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〜ぶれいくあうと〜

                           writed by Hiro
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『チュンチュン』
『チュンチュン』

「むにゃぁ・・・せんぱい・・・・・そこでローキック・・・」

ある夏休みの朝でした。

『プルルルルル・・・・・プルルルルル・・・・・・・・』

「ふにゃ・・・でんわ?
神社に公衆電話なんてあったっけ・・・
それより、あれってベルが鳴るの・・・?」

『プルルルルル・・・・・』
『ガバッ』

「あれ?わたし寝てたんだ・・・と、言うことは・・・ホントの電話?」

『プルルルルル・・・・・プルルルルル・・・・・・・・』

「本当に鳴ってる・・・・・お母さんいないのかなぁ・・・・?」

『プルルルルル・・・・・プルルルルル・・・・・・・・』

「はぁい、今出ま〜す。まったくぅ・・・お母さん、どこに行っちゃったの?
 せっかく夏休みに入ったから、少しだけお寝坊さんしようと思ったのに・・・・」

『プルルルルル・・・・・プッ』

「あれっ・・・切れちゃった」

誰だろうな・・・

『プルルルル・・・』

「あ、またかかってきた」

『ガチャッ』

「もしもし・・・」
「おっはよー、葵ちゃん。起きてた?」
「せんぱぁい!おはようございます」
「あれ?もしかして、起こしちゃったかな?」
「い、いえ、もう起きてます」
「その割には寝起きみたいな声だぞ」
「そ、そうですかぁ?そんな事無いですよ。あはは・・・」

ちょっと苦しいかったかな・・・

「ま、いいや。葵ちゃん、今日は何か予定ある?」
「いえ、特には・・・」
「・・・・・・ちょうどいいな・・・・」
「はい?」
「あ、いや・・・こっちの事。じゃ、ちょっと付き合ってもらえるかな?」
「は、はい!喜んで!!」
「ん。11時半でいいか・・・駅前で待ってて」
「はぁ〜い。11時半に駅前ですね」
「あ・・・っと、今日は、少しだけよそ行きの服を着てきてくれるとありがたいな」
「は?よそ行き・・・ですか?」
「そうそう」
「わかりました」
「よろしく」
「はい!失礼します」

『ガチャン』

うれしいな・・・突然のお誘い・・・

「ただいまー」
「お母さん・・・お帰りなさい。こんな朝早くからどこに行ってたの?」
「朝早くって・・・もう9時過ぎてるのよ。
 あなたねぇ、夏休みだからって寝坊の癖つけると、新学期が始まったら大変よ」
「わかってるわよぉ、そんな事。あ、それで今日、出かけるからね」
「え?出かけるの?」
「うん、先輩からお誘いの電話があったの」
「へぇー、仲直りしたんだ」
「なにそれ?」
「だって、この間ひどく落ちこんでたじゃない。
 あの時、藤田君とケンカしてたんでしょ?」
「変な事言わないでよぉ。ケンカしてたわけじゃないの」
「ふーん、ま、いいけどね。朝ご飯はトーストでいい?」
「うん」
「ちょっと待っててね」

今日は先輩とデートだ。
なんかワクワクしちゃうな。
でも、そういえば・・・

・・・・・・「少しだけよそ行きの服を着てきてくれるとありがたいな」・・・・・・

どういう意味だろう?
気になるな・・・

「はい、お待ちどうさま。ハムエッグでいいわよね。
 でね、葵、何度も言うようだけど・・・」
「わかってるわよ。『女の子なんだから、お料理ぐらい・・・』でしょ?」
「わかってるんならいいんだけどねぇ・・・」
「なんかやだなぁ。その奥歯に物のはさまったような言い方」
「え?だって、将来藤田君に外食ばかりさせるつもりかな?って思ってたから」
「それってどーゆー意味よ!」
「言葉通りよ。こんな事言われたくなかったら、早くお料理の勉強をする事ね」
「はいはい、わかりました」
「まったく・・・覚える気はあるのかしら・・・」
「なぁに?」
「別に・・・ところで、何時頃出かけるの?」
「うん、11時半に駅前で待ち合わせだから・・・11時頃かな」
「そう・・・あまり藤田君に迷惑かけちゃだめよ」
「わかってますぅ」


「さてと・・・朝ご飯も食べたし、ちょっと早いけど支度しようかな」


「洋服ダンスを開けてっと・・・どれにしようかな。
 このワンピース・・・ちょっと派手かなぁ。
 あ、これにしようっと。少しフォーマルっぽいしね」

先輩とお付き合いするようになってから、オシャレに気を使うようになってきたな。
綾香さんに相談して、いろいろと教えてもらったっけ・・・

・・・・・・「あなたも格闘技を志す人間以前に、一人の女性なんだからね。
    身だしなみには気を使わなきゃダメよ。
    で、バッチリとキメて浩之なんかメロメロにしちゃいなさい」・・・・・・

ふふふ・・・綾香さんも言う事がすごいよね。
・・・さぁ、あとは髪型だ。

「うぅ〜、寝癖が・・・これをなんとかして・・・」

鏡に向かって、自分の顔をのぞき込んでみる。

・・・・・・「葵、最近綺麗になってきたわね。
    女の子の自覚が出てきたみたいで、お母さん、嬉しいな」・・・・・・

ホントかな?自分じゃわからないよ。
でも・・・先輩のために、素敵な女性になりたい・・・
あ・・・もうこんな時間。そろそろ行かなくちゃ。
いけない!指輪を忘れるとこだった・・・


「じゃ、行って来るね」
「はい、行ってらっしゃい。ちゃんと帰ってくるのよ」
「お母さん・・・もう、そんな冗談は聞きあきた」
「悪かったわね。とにかく気を付けてね」
「はぁ〜い、行ってきま〜す」

「うわぁ・・・・・」

日差しが痛いほどに照りつけてきます。

「今日も暑くなりそう・・・」


駅前に着いた・・・
時間は・・・11時20分。
少し早かったかな・・・っと、あれ?

「おっす、葵ちゃん。早かったな」
「先輩も・・・」
「うん、今日は遅れるわけにはいかないんだよ」
「え?じゃ、映画か何か・・・」
「ん?違う違う。もっと大事な場所」
「はぁ」
「行くよ」
「あ、はい!」

大事な場所か・・・どこかな?

「先輩、いったいどこに・・・」
「付いてくりゃわかるよ」
「はい・・・」


「まずはここだな」
「ここってケーキ屋さんですよ」
「そうだよ」
「?」

わからない・・・先輩の目的って何?

「ん〜っと、どれにしようかな・・・葵ちゃん、何がいい?」
「はい?・・・えぇ〜っと、レアチーズケーキ・・・・・」

いけない・・・つい・・・

「すいません。コレと、コレと・・・あ、あとレアチーズね。なるべく大きいので・・・」


「よし、準備OKっと」
「先輩、ケーキなんてどうするんですか?」
「え?あぁ、手みやげ」
「手みやげ・・・そうすると、どなたかのおうちに?」
「まぁね」

ますますわからない・・・


「ねぇ、先輩」
「ん?」
「なんか見覚えのある所に来たんですけど・・・」
「ははは・・・そうかもな」

この街並みは・・・まさか・・・

「さ、そろそろ着くよ。あ、悪いけど、このケーキを持っててくれるかな」
「え?あ、はい・・・」

うぅ〜、嫌な予感が・・・

「ほい、着いたっと」
「せんぱ〜い!まだ、心の準備が・・・」
「なんだそれ?」
「だって・・・よそ行きの服着て、おみやげ持って・・・
 で、先輩のおうちにお邪魔すると言う事は・・・もしかして、ご両親にわたしを・・・」
「勘がいいね」
「ごめんなさい。ちょっと用を思い出しましたので・・・」
「こらこら、逃げるなって」
「あ、先輩・・・だってぇ・・・」

くすん・・・無理矢理ひっぱりこまれちゃいました。

「ただいま」
「お帰りなさーい。あ、こちらが松原さんね」
「あ、あの・・・初めまして・・・松原葵と申します。よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくね。そういえば・・・一回お電話でお話ししたかしら」
「あ・・・そうですね。あの時はお騒がせしました」
「いえいえ、そんな事無いわよ。さ、とにかくお上がりなさい」
「え?あ・・・はい、お邪魔します」

あ〜ん、どうしよう・・・本当に心の準備が・・・

「・・・・・せんぱ〜い」
「なんだよ、急に小さな声で」
「だって・・・わたし、なんにもお伺いしてないからこんな格好で・・・」
「ん?充分充分」
「・・・そうですかぁ?」


「今、お茶をお持ちするからね。あ、遠慮無く座って」
「・・・はい、失礼します」

困っちゃったよぉ・・・


「お待たせしたわね。アイスコーヒーだけど・・・大丈夫?」
「あ・・・あの・・・は、はい、何でも飲めます」

だめだ・・・わたしって何言ってんだろ・・・
お母さまにヘンな子って思われちゃう・・・

「お袋、葵ちゃんがケーキ買ってきてくれたんだぜ」
「まぁ、そんなに気を使わなくても・・・」
「い、いえ!これはわたしが買ってきたんじゃ・・・」
「葵ちゃんって気が利くよなぁ」
「ホントね」
「いや、ですから・・・」
「じゃあさ、昼飯食ったらデザートにするか」
「そうね」

先輩・・・わたしの印象が、少しでもよくなるようにって・・・
それはそれで大変嬉しいんですけど・・・

「じゃあ松原さん、浩之の相手お願いね。私はお昼ご飯の支度をしてくるから」
「あ、お昼ご飯なんて・・・あの、お構いなく・・・」


「せんぱ〜い!!こんな不意打ちって・・・」
「なんだよ、不意打ちって。人聞きが悪いなぁ」
「こーゆー事は、前もって言って下さいよぉ・・・」
「あぁ、黙っていたのは悪かったよ。でもな」
「でもなんですかぁ?」
「先に言ってたら、葵ちゃんは絶対に来なかったろ?」
「・・・・・かもしれませんが・・・」
「だろ?だからな」
「うぅ・・・」
「そろそろな、葵ちゃんをお袋に会わせたかったんだよ」
「うぅ・・・」
「大丈夫だよ。別に悪い印象は与えてないみたいだし・・・」
「うぅ・・・」
「ほらほら、いつまでも唸ってないで諦めろよ」
「うぅ・・・諦めろって・・・」
「オレの気持ちもわかってほしいな」
「うぅ・・・・・はぁい、わかりました・・・」

「あらあら、何こそこそ話してるの?」
「あ?あぁ、お袋か・・・何でもないよ」
「ご飯の支度が出来たわよ。こっちにいらっしゃい」
「へいへい。じゃ、葵ちゃん、こっちだよ」
「・・・・・はぁ」


「嫌いな物は特に無いわよね」
「え?あ、あの・・・は、はい・・・守備範囲は広いです」
「守備範囲?」
「あ!い、いや、何でも好き嫌いなく、おいしく食べられるって事だよな?」
「は、はい!実はそうなんです」
「くす。そう・・・よかったわ」

わたし、完全にとっちらかってる・・・

「いっぱい食べてね。私、ご飯をたくさん食べられる子って大好きなの」
「・・・・・ありがとうございます・・・」
「そうそう、松原さんにお礼を言わなきゃいけないわね」
「はい?お礼・・・ですか?」
「この間も電話でお話ししたでしょ?エクストリームの事」
「あ、はい」
「実はね、浩之って趣味らしい事が何も無かったのよ。
 雅史君みたいにサッカーに打ち込むとかね。
 正直言って心配だったの・・・そんな時にあなたから誘ってもらったじゃない。
 それからこの子は・・・ふふふ・・・」
「な、なんだよ、その思い出し笑いは」
「え?ふふふ・・・あなたがエクストリームを始めるって言い出した日の事をね」
「よくわからないなぁ」
「覚えてないの?
 あの日・・・あなたは学校から戻ってきたと思ったら、一直線に自分の部屋に向かって、
 着替えもそこそこに外へ飛び出していったじゃない。
 で、しばらくして沢山の荷物を抱えて帰ってきたと思ったら、突然こう言ったのよ。
 『お袋!オレ、エクストリーム始めるよ』って。
 私、エクストリームなんて知らなかったから、『なにそれ?』って聞いたでしょ?
 そうしたら、ずいぶんと熱心に教えてくれたじゃないの。
 そして、その大荷物の中身がスポーツウェアやなんやらでしょ?
 いったい何があったのか、さっぱりわからなかったわよ」
「・・・・・・そうだったっけか?」
「えぇ、とてもビックリしたわ。ところで、あの時はお小遣い大丈夫だった?」
「んな事、どうでもいいけど・・・」
「でもね、今考えれば・・・そう、なんか制服が少し汚れてるなぁとは思ってたんだ。
 その前から練習にはお付き合いしていたんでしょ?」
「・・・・・」
「違ってたかしら?ね、松原さん」
「あ・・・はぁ。まぁ、先輩にはいろいろとお付き合いして頂いてましたが・・・」
「やっぱりね・・・お母さんの勘も大したもんでしょ」
「勘とか、そーゆーもんじゃないと思うけどな・・・」
「あ、ごめんね。長々と変なお話しちゃって・・・
 とにかく、松原さんにはお礼を言わなきゃいけないと思っていたの。
 何も趣味がなかった浩之に、打ち込む物を与えてくれて・・・
 松原さん、ありがとうね。本当に感謝してるわ」
「い、いえ、そんな・・・」
「なぁ、いい加減にメシ食おうぜ。ずっとおあずけくらってるから、腹が・・・」
「それもそうね。じゃ、いただきましょうか」
「はぁ〜、やっとありつけるぜ・・・」


「いただきまーす」
「はい、どうぞ。たくさん食べてね」

あ・・・おいしい。
これが先輩のおうちの味付けなんだ・・・
覚えておかなきゃ。
あれ?そういえば、今日は平日だよね・・・

「あの・・・今日、お仕事は?」
「え?あぁ・・・今日はぜ〜んぶお父さんに押しつけて、私は休んじゃった」
「は?押しつけて・・・?」
「えぇ、せっかく松原さんが見えるのに、お仕事なんかしてたら失礼でしょ?」
「そうですか・・・ありがとうございます」

あ!またとんちんかんな返事を・・・どんどんぐちゃぐちゃになっちゃう・・・

「でも良かったわ。私の思った通りの子で」
「はい?」
「浩之ってね、いっつも松原さんの事しか話さないのよ。
 『葵ちゃんって何でも一所懸命で、オレも見習わなきゃいけない』なんて・・・
 これだけ良く言ってるんだもの。私だって、いい子だなって思うわよ。
 なんだったら浩之が言った事、並べましょうか?全部覚えてるわよ。
 松原さん、聞きたい?」
「え?あの・・・はぁ」

せんぱい・・・お母さまにそんな事を。
照れちゃうよ・・・

「お袋!余計な事言うなよな」
「ふふふ・・・ごめんね。だって、あなたはいつも松原さんの事しか・・・」
「・・・まったく」
「ほらほら、ふてくされないの。
 私だって、松原さんの事を素敵な子だなって言ってるんだから」
「はいはい・・・」


「ごちそうさま〜 大変おいしかったです。ありがとうございました」
「お粗末様でした。でも、松原さんから頂いたケーキもおいしかったわよ」
「いえ、それは・・・」
「さて、お昼ご飯も頂いたし・・・ねぇ、松原さん」
「なにか・・・?」
「今日はお時間あるんでしょ?」
「はぁ、一応・・・」
「ちょっとだけお買いものに付き合って貰える?」
「え?お買いもの・・・?」
「だめかしら?」
「あ!い、いえ、大丈夫です」
「ふふ・・・よかった。で、浩之」
「ん?」
「お留守番お願いね」
「えぇ〜・・・オレは行っちゃだめなの?」
「だ・め!女には女同士のお話があるの。わかった?」
「なんだよ、オレだけ仲間はずれかよ」
「ごちゃごちゃ言ってないで、あとお願いね。あ・・・洗い物もしてくれると嬉しいな」
「洗い物までかよ・・・はいはい、わかりました」
「さすがは私の息子だわ。じゃ、松原さん、行きましょうか」
「は、はい!」


「あの・・・お買いものって・・・」
「え?あぁ・・・お買いものね。何買おうかしら」
「は?」
「別に理由なんてなんでもよかったんだけど・・・
 二人っきりでお話しがしたかったから。ごめんね、連れ出しちゃって」
「いえ・・・」
「さて、どうしようかなぁ・・・外は暑いし・・・
 どこか喫茶店でも入る?ごちそうするわよ」
「よろしいんですか?」
「ん、いいのよ。気にしないで」
「はい、ありがとうございます」



『カラーン』

「はぁ〜、涼しいわね。で、何にするの」
「え?・・・はぁ・・・」
「遠慮しないでね。あ、松原さんは甘い物なんて好き?」
「はい。大好きですが・・・」
「じゃあ、ジャンボクリームパフェなんてどうかしら」
「ジャンボクリームパフェ・・・ですか?」
「私も食べてみたかったんだ。こんなとこ、なかなか一人じゃ入れないでしょ?
 だから食べる機会がなかったのよ。ね、付き合ってくれない?」
「わかりました・・・」

なんか大変な事になっちゃったな・・・


「あ、来たわね・・・ふふ、おいしそう」
「・・・・・うわぁ・・・凄い量・・・こんなに食べられるかな・・・さっきケーキも食べたし・・・」
「大丈夫。何とかなるわよ。女性ってね、甘い物は入るところが違うのよ」
「そんなものですか?」
「そんなものなのよ」
「はぁ・・・」

「おいしいわねぇ。は〜、幸せな気分・・・ あ、そうそう・・・松原さん?」
「はい?」
「浩之の事、どう思ってるの?」
「はい!大変素敵な方だと思ってます」
「あら、即答なの?もう少し間があるかと思ってたけど・・・」
「は?」
「あ、いや、何でもないわ。素敵な方ねぇ・・・ふ〜ん」
「・・・あのぉ・・・わたし、何か変な事言いましたか?」
「別に変な事なんか言ってないわよ。
 いいわねぇ、こんなに可愛い子に好かれてるんだもの。浩之も幸せ者だわ」
「・・・か、可愛い・・・いや、そんな・・・」
「何も照れる事ないわよ。可愛いんだから可愛い。それでいいんじゃないの?」
「・・・・・・ありがとうございます・・・」
「それと、その指輪・・・」
「え?あ・・・はい・・・」
「それは浩之から?」
「・・・・・・・」
「へぇ〜、なかなか素敵な指輪ね。あの子もヤルわね」
「・・・・・・・」

なんて答えたらいいのかな・・・
『そうです。先輩もやるときはやりますなんて・・・』
あ!また馬鹿な事を・・・

「さて、本題ね」
「・・・本題・・・?」
「えぇ。この間、浩之があなたのおうちにお邪魔したでしょ」
「・・・はい」
「何のお話でお邪魔したのかしら?」
「え?ご存じなかったんですか?」
「ううん、大体の見当は付いてるけどね。あの子、詳しい事は言わなかったから」

先輩、お母さまにお話ししてないんですかぁ・・・

「で、何のお話だったの?」
「はぁ・・・まぁ、将来の事・・・と言いますか・・・そのぉ・・・」
「ハッキリ言っていいのよ。結婚したいとか、そんなお話だったんでしょ?」
「・・・簡単に言えばそうなります・・・」
「まったくあの子ったら・・・」
「あ、あの!先輩の事を叱らないで下さい。お願いします。
 せ、先輩も照れくさかったと思います。ですから、あの・・・先輩の事を・・・」
「あははは・・・何慌ててるの?私は別に怒ってるわけじゃないのよ。
 ただね、こうゆう事は一人で決めないで、親にも相談してほしかったなぁって、
 ちょっと残念だったの。だから安心していいわよ。浩之の事を叱ったりしないから」
「あ、ありがとうございます」
「ふふふ・・・浩之の事となると、突然ムキになっちゃうのね」
「・・・・・・・・・すいません・・・」
「謝らなくたっていいわよ。本当にあなたっていい子ね」
「・・・・・・」
「さてと、念願のパフェも食べられたし、帰りましょうか」
「・・・はい」


「あの・・・ごちそうさまでした」
「ん、いいのよ。誘ったのは私だし・・・ じゃ、行くわよ」


「ただいま」
「お、帰ってきたな。おかえり」
「ただ今戻りました」
「浩之、洗い物はしておいてくれたかしら?」
「おぅ、言いつけ通りやっておきましたよ。まったく・・・」
「はい、ご苦労様。ねぇ、松原さん」
「はい?」
「今のウチからこんな風に鍛えといてあげるから、将来は安心していていいわよ」
「は?あ、そのぉ・・・お願いします」
「お袋!なに馬鹿な事言ってるんだよ!それに葵ちゃんまで・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
「ねぇ、浩之」
「なんだよ」
「主婦って仕事は大変なんだから、手伝ってあげなきゃダメよ」
「わかってるよ、んな事・・・って、え?」
「なに?」
「お袋、今・・・」
「あぁ、今の?だってあなた、将来松原さんと・・・」
「オレ、そんな話一言も・・・」
「お母さんの目は節穴じゃないわよ。何もかもお見通しなんだから・・・・・・・・なんてね。
 松原さんから訊きだしたわよ。この間、彼女のおうちに行った日の事を」
「たはは・・・バレてるわけね。で・・・」
「いいんじゃないの。特に反対する理由もないし」
「お、お母さま・・・」
「その前に・・・松原さん」
「ははははい!」
「今度、エプロン持参で来る事。いいわね」
「エプロン?・・・・・お袋、何企んでいるんだ?」
「あら、藤田家に伝わる秘伝の味を教えてあげようと思ったんだけど・・・いけない?」
「んなもん、あったのかよ・・・」
「知らなかったの?それに、今度はお父さんと会ってもらわないとね」
「あ・・・・・はい!」
「松原さん、こんないい加減でチャランポランな男だけど、本当にいいのかしら?」
「いや、あの・・・なんて言っていいか・・・」
「お袋、自分の息子をそんなひどい言い方するなよ・・・」
「あら、そうかしら・・・本当の事なんだけどなぁ。ま、いいわ。
 さ、私も言いたいことはお話ししたし・・・
 あなた達も、そろそろ二人きりになりたいでしょ?どこかへ出かけてきたら?」
「どうする?葵ちゃん」
「え・・・あ、はい・・・」

どうしようかな・・・あ!そうだ・・・

「あの・・・お母さま」
「なに?」
「あの・・・お願い事があるんですけど・・・」
「お願い事?いいわよ、何でも言ってごらんなさい」
「よろしかったら・・・これから、その秘伝の味というのを教えて頂けないです・・・か?」
「え?今から・・・ええ、いいわよ。喜んで」
「ありがとうございます!」
「じゃ、お台所に行きましょうか」
「はい!よろしくお願いします」

せんぱい・・・わたし、頑張ります。
頑張って、先輩の大好きな物を毎日作っちゃいますね。

「さて、何から教えようかしら・・・」
「あの・・・お手柔らかにお願いしますね」
「ふふふ・・・さあ、どうかしらね・・・じゃあ、まず・・・」


                             おしまい



 あとがき

皆さんこんにちは。Hiroでございます。
11作目をお贈りいたします。
今回は、葵ちゃんどきどきモードを。
緊張しまくりの葵ちゃんを描いてみました。(違うって)
これでまた、一歩近づきましたね。約束の未来へ・・・
さて、この二人の結婚生活。どのようになるんでしょうか。
たぶん、らぶらぶモードでしょうね。わたしの事だから・・・ ^^;)
ま、まだ先のことですし、追々構想を練って発表したいと思います。
あまり長くなるのもナンですので、今回はこのへんで。
次作でまたお逢いしましょう。

1999年8月 秋葉ベッカーズにて Hiro


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