＜無謀な文化祭？＞
「なー、葵ちゃん」
「はい。なんですか先輩」
「もうちょっとで文化祭だけどどうする？」
「そうですねー、じゃあなにか作りましょうか」
「えっ……二人で？」
「はい！」
「………………………………」
「いらっしゃい、いらっしゃい！」
俺は今焼きそばを売っている………。
焼きそばになった理由は簡単で手間がそれほどかからないからだった。
「葵ちゃ〜ん。こっち手伝ってくれ〜」
「はーい。今行きまーす」
簡単とは言え二人では休む暇も無いと言った感じだった。
「焼きそばふたつね」
「はいよ。ちょっとまっててね」
俺はそう言ってあらかじめ焼いておいた物をパックに詰める。
「はい。お待ちどうさま。また来て下さいねー」
一段落ついて小休憩を取る。
「先輩、大変ですねー」
「ああ、予想外に大盛況だからな」
確かに予想外だった。
そのおかげで暇が無いのだが…。
「先輩。疲れてないですか？」
「ん、大丈夫。こんなの普段の練習に比べたら全然楽だよ」
「そうですね」
そんなことを話ながら、俺達は少しの幸せを楽しんだ。
「おーい。誰かいないのー？」
「あっ、すいません。今行きます」
俺は慌てて客の声に答えた。
「行こう葵ちゃ……」
俺がそう言って目を葵ちゃんの方に向けると、葵ちゃんがぐったりと地面にへばりついていた。
「ど、どうしたんだ！？おい！葵ちゃん！」
返事が無い…。
「おーい。誰かいないのかよー！」
「うるせーな！それどころじゃねーんだ！」
俺は客に向かって怒鳴った。
「おい！葵ちゃん！葵ちゃんってば！」
やはり返事はない。
しゃあない、取りあえず保健室に連れて行こう。
俺は葵ちゃんを抱きかかえると、店をほっぽり出して保健室へと向かった。
「ん…………」
数時間たってベッドで横になっている葵ちゃんの口元が動いた。
「葵ちゃん。気が付いた？」
「あっ…先輩…私…」
葵ちゃんはなにが起こったのか混乱してる様子だった。
「急に倒れるからびっくりしちゃったじゃないか」
「ごめんなさい。私…昨日あまり寝てなくて…」
「どうせ緊張でもしてたんだろ？」
俺が言うと葵ちゃんは、こくんと首を縦に振った。
「あっ、お店は？」
「んなこと気にすんなって。なんとかなってるだろ」
俺はぶっきらぼうに答えた。
数分後、楽におしゃべりが出来るようになった葵ちゃんに俺が言った。
「動ける？」
「はい。どこか行くんですか？」
不思議そうな顔をする葵ちゃん。
「音楽…聞こえない？」
俺が言うと葵ちゃんは、じっと耳を澄ませて音を聞きとろうとした。
「……あっ…聞こえます…」
「今、後夜祭やってるんだよ」
「後夜祭…ですか」
「それでさ…俺、踊る相手が居なくて困ってるんだよね」
俺は片膝を床につけてしゃがむと、ベッドの上の葵ちゃんに向かってこう言った。
「松原葵さん。どうかこの悲しき男と踊ってはくれないでしょうか？」
俺は顔を上げて葵ちゃんの反応を見る。
西日のせいで葵ちゃんの表情は良く分からなかった。
それでも動揺しているような気配を俺は察していた。
「私で良ければ…………」
消え入りそうな声で葵ちゃんが答えてくれた。
外に出ると沢山の生徒が火を囲んで踊っていた。
その中に俺と葵ちゃんも入る。
「先輩…今日はすいませんでした…」
「気にすんなって。別に葵ちゃんだけのせいじゃないからさ」
「でも…………」
「さ、そんなこと気にせずに踊ろうぜ」
俺はそう言って葵ちゃんの手を握ると、回りに合わせてステップを踏みだした。
軽快な音楽が鳴り響く中…。
俺はふっと足を止めた。
「きゃ…」
急に足を止めた俺にぶつかる葵ちゃん。
「先輩？」
不思議そうな顔で俺を見上げる。
「葵ちゃん…来年もやれたら良いな…」
俺は、もう日が落ちた空を見つめて呟いた。
「…そうですね…」
「また…二人っきりで…な」
「はい…」
音楽が鳴り終わり……。
燃え盛る火も消えてしまい……。
踊っていた生徒も帰りだす……。
すべてのモノには終わりが必ず訪れるだろう。
でも……。
ひとつぐらい永遠に続くものがあっても良いよな…。
それがどんなものだったとしても…。
それが愛と言う感情だったとしても…。
それが誇れるモノだったら…。
暗闇の中。
ふたつの影がひとつになる瞬間だった。
数日後、文化祭でのアンケートが発表された。
『感じの悪かった店』
一位：焼きそば
こりゃー、来年はちと辛くなるな……………………。
あとがき
こんにちわ。
葵惑星です。
文化祭シーズン到来ですね。
なにぶん俺のところは男子校なもんで共学のは良く分かりませんが…。
気に入らない表現とかあるかもしれないですが、前作に比べると読みやすいのではないでしょうか？
それでわ、失礼します
（後書きになってねーな）
９月１３日