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 カーテンを開けると、眩しい朝日が射し込んでくる。
窓の外からは、小鳥の元気なさえずりも聞こえる
昨日まで降っていた、季節外れの雪はどうやらやんでくれたようだ。
ほっと胸をなで下ろしつつ、私は窓を開けた。
まだ冷たい外の空気が一気に流れ込み、まだ夢心地だった私の意識を
一気に現実に引き戻してくれる。

 晴れてよかった。
今日は、大事な大学の2次試験の日。
先輩と同じ大学に行くための、最後の試練だから。


< 1年後のエール >

 
 身支度を整え、そろそろ出かけようとした頃。
下の方から、お母さんが私を呼んでいる。

「葵〜、藤田さんがお迎えにいらっしゃったわよ〜」

 ………え?

 コートも羽織りかけのまま、私は慌てて部屋を飛び出した。

「せんぱい!? どーしてこんなところに…」
「どーしてって…そりゃ葵ちゃんが心配で様子を見に来たに決まってるじゃん」
ジーンズの裾についた雪を払いながら先輩は答える。
晴れてはいるものの、どうやら雪は結構積もっているようだ。
「でも、学校は…あっ」
「そう。今日は当然お休みってわけ。
 だから試験前で緊張してそうな葵ちゃんを送り届けてあげようかなぁと。
 俺だって一応そこの学生だから道ぐらいはちゃんとわかってるし」
「でも…せっかくのお休みを…」
そこまで言いかけたところで、突然背中を強く押された。
何の警戒もしてなかったので、思いっきり玄関の方に倒れそうになる。
後ろを振り返ると、なんだか楽しそうな顔をしたお母さんがいた。
「ほらほら、早く行かないと遅刻しちゃうわよ」
「え……あ、ホントだ!」
「全くもう、この子ったら…藤田さん、葵をよろしくお願いしますね」
「はい、責任持ってお連れしますよ」
まるで当然のように受け答える2人。
どうやらお互いに相手のことが気に入っているようだ。
でも、私としてはすごく恥ずかしいんだけど…。
顔が真っ赤になってるのが自分でもはっきり分かった。


「…すみません、母が変なこと言うから…」
試験会場…即ち先輩の通う大学までの道すがら、ようやく落ち着いて先輩に話しかける。
そんな私の様子を分かってか分からないでか…多分分かってるんだろうけど…
悪戯っぽい表情で先輩は、
「いやいや、当然のことだし。それに将来のお義母さまだしねぇ」
「なっ…そ、そ、そんなことないですよっ!!!」
再び赤面…先輩ってばいつもこうやって人をからかって遊ぶんだもの。
そりゃまぁそうなったら嬉しいかな…とかは思ったりもするけど。
「あはは…ま、多少は緊張もほぐれただろ?」
言われてみればそうかも知れない。
…先輩はいつもこうやって、さりげなく私の不安や緊張を取り除いてくれたなぁ。
好恵さんとの神社での試合の時とか、エクストリームの時とか。
「…はい。…最初からそのつもりだったんですか?」
「うーん、結果的にかもね。お義母さまと楽しくお話ししてただけだし」
「もぉ〜、まだ言いますか、先輩!」

 大学はこの町から電車で数駅行った先にあるので、まずは駅まで歩く。
雪はまだ結構積もっていてちょっと歩きにくかったけど、
普段の練習に比べれば楽だし、何より先輩が一緒にいてくださる。
お話ししながら歩いていたら、駅まではあっという間だった。

 切符を買い、ホームで電車を待っていると、先輩が少し複雑な表情を
浮かべながら話しかけてきた。
「…でもさ、本当にうちの大学でよかったのか?」
何を聞いてるんだろうと思いながらも、すぐに首を縦に振る。
「はい!先輩は私と一緒の大学じゃお嫌ですか?」
「嫌じゃないし…むしろ嬉しいけど…」
そこで少し言いよどんだようだったが、そのまま先輩は話し続けた。
「…推薦入学の話だっていっぱい来てたんじゃないか?
 高校スポーツとしては無名かも知れないけど、それでもエクストリームっていう
 有名な大会であれだけ成績残したんだからさ、それなりに誘いだってあったんじゃない?」
「…いえ、特になかったですよ。私なんてまだまだですし。好恵さんに比べたら」
「そういえば坂下は空手の推薦で大学行ったっけ。
 こないだ駅でたまたま鉢合わせたんだけど、葵ちゃんが同じ大学に
 来ないって聞いてまた少し落ち込んでたみたいだぞ」
「えっ、そうだったんですか…」
「まぁ、3年前のあの時みたいなことはもうないだろうけどな」
「……そうですね」
ふと空を見上げる。そして3年間を思い返してみる。
空手を離れ、エクストリームに進んだときに別れた私と好恵さんの道。
そして衝突。本当にいろんな事があった。今でもはっきりと思い出せる。
だけど今では、間違いなく同じ道を歩んでいると実感できる。
だから私も好恵さんに…そして綾香さんに負けないように頑張らなきゃ。
「……今度こそ必ず…あの2人を追い越してみせます」
思わず呟いたその言葉を聞いて、先輩は少し苦笑いしながら、
「うん、葵ちゃんならきっと大丈夫だよ。
 でもさ…その前にまず今日やることがあるんじゃない?」
「…あっ!そ、そうでしたね…ちょっと気が早すぎましたね」
私もつい苦笑いしてしまった。


 それからはいつも通りの会話をしながら電車に揺られていた。
気がついたらもう大学の目の前まで来ていた。
校門の所まで来たとき、先輩がこっちを振り返った。
「…いよいよだね。大丈夫?緊張してない?」
凄く心配そうな表情だ。私はできる限り笑顔を作って、
「…少しだけ…」
「うーん…んじゃ、いつものアレ、やろうか?葵ちゃんは…」
「せ、先輩!やめてください、こんなとこで!」
止めなかったらいつもと同じ力限りの声で喝を入れてくれるだろう。
でも…さすがにここでは…。
慌てて止めにかかると、先輩は急ににやーっと笑って、
「あはは、さすがにこんなとこじゃやらないって」
「もぉ…おどかさないでくださいよ」
「でも…少しは緊張取れてない?」
「あ………はい」
「だろ?うん、狙い通り」
「嬉しいですけど……いじわるです」
「ごめんごめん。…で、これが最後の一押し」
そう言うと先輩はポケットから何かを取り出し、私に手渡した。
「これは…お守り?」
「うん。ちと汚くて申し訳ないけど…御利益はあると思うよ。
 何せ、こんな俺を大学に合格させてくれたお守りだからさ」
ということは…先輩も使ってたお守りなんだ…。
お守りを持ったまま、両手を胸にあててみる。
心なしか、さっきまでより落ち着いてきたような気がする。
「…そうですね、御利益ありそうです」
「だろ? …さすがに中まではついていけないからさ。
 その分それが守ってくれるよ。俺は外から合格を祈ってるから」
「…はい。先輩と一緒の学校にまた通えるように頑張りますね」
「……何か照れるな、そうはっきり言われると」
「いつものお返しですよ。それじゃ行ってきますね」


 会場に入って自分の席に着く。
もうすぐ試験開始の時間だ。
大きく深呼吸をしてから、手の中のお守りをじっと眺める。

…大丈夫。先輩はちゃんと側にいてくれる。
先輩さえいてくれれば、私は頑張れる。
今までだってそうだったし、これからだって。

 そして開始を告げるチャイムが鳴った…。


< 終 >




(後書き)
 ………駄目だぁぁぁぁぁぁ(T_T)
ワンパタ過ぎる〜こんなんしか書けないのか私〜(T_T)

 …落ち着け(^_^;)

 てなわけで…実に半年ぶりの新作になるのかな?
少なくとも後悔^h^h公開する作品としては半年ぶりかな。

 受験シーズンですからねぇ。てなわけで頑張れ受験生SS〜。
…ちょっと待てよ、だったらむしろ浩之に受験させて
葵ちゃんに応援させた方が…。

 …てなわけで今から書きます(滅爆)

 私が葵ちゃん書こうとするとどーしても私の中でのストーリーに
準じてしまいます(^_^;;) 3人娘決着〜のストーリーね(^_^;;;)
肝心のこっちがまだ未完成なのにねぇ(^_^;;;;)
そろそろマジで書き上げたいもんですが…無理です(きっぱり(爆))

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