとマルチは嬉しそうに一礼してきた。
「今日も犬っころに飯やってるのか?偉いな」
「そ、そんなことないです〜」
 マルチは俺にほめられてはにゃにゃ〜んとなった。
 いつもはにゃ〜んとしているマルチだが、俺が頭を撫でたりしてやると増してはにゃにゃ〜んとなるのだ。ういやつ。
「マルチは犬が好きなんだな」
「はい!とっても可愛くてふかふかで、らぶり〜なんですぅ〜」
「それは、マルチだって一緒だろ」
「はわわ、照れちゃいますぅ〜」
「あっはっは!可愛いやつめぇ」
 俺とマルチは当社比200%のラヴラヴ度を誇っていた。
 そんな俺たちに妬いたのか、犬がくぅ〜んと吠えた。
「はわ〜、ごめんなさい犬さん。今続きをあげますからね〜」
 犬っころはマルチがあげたパンのかけらを再びガツガツと食べ始めた。
「こいつって雑種だよなぁ…マルチは雑種が好きなのか?」
「いえ、犬さんはどんな犬さんでも好きなんです〜。ただ…」
「…ただ?」
 マルチが微妙に含みを見せたので、俺は言葉を繋げた。
「ただ…どれかと言ったなら、マルチーズなんですけどね〜」

 俺は見た!あの純粋無垢な笑顔を振りまくマルチの顔が一瞬『にやそ』の輝きを見せたことを!
 『にやり』ではなく『にやそ』なのだ!この違いは意味が大きい!

 この女、いやこのロボットは犬好きという特性を活かして売名行為などを考える曲者なのだ、と浩之は気付いた。

「犬さんはおりこうさんですね〜」
 そう言って犬っころの頭を撫で続けるマルチの顔にどす黒い翳りを見たのは俺の目の錯覚だったのだろうか…

 ーEND(ぉ



 何気にチャットネタを使ってみました(^^;;

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