--------------------------------------------------------------------------------
アリエス達の夜に
writed by はぐ
--------------------------------------------------------------------------------
眠れない。
ドキドキして、眠れない。
蒸し暑いからかもしれないけど、本当の理由は違うんです、先輩。
『ほらほら、今からそんなに緊張してたら体がもたないぞ』
『は、はい』
『そら、体の力を抜いて』
『きゃっ……あ、あ、も、もぉ、先輩っ』
夕方、練習の後で先輩が私のお尻を叩いて。
『取れただろ』
そう言って笑った先輩。
ちょっとびっくりしたけど、でも、本当に緊張が取れていて。
先輩って不思議。
明日、いよいよ明日なんだ。
この大会のためにがんばってきたんだから。
ちゃんと眠らないと。
先輩にも言われたのに。
『とりあえず、考えすぎて眠れないってのが一番ダメだからな』
『はい』
『葵ちゃんの性格だと、実際、それが一番怖いからな』
先輩の一言は少し胸に痛い。
でも、それは本当のことだから。
私のこと解ってくれてる先輩だから。
『もしそうなったら、まじないでも唱えれば大丈夫だろ』
『おまじない?』
そうだ。
先輩に言われたあのおまじない。
でもね、先輩。
私のことを解ってるようで、解ってないんですよ?
ふふっ。
『夜眠れなくなったらだな』
『はい』
『心の中で、何度も唱えてみな。それでスキッと爽快だ』
『は、はい……』
そのおまじないは。
『葵ちゃんは強い、葵ちゃんは強い、絶対につよおぉーいっ』
くすっ。
くすくす。
ほら、やっぱりもっと目が覚めちゃったじゃないですか。
心臓ももっとドキドキしてきてる。
あの時は、気持ちが落ち着いたのに、今はダメ。
くすくす。
全然、落ち着いてくれない。
『あ、あはははは』
『こら。なんでそこで笑うかな』
『あはははは、だ、だって、先輩。あははっ』
『なんだよ、それは。人がせっかくアドバイスしたのにな』
ふくれてしまった先輩が、もっとおかしくて。
『ご、ごめんなさい。でも、お、おかしぃ。くすくす』
しばらく笑いが止まってくれなかった。
だって。
嬉しいから。
嬉しすぎて、ドキドキが止まらないんですよ?
ドキドキがすごくて、笑ってしまうしかないくらいすごくて。
先輩、ありがとうございます。
絶対、明日がんばりますからっ。
でも。
今はまだ、眠れそうにないですけどね、あはは。
『じゃぁ、こういうのでどうだ』
笑いが止まらない私に、先輩はもう一つだけおまじないをくれた。
『ど、どんなの、ですか?』
『それはだな』
眠る時まで。
ドキドキが止まるまで。
先輩の夢が見れるように。
先輩を想いながら、もうひとつのおまじないを呟くんです。
ひつじがいっぴき……。
『ひつじがにひき、ひつじがさんびき、どうだ古典的だろ?』
いつからか。
私は夕方のことをそのままに夢に見ていました。
夢の中でも先輩に逢えたから。
きっと私、がんばれますっ。
おしまい
あとがき
初めましての方は初めまして
2度目ましての方は2度目まして
3度目ましての方は(以下延々)
で、お久しぶりの方はおひさー。
久方振りのSS寄贈したはぐです。
なんか、ほんの1時間ほど前、アクセス解析の話してたら唐突にSSねだられまして。
ここ1ヶ月くらいなんも物書いてなくて、書けるんかいなと不安に思いつつ。
即興(30分)で書いたので、まぁ、出来はあまり言わないでくださいw。
タイトルの元ネタは、平松愛理の『太陽のストライキ』(♪羊を100数えても眠れない夜があるね)から。
で、その歌詞から、大会前にも緊張して眠れなさそうだなぁ、葵ちゃんなら…という按配です。
ま、そんなお話ですw。
では、またいつかあえることがあれば〜。