<声が聞こえて・・・>


ドクン…ドクン………。
心臓の音がリアルに聞こえやがる…。
「これより第一試合を始めます」
審判の合図と共に俺は前に出る。

試合開始の合図…。
そんなものは俺には聞こえなかった。
ただ、目の前に居る敵だけを見つめていた。

相手が俺に向かってくる。
ボディーを狙ったパンチ。
俺は体をえびそりなんとかよける。

しかし次の瞬間、俺の目の前をさえぎるものが……。

シュン…!
バシッ…!

生々しい音と共に相手の蹴りが顔面にヒットする。
……痛えぇぇ…。

よろける俺にとどめの一撃が脇腹に入る。

ゴスッ…!

「ぐあっ…!」
思わず声が出る。

俺はそのまま床に倒れこんでしまった…。

負けるの…か…?
俺はここで終わっちまうのか…?
その程度の男だったのか…?
俺は…まだなんもしてねーぞ……。

不意に俺の耳に聞き慣れた声が入ってくる。
「先輩、立って!」

観衆の声の中。
その声だけが俺には聞こえていた。
そう…はっきりと、『せんぱい、立って!』と…。

気付いた時、俺は立ちあがってファイティングポーズをとっていた。
足取りもおぼつかない。
かろうじて立っているのがやっとと言う感じ。

相手は容赦なく俺に襲いかかる。
もう俺には相手の攻撃をよける力も残ってない…。
だったら…………。

考えがまとまった時には相手はもうパンチをはなっていた。
ここしかない…!

ドン!

会場が一瞬静かになる。
静寂の中で立っていたのは、俺だった。
ぎりぎりのところで崩拳が決まったのだ。

「勝者、藤田浩之!」
審判がそう言ったところで俺の意識は遠のいていった…。
遠くであの子の声が聞こえていた。
「先輩……………………!」



「よーっし。今日もばりばり練習すっか」
「はい。先輩」
あの大会から一週間が経った。

大会のおかげで自分の無力さにも気付き、俺はより一層の努力をしようと心に誓っていた。

で、実は今日は葵ちゃんの誕生日だったりもする。
あの大会での優勝記念も含めてちょっとしたプレゼントをする予定なんだ。



「ちょっと休むか?」
「はい」
「あっ、俺ジュース買ってくるよ。葵ちゃんにもおごってやるよ」
「えっ、良いんですか?」
「ああ、優勝記念ってとこかな」
俺はそう言って、神社を出た。

神社を出たら真っ直ぐ駅に向かう。
駅のロッカーの中にプレゼントを入れておいたのだ。

駅に着きロッカーからプレゼントを取り出す。
「良し!」

俺は急いで神社へと戻ることにした。
あんまり遅いんじゃあやしまれるからな。

今日はあのことも言わなきゃ…。

駅の目の前の横断歩道で捕まってしまう。
「はやくしろ〜……!」
俺は青になったらすぐにでもダッシュできるような体勢とっていた。

「危ない!」
不意に俺の横にいた女の人が声を出す。
その先を見ると、小さな子供が飛び出してしまっていた。

やべぇ…!

車はすぐそこまでせまってきていた。

俺はとっさに飛び出た。

キキィ―――――――!



これ…夢だよな…。
俺…ひかれて……。
体…痛くないな…。
そうだ…葵ちゃんにプレゼント渡さなきゃ。
どこだ…?
あっ…あんなとこにありやがる。
取りに行かなきゃ…。
あ、あれ?
体が動かないぞ。
なんで………。
立たなきゃ…。
立って葵ちゃんの所に行かなきゃ。
それでこう言うんだ。
「葵ちゃん、誕生日おめでとう」
「次の誕生日もその次の誕生日も、ずーっとずっと、葵ちゃんが死ぬまで俺が祝ってやるからな」
そうだよ…。
言わなきゃいけないんだ。



「立って、先輩!」



笑ってくれよ葵ちゃん……………。
あっ…そっか…嬉し泣きか…。
泣きたい時は泣いても良いよ。
これからは俺、いつでも一緒にいるからな…。
俺さ………………………。
葵ちゃんのこと……………。





後書き

こんにちわ
葵惑星と言う者です
この度、葵ちゃん(?)のSSを書いてみたんで送らせてもらいます

なんか葵ちゃんSSって感じじゃないので駄目だったら駄目で結構ですんで
しかもなんか最終的にはダークな落ちになっちゃったし・・・

それでも乗っけてくれるのなら光栄です

それでわ
                   9月1日葵惑星


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